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【INET 2000 Vol.4】IPv6への移行は必然。だがNATもなくならない――パネルディスカッションから

2000年07月21日 00時00分更新

文● 編集部 高島茂男

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“INET 2000-The Internet Global Summit”が21日まで、パシフィコ横浜において、開催された。本稿では、20日に行なわれた“インターネットレイヤーの未来”と題したパネルディスカッションの模様をお届けする。同ディスカッションではIPv6*への移行は必然としながらも、IPv4やNATが急に消えてなくなるものではなく、いかに両者を接続していくのか、その対策が急がれるとパネラー達が語った。

*IPv6:現行のIPv4が32bitのアドレス長に対し、128bitのアドレス長をもつ次世代インターネットプロトコル。NATは、1つのグローバルアドレスを複数の内部アドレスで共有する仕組み。

進行役には、同会議のCo-chairで米IBM社のブライアン・カーペンター(Brian Carpenter)氏。パネラーは、慶應義塾大学の村井純氏、米サン・マイクロシステムズ社研究所のガブリエル・モンテネグロ(Gabriel Montenegro)氏、ISOC会長で豪Telstra社のジェフ・ヒューストン(Geoff Huston)氏、米ipVerse社のマット・ホールドリッジ(Matt Holdrege)氏、米ワールドコム社のビントン・サーフ(Vinton G. Cearf)氏(左から)の5名
進行役には、同会議のCo-chairで米IBM社のブライアン・カーペンター(Brian Carpenter)氏。パネラーは、慶應義塾大学の村井純氏、米サン・マイクロシステムズ社研究所のガブリエル・モンテネグロ(Gabriel Montenegro)氏、ISOC会長で豪Telstra社のジェフ・ヒューストン(Geoff Huston)氏、米ipVerse社のマット・ホールドリッジ(Matt Holdrege)氏、米ワールドコム社のビントン・サーフ(Vinton G. Cearf)氏(左から)の5名



ここ最近起こっている変化について、各氏が発言を順に行なった。まずサーフ氏は、「インターネットの問題として、まずハッキングがある。次にアドレスの枯渇。2006年には25億個のアドレスが必要になると思われる。IPv6へ移らなければならないだろう。そして2020年には宇宙間のインターネットができるようになっていて、火星と通信しているのではないだろうか?」と語った。

ホールドリッジ氏は、「オープンなEnd to Endのコミュニケーションは必ずしも好ましくない。そのことからもIPv6への移行が遅れ、NATが相変わらず残っている」と、IPv6への移行を遅らせている1つの要因として、NATが必要とされていることを挙げた。

ヒューストン氏は、「IPv6というのは必要な動きであると言える。一方でNATも使っていかなければいけない。この2つの整合性をどうするのか、それが問題だ。またインターネットはスケーラビリティーとフレキシビリティーという相反する性格を持っている。一方を優先すれば、もう一方が犠牲になる。楽観的にみれば、フレキシビリティーに未来があると思う」と語った。

モンテネグロ氏は、「IPv4でどこまで行くのか? できないことはない、できそうだと結論に至った。しかし、それにはシンプルなアーキテクチャーを考えだす必要がある」としながらも、IPv6に反対しているわけではなく支持していると述べた。

村井氏は、「5年前からすべての車がインターネットに接続されると言ってきた。今年までに全てと思っていたが、残念ながらようやく20台が接続されたというところ。すべての車を接続するにはアドレスが必要。家電も接続されることを待っている」と、“すべての車、家電にアドレスを”という自論を語った。

最後にカーペンター氏が、「初期の段階ではワイヤレスインターネットでIPv6、そして従来の網はIPv4というのも1つの手だと思う」と、すでにIPv4網が張り巡らされてしまった固定網より、これから発展するワイヤレス網がIPv6化しやすく、そこから入っていく手もあると語った。

各氏の意見を総合すると、IPv6への移行は必然であるということがわかる。しかしその一方で移行を遅らせている1つの要因であるNATがなくなることもないだろうと考えている。そのことから、IPv6のみの世界へ移行するのではなく、新しい物と古い物をいかに共存させ、接続していくのか、その対策が早急に求められていると意見の一致をみた。

では移行の促進にはどうすればよいかというと、カーペンター氏は、「IPv6が取り込まれた物を買うと、これまでよりずっと前へ進んでいくことができる」と、IPv6対応の製品が社会にあふれることがIPv6への移行を進める近道であると語り、パネルディスカッションを締めくくった。

次開催“INET 2001”は、2001年6月5~8日の期間、スウェーデンのストックホルムで行なわれる予定となっている。

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