日本テキサス・インスツルメンツ(株)は、米国本社のThomas J.
Engibous(トーマス・J・エンジバス)会長、社長兼CEOの来日に合わせ、同社の事業戦略に関する記者発表会を実施した。
同社戦略の骨子となるのは、世界において45パーセントとトップシェアを誇るDSP(Digital
Signal Processor)ビジネスに注力するということ。同社では、2年ほど前から、多角化していた事業の再編を進めていた。例を挙げると、防衛部門をレイセオン社に、モバイルPC事業部をエイサー社に、メモリー事業部をマイクロン・テクノロジー社に売却した一方で、DSP事業およびアナログ製品事業においては、アマティ・コミュニケーションズ社、Go
DSP社、Arisix社を買収するなどしている。
その結果、'97年度の同社売上98億ドル(約1兆3400億円)の約80パーセントを担う半導体グループのうち、57パーセントをDSPおよびアナログ製品が占めるにいたったという。3年前はこの数字が30パーセントだったというから、確実な事業転換がなされたことが分かる。
Engibous氏は、「マイクロンへのメモリー事業の売却で事業の再構成はほぼ完了した」とし、今後は得意分野のDSP事業をさらに強化すると説明した。
そのための施策のひとつが、DSPソフトウェア事業の強化である。「DSPソフトウェアのプログラマーを獲得したものが、DSP市場において勝利を収めるだろう」とEngibous氏は語る。現在、同社のDSPに向けて3万人以上がソフトウェアの開発に当たっているといい、この数を増やすのが、当面の目標だ。そのために、世界中の900の大学においてDSP教育プログラムを提供しているほか、今後はソフトウェア開発環境の整備にも力を入れていくという。
また、もうひとつの強化事業であるアナログ製品事業についても説明があった。投資を増強することで、今年リリースするアナログ関連製品の種類は、昨年に比べ倍増の80種類になるといい、来年はさらに倍増させる予定だとした。「半導体業界は動きが速い。フォーカスを絞らなければ生き残れない」というのが、Engibous氏の結論である。