社内LANを支えるL3スイッチ
同じスイッチに接続された端末同士は直接通信ができるが、別のスイッチに接続されているマシン間の通信はルータによって転送される必要がある。ルータはソフトウェアでネットワーク間の経路制御を行ない、パケットを適切に転送する機器だ。家庭用のブロードバンドルータも機能や使い道を限定したシンプルなルータの仲間といえる。
ルータがソフトウェアで行なっているパケット転送を、ハードウェアで行なうことで高速化したネットワーク機器が「レイヤ3スイッチ」(L3スイッチ)だ。レイヤ3とは、OSI参照モデルの3階層目、ネットワーク層の情報を用いてパケットを転送することからこの名前が付いている。また対比する意味で、一般のスイッチを「L2スイッチ」と呼ぶこともある。
L3スイッチの特徴は、スイッチが備えるVLAN(Virtual LAN)という仕組みによって、1つの機器によって複数のネットワークを構成したうえで、VLAN間のパケットをルーティングする機能を備えていることだ。
VLANの実現方法はいくつかあるが、もっとも簡単でわかりやすいのがポートの番号によってLANを分ける「ポートVLAN」だ。たとえば、8ポートのL3スイッチで、1~4のポートをグループ1、5~8のポートをグループ2といったように分割する。
一方、複数のスイッチをまたいでVLANを構成する仕組みが、「タグVLAN」だ。タグVLANではEthernetのパケットにVLAN IDと呼ばれるデータを付加することで、スイッチをまたいだ転送でも、どのVLANに属しているのかが識別できる。
このようにVLANを活用することで、物理的な配置にとらわれない柔軟なネットワーク構築が可能となる。
スイッチの階層化と要件
これまで説明したようなスイッチ(L2スイッチ)は、企業のITシステムではもっともユーザーに近い場所でクライアントPCを束ねるのに利用されるため、「エッジスイッチ」と呼ばれる。
エッジスイッチはユーザーの近くで用いられるため、特に静音性や省スペースといった要件が挙げられる。またネットワークにそれほど詳しくないユーザーのそばで使われるため、1本のケーブルの両端を同じスイッチに挿してループさせてしまったような場合にも負荷上昇を防ぐような仕組みが求められる。
これに対して複数のエッジスイッチを束ねるのに利用されるスイッチを、フロア全体のネットワークをまとめるという意味で、「フロアスイッチ」と呼ぶ。ネットワーク全体の規模にもよるが、フロアスイッチにはL3スイッチ、L2スイッチの両方が使われている。フロアスイッチには、特定の通信のために帯域を保証するQoSや、VLANといった機能が求められる(図2)。
エッジスイッチ、フロアスイッチ、そして次のセクションで述べるコアスイッチというようにスイッチを階層化するシステムは、日本で特に需要が多いという(図3)。高層ビルの複数フロアを占める形の社屋が一般的という事情が影響しているのだろう。これに対して、平屋の社屋が多いアメリカでは、エッジスイッチをコアスイッチに直接接続するスタイルが多いという。
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