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番外編 今、世界一熱い街・上海の広告事情(1)

2007年01月17日 09時00分更新

文●朝日奈 ゆか/株式会社ユンブル 代表取締役

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 昨年のクリスマス前後に、ビジネスと休暇を兼ねて中国の上海に行ってきました。 建設、運送、鉄鋼、金融、流通……上海では今、あらゆるビジネスが急成長中ですが、なかでも注目すべきは「広告産業」だとか。派手な世界だけに、世界中の企業からの注目度数も高いのでしょう。今回は番外編として、上海の広告事情のお話をします。

コンビニの書棚を占める日本の女性ファッション誌中国版

 今回の訪中は、中国の出版社数社からビジネスのオファーがあったことがきっかけです。どちらからも、「御社のホームページを見ました。日本の編集プロダクションから日本の編集技術を学びたい。つきましては……」との趣旨でした。「こう重なるということは、あの国では何かが起こっているな……」と実感した次第です。

 最近よく、新聞やニュースで、上海が「人類初の急成長」「魔都復活」「天をも恐れぬ経済成長」と叫ばれていますが、こうなれば実状をこの目で見ておきたいですよね。また、上海は1988年に私が初めて訪れた海外で、今の会社をつくろうと決めたのも上海の街角だった、19年でどのように変わったのだろう、という個人的な想いも強くありました。

 日本の大手出版社はたいてい中国の企業と提携して中国版の雑誌を発行しています。CanCam、Oggi、with、mina、Ray……上海のコンビニの雑誌スタンドにはおなじみの日本の女性向けファッション誌がずらっと並んでいて、欧米系雑誌よりも日本の雑誌のウエイトはかなり高く、人気のほどがうかがえます。

 ちなみにOggiのタイトルには漢字で『今日風采』(流行のファッションという意)と添えられ、裏表紙は化粧品メーカー・コーセーの広告、中面は外資系ブランドと資生堂が入り、1ページだけ現地資本と思われる中国のラジオ局の広告がありました。中国の広告産業は、他の分野同様に外資で成り立っているのですね。中国で独自のファッション誌ができるのはまだまだこれから。日本の広告や編集制作の技術を欲しがるのも当然の図でした。

 ‘88年の上海では、新聞も4ページ程度で街頭に貼り付けられたものを群集がむさぼるように読んでいたものでした。書店もほとんどなく、共産主義国に広告や宣伝サービスの概念はない、と知られていましたが、2006年末の上海にはなんと、街じゅうに広告の嵐が吹き荒れていたのです。聞きしに勝る変ぼうぶりでした。

 そのきっかけとなったのは、1995年に施行された「中華人民共和国広告法」、さらに2004年11月に発行された「屋外広告産業上海宣言」といいます。なんでもここ20年で上海の広告市場の数字は1万倍を越えたとか。1万倍という現実があるのですねぇ。もともと広告がなきに等しかったとはいえ、大国のその数字が示す方向にはいったい何が待っているのでしょうか。

上海一の夜景スポットに突如表れた巨大広告モニター船

 上海一の繁華街である「南京東路」はデパートや飲食店、ショップが立ち並び、夜ごとものすごい人出で混雑しています。人々の声、通りのにぎやかさは大阪の道頓堀の雰囲気によく似ていますが、道頓堀のカニやエビの大きな看板、くいだおれなどの陽気な人形に慣れているわたしでも、上海の看板には仰天しました。ひとつひとつがでっかく、かつ主張が激しいのです。やったもん勝ちですなぁ。夜になると色とりどりに光りだしますが、色彩の賑々しさは大阪の比ではありません。参りました、はい。

 オシャレストリートの「新天地エリア」には時間の都合で行けませんでしたが、聞くところによるとこちらでも外資系ブランドの看板、電飾広告がきらめいているそうです。

 「はあー、へー、すごいわー」とつぶやきながら通りを歩いていましたが、なかでも驚いたのは、上海一の観光スポットである外灘(ワイタン)での広告風景です。外灘は「世界的に有名な夜景スポット」としても知られていて、街中をずどんと流れる黄浦江という川をはさんでクラシックビル群と超高層ビル群が林立する風景が展開しています。

 最近では映画『M:i:Ⅲ』の舞台となり、主演のトム・クルーズが高層ビルから宙吊りアクションを見せるシーンが印象的でした。大きな球が2つくっついたテレビ塔の東方明珠塔を中心とした浦東(プードン)エリアを対岸から見ると、映画以上に迫力あるキンキンキラキラの近未来世界がそこにあったのです。

 そして、見渡す限り、低層のビルには企業の社名文字看板がどーん、どーんとくっついています。黄浦江を横切る遊覧船の屋根にもいちいち広告看板が。「ひえー、こりゃごっついわ、通天閣(大阪にある塔です、念のため)もびっくりや」と、ド派手なナイトシーンと広告合戦にあ然としていたその時!急に黄浦江に巨大モニターを積んだ船が現れ、岸辺に集まる我々群集に向かってテカテカと光り出し、広告映像を流しはじめるではないですか。でたっ、あつかましいなぁ、ま、ま、まぶしいやんか!
 広い外灘にあってもあまりに光るため、人々の目は否応なくモニターに集中します。まぶしくて映像が鮮明でないのが笑えますが、クリスマスイブの宵、観光客が夜景を楽しんでいようが恋人たちが愛をささやいていようが知らん顔、平気のへーちゃんで光を放ち続けていました。もうなんでもありでんな、この街は。……次回に続きます!

上海一の観光スポット「外灘」を地上88階の展望台から眺める。右端が上海のシンボル東方明珠塔。すごいデザインです。‘88年には農地だった浦東地区がいまやニュー上海と呼ばれるビッグビジネスエリアに変身していました。


外灘の西側はイギリス、フランス、ロシア、日本のクラシックビルが建ち並ぶロマンチックストリート。キムタクの“華麗なる一族”に出てくる銀行はこれらのビルでロケしていますね。対岸の超高層ビル群との対比がなんともワンダフル。

著者プロフィール

名前 朝日奈 ゆか info_email_01[アットマーク]yumble.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ユンブル
サイト http://www.yumble.com/

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