講演したNTTドコモのIP無線ネットワーク開発部長の尾上誠蔵氏 |
(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ IP無線ネットワーク開発部長の尾上誠蔵氏が“4Gへの発展シナリオ”と題した講演を、開催3日目の15日に行なった。4G(第4世代携帯電話サービス)に進化する過程で実現される“Super 3G”構想の標準化の現況などが語られ、最後には、すでに実験の成功が発表されているNTTドコモの4Gの通信実験について説明した。
Super 3Gとは |
尾上氏によれば、現在の3Gから4Gへの移行シナリオとして、3種類が挙げられる。
- 3Gとはまったく別に4Gを立ち上げる方法
- 3Gを最大限生かして4Gを開始する方法
- 3Gを発展させ、その発展した3Gから4Gに移行させる方法
3つめのシナリオで登場する“発展した3G”とはSuper 3Gと呼ばれ、第3世代携帯網の規格を検討する団体の“3GPP(3rd Generation Partner Project)”で議論が具体化してきているという。
尾上氏は、その議論の過程として、2004年11月にトロントで行なわれた3GPPの会合で“Future Evolution Workshop”というワークショップがもたれたことを紹介した。尾上氏はこのワークショップでの議論について「オペレーターサイドから8件、メーカーサイドから13件の提案があった。ワークショップなので結論は出ないが、みんなの考えてることがよくわかった」と評価した。
さらに2004年12月にアテネで行なわれた会合では、オペレーターやメーカーなど26社が提案、Super3Gについて検討しようということに合意がなされた。そのときに示されたプランは、“2006年6月に検討を終え、2007年6月にスペックをリリースする”というスケジュールを想定したものという。
2004年11月にトロントで行なわれた3GPPのワークショップでの提案 |
Super 3Gについての会合スケジュールとその内容 |
そして、アテネでの会合の後にさらに2回の会合があり、2005年3月の東京での会合ではワークプランなどが話し合われ、2005年6月のケベックでの会合ではワークプランやSuper3Gの要件が承認された。
尾上氏は承認された要件を示し、
- 通信速度が下り100Mbps、上り50Mbp
- 接続遅延はアイドル状態からの立ち上がりの遅延が100ミリ秒以下、休止状態からは50ミリ秒以下、無線アクセスネットワーク内での遅延は5ミリ秒以下。
- ユーザーのスループットについてはリリース6のHSDPAに対して一般ユーザーが下り回線で使用した場合は3-4倍、そのほかでも2-3倍となる
――とした。
3GPPで承認されたSuper 3Gの要件 |
Super 3Gについてのテクニカルレポートの概要。赤字がNTTドコモが推す方式 |
また、尾上氏は、同時にワーキングレベルで具体的に技術的なディスカッションが始まっていることについても述べた。いわば“たたき台”としたテクニカルレポート“25.814 V0.1.1”の概要を示し、6つの提案された標準化のうち、NTTドコモが推す方式は下りが“OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)”、上りが“SC-FDMA”(Single Carrier FOMA)だという。
今回講演した尾上氏は、昨年も同イベントで4Gに関連する講演をしている。それと今回の講演を比較し「去年はコンセプトだけだったものが具体的な話ができている」と1年の進捗について評価した。