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野村総研、中国市場の動向と日本企業の戦略を分析

2004年07月07日 22時38分更新

文● 編集部 小板謙次

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■有産階級層の出現でマーケットとすべきところが変わってきた

もう少し市場をミクロ的に見ていくと、外資系企業がターゲットとすべきマーケットが最近変化してきたと此本氏は指摘する。引き合いに出されたのが携帯電話の例だ。1999年には携帯電話の加入者は5000万人だった。しかし、今年の5月末で加入者は3億人に膨らんだ。1年で6000~7000万人増えている計算になる。4~5年前には一部の富裕層の持ち物であった携帯電話の加入者がここまで増加したのは、国産メーカーが市場を伸ばしていることが要因になっている。以前は、フィンランドのノキア社、米モトローラ社といったブランドメーカーがシェアを握っていたが、現在の1位は波導(15%)、2位がモトローラ(14.2%)、中国TCL社(11.6%)、ノキア(9.7%)などとなっている。「富裕層のところは外資系が頑張っているが、一部では国産のメーカーにシェアが侵食される」と指摘する。これらの購買を支えているのが、世帯年収5万~10万元以上(約650万円以上)と予想される有産階級層で、富裕層の裾野を形成する人たちである。有産階級層は企業のオーナー、海外帰国組、外資系企業の勤務者などで、マイカー、マイホームの購入が可能で投資や貯蓄に熱心といったプロフィールが当てはまる。この層は2008年の北京五輪には富裕層の仲間入りが予想される。

農村や地方都市から大都市を狙った国産メーカーのシェアが拡大してきている
農村や地方都市から大都市を狙った国産メーカーのシェアが拡大してきている

野村総研では昨年中国の16都市で1万人を対象とした消費者調査を独自に行なった。それぞれの都市で10万元以上の富裕層は約1%くらいを占めるにすぎないが、経済が進んでいる地域、例えば深せんではほぼ半分を占めるほどになっている。

マーケットとすべき層が変わってきた富裕層の裾野を形成する有産階級層が広がっている
マーケットとすべき層が変わってきた。富裕層の裾野を形成する有産階級層が広がっている

■第2ステージは地方・農村部での戦いだ

また、今後は8億人市場と言われる地方や農村部でのボリュームを確保していく必要がある。そうしなければ、中国国産企業にハイエンド、ミドル市場を占有されてしまうという。それには、地方の企業とのアライアンスも必要だという。氏は中国最大といわれる民営の化学メーカーと花王(株)の合弁企業である杭州伝化花王有限公司の例や、華龍日清食品有限公司の例を挙げ、売上高を伸ばしていることを指摘した。華龍日清食品有限公司は、資本参加した河北華龍有限公司が地方に圧倒的な販売網を持っていたことが強みとなった。「外資系は現地でのリソースが足りない、一方で現地企業は経営手法を取り入れたいと思っている場合もある。そこらへんがマッチングしたケース」という。また、大都市から地方や農村部へプロモーションをかけている企業として米イースト万・コダック社や米コカ・コーラ社の名前を挙げられた。

人材確保も重要な問題だ。中国では「日本製品は質がいいが、企業では働きたくないという傾向がある」と話す。中国における就職人気ランキングのなかで日本企業の順位をみてみると、2003年は17位にソニー(株)、32位に松下電器産業(株)がランクインしており、2004年はソニーは26位に、松下電器産業は46位に下がっている。

中国における就職人気ランキング
中国における就職人気ランキング

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