KDDI(株)は22日、au携帯電話が採用しているデータ通信仕様“CDMA2000 1xEV-DO”(Evolution Data Only)の最新版にあたる“EV-DO Rev.A”と、同報配信機能の“BCMCS”(Broadcast/Multicast Services)に関する記者説明会を東京・飯田橋の“ホテルメトロポリタンエドモント”で開催した。
“EV-DO Rev.A”および“BCMCS”に関する説明を行なったKDDI(株)技術統轄本部 技術開発本部長の渡辺文夫氏 |
上り伝送速度が144kbpsから1.8Mbpsに
EV-DOとHSDPAの比較表。赤の囲みがシステム効率で、HSDPAでは上りで「0.12-0.15」なのに対し、Rev.Aでは「0.24-0.29」と値が上回っており、使用感においてRev.Aのほうが快適だという |
Rev.Aは現行の“EV-DO Rev.0”を機能拡張した仕様で、上りのピーク伝送速度がRev.0の144kbpsから1.8Mbpsに、下りは2.4Mbpsから3.1Mbpsにアップする。同社によると、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモが秋ごろに実用化する“HSDPA”では上りピーク伝送速度が384kbps、下りは3.6Mbps(NTTドコモのサービス値。HSDPAの仕様理論値は最大14.4Mbps)だが、システム効率(単位周波数あたりの伝送可能容量)ではEV-DO Rev.AがHSDPAを上回っているため、多数のユーザーのアクセスが集中する環境でも、一人あたりの通信速度を高く保てるという。
また帯域の割り当てをコントロールするQoS(Quality of Services)に対応することで、VoIP等のIPベースのリアルタイムコミュニケーションサービスを提供できるようになるという。
左はQoSによる音声と映像制御の例。右は“Hybrid ARQ”と“Multi User Packet”の解説図 |
QoSでは音声、映像に対して個別に帯域の割り当て設定が可能。また遅延を極力抑えるために、上りでは送信データをサブフレームに圧縮し、正しく復調できるまで繰り返し送信する“Hybrid-ARQ”という技術を導入。下りでは、従来のRev.0において4ユーザー分のデータを伝送するのに4つのスロット(リソース)を利用していたが、Rev.Aでは1つのスロットで4ユーザー分のデータを伝送する“Multi User Packet”という技術を採用する。
3Gシステムのロードマップ図 |
Rev.Aによるサービスは12月に開始され、2007年3月までに全国主要都市で利用できるようになるという。対応端末および具体的なサービスについては後日発表となっているが、VoIPを利用したテレビ電話サービスなどを予定しているという。
Rev.Aを利用した将来のネットワーク構成図 |
同社ではこのRev.Aを次世代ネットワーク構想である“Ultra 3G”における“ALL IP”化の根幹になるシステムと位置づけている。
BCMCSの商用サービスは9月から
BCMCSは3GPP2で標準化されている同報配信機能で、映像などの大容量コンテンツや、リアルタイム情報の一斉配信を行なえるという。
BCMCSの解説図。左が“Soft Combine”、右が“FEC” |
BCMCSでは複数の基地局から電波を同時受信する“Soft Combine”技術を利用しており、基地局間のセル境界で特に効果を発揮する。これにより基地局から離れた場所であっても別の基地局からデータを受信できるため、安定したデータの受信が可能だという。また、従来の配信方式(TCP)では、受信したデータにエラーがあった場合、そのデータを再送してもらう必要があったが、BCMCSではあらかじめ冗長パケットを付与して送信する“FEC”(Forward Error Correction)方式を採用。データにエラーがあった場合も冗長データから誤りを修正できる。なお、この際に用いられる符号方式は、高い誤り訂正機能を有する“LDPC”(Low Density Parity Check)となる。
BCMCSは現状のEV-DO Rev.0でも利用可能(ただしソフトウェアアップグレードが必要)となっており、BCMCSを利用した商用サービスは今年9月に開始される予定となっているが、具体的なサービスなどについては後日発表となっている。