レガシーを捨てろ! しかし、話はそう簡単なのか?
—— 私は、国産メーカーが、1970年代にIBM互換機路線をとったことを、今になって失敗だというつもりはないのですよ。問題にしているのは、IBMはzシリーズというものを提案したけれど、国産メーカーは追いついていないことです。結論として、私は、早くメインフレーム撤退宣言をすべきではないかと思うのですよ。もちろん、国産のメインフレーマーが意地をかけてやるというのは立派なことです。しかし一方で撤退宣言をきっかけにメーカーもユーザーも、レガシー維持にかけるお金を新しい基盤作りの投資にまわすべきという考え方があってもいい。
島田 うちは、メインフレームの世界の華やかし頃には、IBMさんのマシンと共に、富士通さんや日立さんのマシンも使っていました。基本的にIBM互換機として使っていた。マルチベンダーにすることが目的だったのですよ。
—— そういう意味では、IBM互換機はおおいに意味があった。
島田 各社に技術競争力やコスト競争力を発揮して頂くという観点では、意味があったと思っています。また、各社のいろいろな提案・意見を聞く中で我々サイドも力をつけることができた。
—— 最初から国産のIBM互換機しか使っていないところがあるのですよ。これのユーザーというのは、今後どうするのだろうという問題があるわけです。これを、一気に自力でオープン系に移行するかというと、すべて再構築するのにはお金がかかる。
島田 そういった問題もあるんですね。どうするのですかね、本当に。
—— メーカーはどう言っているかというと、公式見解は、日立も富士通も正面からいけば「サポートしますよ」となりますよね。ところが、IBMだって、海外ではOS/390のサポートはもうしないというアナウンスをすることによって、早めにオープンに移行することを促していますよね。日本は、まだそういう話になっていないと聞いていますが。
島田 しかし、そういうことはオープン系でものを作っている場合でも同じですよね。オープン系は上位互換の保証がないから、より深刻なことになる可能性もある。
—— オープン系でも同じ話が起こるだろうと。
島田 起きますよ。もう既に起きているんじゃないでしょうか!
—— それは、そうですよね。
島田 オープン系における「サポート切れ・バージョンアップ」対応には結構悩まされていますよ。だけれども、幸いにしてオープン系のシステムって1個1個の規模が小さいから、なんとか大問題にならずに済んでいるんじゃないかというのがありますね。今のところの話ですが……。
オープン系で、もの凄く不愉快というか、戸惑うことがあります。西暦2000年問題のときに、一気にいろんな機器を入れ替えました。それから6年たち、7年たち、8年経ち、いろいろと問題点が発生してきます。外回りの部品など壊れてくる。
ところが、オープン系というのは、いろんなベンダーさんの部品やシステムを組み合わせて買ってきますよね。バックアップ機器部品などを例に取ると分かりやすいかもしれません。このいちばん末端のなんでもないような部品が故障して買い換えの必要性が生じた際、最新の部品はサーバーのバージョンが違うから現行機器には付かないなどという話になる。部品そのものは買うと10万円くらいで買えるんだけれども、本体のサーバ全部入れ替えなきゃいけないというような話になる。となると、何億円にもなる。しかも、サーバーのOSのバージョンを変えるとなるとアプリケーションが動くかどうかも分からないという話にもなる。
—— 大規模システムのユーザーにとっては、大型汎用コンピュータのレガシーよりも、そちらのほうが問題であると。
島田 先ほど申し上げたように、さいわい1個1個のシステムが小さいから、現状では救われている部分があります。大規模システムに使っていたらどうなっていくんだろうという心配はあります。
—— 国産メーカーは、もう大型汎用コンピュータをリタイアさせるべきだと言っているわけですが、オープン系もそうなまやさしくはないぞということですね。
—— 「メインフレームは終焉していない、現在もまだ現役でさらに大きな問題を残しつつある」という事を本日の話題にするつもりでしたが、島田常務の話を聞いて「レガシーを叫ぶならメインフレームだけでなくオープン系のシステムも着々とレガシー化が進んでいるだよ」……という結論になったようです。それでは本日はお忙しいところありがとうございました。どちらにしてもこのレガシー問題はメーカー任せでは解決しません。ユーザー側で実力のあるCIOのもとITガバナンスを確立して解決するしか道はなさそうです。
以下次号ではもう少しオープン系基盤の問題を取り上げて今後の方向性について同じく島田常務にご意見をうかがう事に致します。ご期待ください。
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