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「次期モデルには『Red Hat Enterprise Linux WS』を採用する」──日本HPのLinuxワークステーション担当者インタビュー

2003年08月07日 20時43分更新

文● 編集部

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なぜ『Red Hat Linux 7.3』なのか

[編集部] “Linux Preinstall”モデルのOSですが、なぜ『Red Hat Linux 7.3』なのでしょうか。より新しいバージョンを採用しないのはなぜですか。
[松本氏] HPとしては、ワークステーションマーケットで利用されるアプリケーションが最も多いOSを選びました。それが『Red Hat Linux 7.3』、正確にいうと『Red Hat Linux 7.x』だったということです。1つの例として、EDA分野のLinux対応アプリケーションですが、対応しているディストリビューションの多くは『Red Hat Linux』で、かつ7.xがほとんどです。7.1や7.2がありますが、ハードウェアのチップセットですとか、ドライバの関係上、古いOSをのせられる限界があったために、そのバランスをとって7.3にしてあります。
なぜワークステーションで使うようなソフトウェアの多くが古いバージョンへの対応にとどまっているかというと、半年単位といったLinuxディストリビュータのバージョンアップについていくのが困難だからです。かつ、UNIXと比べてLinuxはバージョン間の互換性が相対的に低いです。
一方、ハードウェアベンダーとしては、メインのストリームはWindowsですから、Windowsさえ動けばハードウェアはどんどん新しくなります。お客様は新しい、速いハードで、必要なアプリケーションを使いたいので、ディストリビューションは別に何でもよく、とりあえずのらなければいけないわけです。しかし、使いたいものが動くハードがないとか、OSがないという矛盾が現場で起きていました。
HPとしては、まずLinuxモデルは誰のための製品かを考えました。それは使ってくださるビジネス系の企業であり、エンジニアリング系のお客様であるわけです。そして絶え間ないOSの更新からお客様を守る、あるいはソフトベンダーさんを保護する━もちろんソフトベンダーさんがどんどん追いついてくれればいいのですが━その緩衝材となるよう、HPとしては『Red Hat Linux 7.3』を選んでいます。
米国では若干早く“Linux Preinstall”モデルを出していますが、最初は当時最新の『Red Hat Linux 8.0』をのせる計画でした。そのときに、現場の営業やマーケティング担当者から、『Red Hat Linux 8』はのるけれども、ワークステーション市場では使いたいお客様がそれほど多くはない、圧倒的に7.xだ、と待ったがかかりました。そこで『Red Hat Linux 7.x』をできる限り使いたいお客様のために、不具合があればレッドハットさんが出しているパッケージの中からチョイスして、きちんと『Red Hat Linux 7.3』がのるようにしました。
[編集部] ディストリビュータさんでも、同じような問題意識をお持ちになっていて、たとえばレッドハットさんですとワークステーション向けに『Red Hat Enterprise Linux WS 2.1』といった長期サポートを行なう製品をリリースされています。こちらを搭載することになはならなかったのですか。
[松本氏] もちろん、たとえばレッドハットさんが『Red Hat Enterprise Linux WS 2.1』を販売されているのは分かっています。今度新しく3.0を出されることになると思いますが、今はまだ過渡期であるので、次のステップの“Linux Preinstall”モデルに使っていくことになると思います。春の時点で確かに『Red Hat Enterprise Linux WS 2.1』がありましたけれども、やはりアプリケーションがほとんどありませんでした。そのため、まだ『Red Hat Enterprise Linux WS 2.1』は使用していません。
次期プレインストール版はエンタープライズOS、『Red Hat Enterprise Linux WS』を搭載することを考えています。今はレッドハットさんなどのディストリビュータが新しくエンタープライズモデルを出している時期であり、エンタープライズLinuxというのがこれから本格的になっていくだろうと期待しています。プレインストールモデルは、これは年内、冬の初めから秋の暮れくらいに出てくるモデルに採用することを考えています。

サポートの問題

[編集部] 一方、現在採用されている『Red Hat Linux 7.3』のサポート期間ですが、レッドハットさんは2003年12月末で打ち切ることを発表しています。現在HPのワークステーションを購入された方へのサポートは来年以降も行なわれるのでしょうか。
[松本氏] HPは“Linux Preinstall”も“Linux Ready”もOS保守サポートも提供しています。これは別途有償サービスになっています。ハードウェアにバンドルされる3カ月のワランティを延長して、プラスアルファのお金でハードの修理を行ないます、というのは普通だと思いますが、OS部分についても『Red Hat Linux』を対象にサービスを提供するという形になっています。
具体的には、HPのサポートサービスの1プログラムである“Care Pack Support for Linux”をWindowsやHP-UXと同等の価格で提供しています。これはOSを含めたトラブルシューティング、セッティングや電話サポートなどで構成されます。Linuxの場合、OSのサポートは基本的にはベストエフォートです。
このサポートでは、問題がOSだったのか、ハードだったのか、そしてOSのどこが原因になっているのか、そこまでの追求を行なうというものです。そこから先に原因は見えるとしても、ディストリビュータさん、または開発コミュニティに向けて情報を発信することはできますが、すぐに解決することは1ベンダーとしてはできません。そこは最大限の努力をするということです。
ですから、ワークステーションにプレインストールされる『Red Hat Linux 7.3』についても、1年の保守を付けていただければ、来年1年間はHPとしてのベストエフォートでサポートしていきます。問題が起きたときに、レッドハットさんにそれを伝えても直してもらえないということはありますが、何が原因かを追求するところまでは今と同じようにやっていくという形です。

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