このページの本文へ

番外編 今、世界一熱い街・上海の広告事情(2)

2007年01月31日 09時00分更新

文●朝日奈 ゆか/株式会社ユンブル 代表取締役

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

 前回の「上海の広告事情(1)」はなぜか反響が大きく、読者や知人からたくさんの連絡をいただきました。ありがとうございます。ECサイトのオーナーや広報担当の方たちのなかにも、中国の市場に興味をお持ちの方が大勢いらっしゃるようですね。

テレビ人口8億、ネット人口1億8千万の行く先は

 上海で今も昔も変わらないのは、あちこちに響き渡るクラクションのけん騒でした。世界中を旅する友人が、「世界一クラクションが鳴り響く街だ」と断言していましたが、そりゃあすさまじいですよ。そして近年、新たに街にあふれだしたのが第13回で紹介した広告群です。  
 よって上海の旅は、耳からクラクションの洪水が、目には広告看板とネオンの嵐が飛び込んでくる、なんとも騒々しいものでした。街がブランドの宣伝そのものを楽しんでいて、「コレ買え~、アレ買って~ソレもこうてえな~」と叫び続けているように感じたほどです。

 たまたま帰国後すぐのお正月に見たNHKの番組『英語でしゃべらナイト』で、上海ロケによるスペシャル番を放送していたのですが、その内容にはとても共感しました。
 「昇竜のごとく急成長をとげる中国を牽引する経済都市」というナレーションではじまり、予想どおり、「まさにゴールドラッシュ」と形容しつつ上海の広告事情を大きく取り上げていたからです。ついでに車の往来のコワサも伝えていました。

 上海で現在、広告産業を担っているのは外国資本であり、派手な広告合戦を展開している技術者も外国人が中心です。マスコミでは、「まだ数年は中国の広告支出の2ケタ成長率が続く」と報道されています。前回も書いたとおり、「社会主義の中国は、広告という概念を持たない国だ」と聞いていましたが、上海を歩いていると、「じつは中国人は、もともとモノや広告や宣伝が大好きなんじゃないかなぁ」と思えてきます。
 彼らの広告魂はごく近い将来、ネット上で爆発するでしょう。
今は国が政策としてネット情報を制限していますが、彼らのエネルギーを制御するのはもはや不可能ではないでしょうか。ウェブ媒体がこれまでにない身近な情報発信源であると知ったとき、彼らの広告大好き魂は一気に激しく活動を開始することでしょう。

 上海の広告現場の現状はそのまま、ネット社会の将来を映しているようでした。まず、中国で電気が通る場所にはほぼ全土にテレビが普及し、「2006年のテレビ視聴者数は8億人。テレビ広告は花盛り」とか。さらに「インターネット利用者は1億3千万人。ブロードバンド利用者は7800万人で、見込み人口の15%以下」とあり、この数字は今後、極端に伸びていくことを表しています。
 オフィス関連商品の通販最大手のコクヨ、アスクルが中国でECサイトを開始して自転車のデリバリー力で好評を博しています。年初(1月5日)には楽天市場が今年中に中国へ参入するというニュースが流れました。外資系通販会社の参入が加速度的に進むなか、同時に、中国国内ではこれら通販会社の物流や受付を請け負う企業もぐんぐん成長しています。日本国内では飽和気味のEC市場も、中国やアジアではまだ産声をあげたばかりなのです。

 上海で出会った中国人たちは、「日本はもうずっと下り坂。中国、特に上海は上る、上る」と口々に言っていました。彼らは日本の建築、製鉄から縫製、デザイン、ウェブ構築……あらゆる技術を鋭い目で盗んでは身につけ、製品の品質向上を競い合って自社のブランド化をはかっています。中国製の洋服や電化製品が、ひと昔前と比べると格段によくなったことを皆さんも日々の生活で感じておられるでしょう。
 ウェブサイトでも日本のシステムやデザインをそのまま模したようなサイトがどんどん登場し、オシャレで洗練されたそれらのサイトのアクセス数はうなぎのぼりといいます。

 これらの成長ぶりは大人の世界だけではありません。子どもは小学生から金融や麻薬について学び、国あげて学力と生活力の向上に励んでいます。まだ物が少ない地方の小学校でも、幼い子どもたちが小さな机1台を2~3人で共有しながら必死で授業を受ける姿がニュースになっていました。鉛筆も消しゴムも貴重だから大切に使い、むさぼるように勉強しているのです。

 「このパワーでかかってこられると、近い将来は日本などひとたまりもないな」というのが私の率直な感想で、上海を訪れた日本人の友人たちも異口同音にそう言います。それほど彼らの「生活をよくしたい」というハングリー精神と向上心、それに行動力はお見事、あっぱれでありました。

 ちなみに、タクシー初乗りは11元(当時1元=16.2円。約180円)、地下鉄初乗り3元(49円)、フットケア1時間88元(1430円)、全身マッサージ148元(2400円)、5ツ星ホテルのエグゼクティブデラックスルーム・ブロードバンドPC付きの部屋で672元(10900円)でした。

 エキサイティングビバ上海! ワンダフル、エクセレント、アゲアゲ、ギンギラギン、迫力爆発炸裂な街のパワーに絶句しながら、「ぼーっとしてる場合とちゃうわ」と我に返り、脳とからだと心にワーキングエネルギーを吸収して帰路につきました。
 上海の広告やEC市場が気になる皆さん、上海は日本から飛行機で3時間ほどの至近距離です。まずは現場に足を運んでその勢いを肌で感じてみてください。 

 PS/空港までのタクシーは、ガタガタの車体を揺らしながら、時速150kmで高速道路の何台もの車を追い抜きすっとばしていました。運転手は得意げですが、私は「今日が命日か」と覚悟しました…。疲れている時に行くとぼろぼろにされそうな街なのでご注意。

・ 上海一の繁華街「南京東路」にある飲食店ビル。コーラの看板が6階建てビルよりでかくてびっくり。


・ 上海郊外の文廟(ぶんびょう。孔子がまつられているお寺)にて、土日に開催される古本市(入場料1元)に並ぶ外資系雑誌。ほとんどが日本の雑誌でよく売れていました。


・ 昼間の外灘(ワイタン)の風景。近未来都市の象徴として建てられたテレビ塔の「東方明珠塔」はアジア1位、世界3位の高さ! すごいでしょう。周囲の浦東エリアにはまだまだ高層ビルが建つそうで…。


著者プロフィール

名前 朝日奈 ゆか info_email_01[アットマーク]yumble.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ユンブル
サイト http://www.yumble.com/

この連載の記事

一覧へ

WebProfessional 新着記事