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【INTERVIEW】2年間の調査を経て日本の個人資産管理分野に進出するマイクロソフト(後編)

1998年07月13日 00時00分更新

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(前編より続く)



----WindowsCE上で動作するMoneyについての計画はありますか。

 「WindowsCEに関しては、これからインストールベースがかなり増えていけば、その段階でサポートするということはじゅうぶん論理的ではないかと考えています。WindowsCEのデバイスを持ってる人が、店頭で何か取引をしたら、その内容をその場で記録して、家に帰ったときにデスクトップのMoneyと連動させて同期を図るというようなことができると思います」

----米国の一般家庭は、どのくらいオンラインバンキングを利用しているのでしょうか。

 「最新のデータによりますと、米国9500万世帯うち、実際にオンラインバンキングを利用しているのは150万から200万と言われていますので、現時点ではかなり限られてると思います。2年程前は、消費者が実際にWebサイトから口座情報を得たり、支払い業務を行なったりできるようなサービスを提供している銀行は、7行ぐらいに限られていました。ところが最近では約400行まで増えてきていますので、これからオンラインバンキングの普及率は、かなり伸びていくのではないかと思います。特にここ2、3年でかなり伸びると考えられています」

----逆に日本のオンラインバンキング事情についてはどう思われますか。

 「これまで、一般消費者を対象とした金融機関からの本格的なサービスの提供がなかったという状況であり、現在のところゼロと言っていいと思います。消費者に対してそういうサービスの提供をすること自体に、非常にお金がかかったわけですが、Moneyが登場したことにより、本格的なコンシューマーオンラインバンキングサービスの時代が開かれてくると考えています。日本ではNTTデータ通信(株)のANSER-SPCを利用して、大体80くらいの機関と接続できます。Moneyを使って、具体的な支払いや振込みをするといった行為がどんどん増えていくのではないかと思います」

----Moneyの今年度の目標シェアを教えてください。

 「これまでこのような本格的な製品は日本ではなかったと思います。確かにローエンドの製品はありましたが、当然Moneyはそうしたローエンド製品が提供しているフィーチャーはすべて持っていますし、それに加えてライフプランニングなど非常に優れた機能があります。ライフプランニング、投資、家計簿といったものを備えた新しい分野の製品ですので、当然我々としては100パーセントのシェアを狙っていきたいと考えています。マイクロソフトから現在このような製品が提供されているというPRを積極的に展開していくべきだと思います。また、実際に数多くのソフトウェア再販業者や銀行の方々が、私どもをサポートしてくださっていますので、初年度でかなり伸びていくと期待しています」

----現在、日本の金融機関が非常に危機的な状態にあり、個人消費も低迷しているのですが、こうした時期にMoneyを投入することをどう考えていますか。

 「もちろん景気がもっと好転してくれればという希望はあります。ただWindows98が発売される年であり、実際にWindows98が出ることによって、たくさんの人がお店に行って、アップグレードすると思うのです。そのときにお店にMoneyがあれば、こういう製品があるのだという意識をきっと持ってもらえると思います。確かに、危機という状況はあるかもしれませんが、日本でも金融ビッグバンが発生している中で、Moneyを使って、自分でも自分の資産をきちんとコントロールしてみようと思ってくださる人はかなり出てくるのではないかと思います」



----日本のPCユーザーにメッセージを。

 「ぜひ私どものMoneyを買っていただきたいというのが、一言でいえば私のメッセージになるのですが、その理由として、私どもがこの分野に現在非常にコミットしているということを、ぜひ強調させていただきたいと思います。グローバルプロダクトを開発するためにお金と時間をかけていますし、これからも日本のユーザーの意見を真摯に聞いて、製品の改善に励んでいきたいと思っています。日本のユーザーがどのような製品を求めているのか、各バージョンを通じてそうしたニーズにこたえていきたいと思っています。また、そういう努力をすることによって、ユーザーにとって本当に価値のある製品をマイクロソフトは提供しているのだというイメージをぜひ持っていただきたいと思います。個人の資産管理という意味で、この製品を使っていただくことにより、本当によりよい環境を得ることができると考えています。ぜひ私どものMoneyを買っていただきたいと思います」

----米国ではMoneyという直接的なネーミングに違和感はないのでしょうか。

 「小切手や会計業務、支払い業務といった特定の業務に限らず、さまざまな機能を提供しし、製品そのものの機能が高く評価されているということで、プレスからもお客様からも特にMoneyというネームに関して否定的な反応というのはありません。逆に、非常に広範な人々が必要としている機能が提供されていますので、Moneyというネーミングでよかったのではないかと思います」

----以前マイクロソフトがインテュイットを買収しようとして断念したということがありましたが。

 「もちろん当時我々としてはインテュイットを買収したいと本当に思っていました。うまくいけばなという希望はあったのですが、残念ながらうまくいきませんでした。当時は非常に大きな失望を覚えたのも事実です。DOJ(司法省)の判断によってインテュイットを買うことができないということになったわけですが、結局買収がうまくいかなかったということで、マイクロソフトとしてもこの個人資産管理の分野で、より真剣に取り組むようになったと思います。スタッフの数も2倍に増やしましたし、とにかく最高の製品を作るんだという意気込みのもと、ビルゲイツの了承を得て、非常にたくさんのリソースを投入することができました。野球チームが、シーズンが終わって次のシーズンに向かう際、特に成績の悪かったチームは、かなり努力をしてトレーニングを行ない刷新するわけですが、そのようなことを我々はやったのではないかと思います。わずか2年でMoney98は本当に高いレビューをいただいています。イタリア、フランス、ブラジル、UKで我々はリーダーですし、米国でも30パーセントまでシェアを伸ばしています。毎年シェアは上がってきていますし、成長率の方も、業界全体としては60パーセントか70パーセントぐらいで終わってるのですが、我々の方は4倍の500パーセント伸びてます。買収がなかったからこそ、今の状況があるのだと思います。そういう意味では、買収がなかったということに関して、非常に今は幸せに感じています」

聞き手:月刊アスキー 笹川達也
構成:報道局 桑本美鈴

インタビュー日:7月7日
場所:マイクロソフト(株)本社

http://www.microsoft.com/japan/products/money/

[Moneyの製品情報は、7月18日発売の『月刊アスキー 8月号』に掲載されます。また、このインタビューの詳細は、8月18日発売の『月刊アスキー 9月号』に掲載されます]

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