3日、東京都港区青山の“IL CAVALLOBIANCO”(イル・カヴァッロ・ビアンコ)にて、“MAF(マルチメディアアライアンス福岡)プラザ'99
in 東京”が開催された。
“マルチメディアアライアンス福岡”とは、福岡県にある、マルチメディアビジネスを推進する任意団体である。福岡のマルチメディア新産業の復興を目的とした県の事業として、通称“MAF(マフ)”と呼ばれている。参加者は、マルチメディアコンテテンツ産業関係会社と、クリエーター。クリエーターを結集し、ビジネスの橋渡しをするプロデュース機能と地域戦略が、MAFの役割である。
福岡県は、このMAFを中心に、アジア、世界のクリエーター(個人・企業)が参集し、交流する地域にするめため活動を開始。2015年には福岡県内で1兆2000億円のマルチメディアコンテンツ産業の市場規模創出を目指すという。「福岡をマルチメディアビジネスの拠点に!」と、麻生県知事も提唱、マルチメディアビジネス復興のための“クリエイターの育成”と、“マルチメディア・ベンチャービジネスの支援”がこの会の事業目的となっている。
そのMAFが、県外第一弾イベントして、東京のメディアビジネスとの連携を目指した交流会を行なった。
'98年の活動内容がまとめられたカタログ『MAFショウケース』では、福岡のクリエイターのCG作品や、各テーマごとに制作されたウェブ作品を掲載。これまでの成果を資料化したものを、集まった東京のメディアビジネス関係者に配布した。
MAFの、中央交流会の成果は?
MAF設立2年目の今年だが、その交流会そのものは、和やかな地域交流会といった印象である。MAFの設立趣旨と活動内容の紹介のあと、これはいいとする。福岡出身の芸能人を出演させる映画制作、これも発想がいかにも福岡人らしい。ここまで、思いっきり地域色を出したほうが、NHK連続ドラマの『走らんか!』のようで、話題になるかも知れない。九州芸術工科大学、坂井和滋氏が進行を務めた |
ただし、ちょっと気になるのは、本会の目的とされている“交流をとおし、実際の中央のメディアビジネスとの連携の可能性を探索する場に”という一文である。“中央との連携”という言葉がわざわざ使われているあたり、この会によって具体的な連携ビジネスは発展しそうなのかと思いきや、決してそうではないところが特徴である。
言わずとも、福岡出身のマルチメディアクエイエイターはじめマルチメディアビジネス関係者で成功している例は少なくない。ビットバレー内にも福岡出身経営者がいるし、ポストペットは有名な話、いずれもルーツが福岡という人物が一部で第一線を張る。そして、かのソフトバンクのルーツも元はといえば福岡県や佐賀県であった。
東京中、ひっかきまわしてみれば、福岡ルーツのプロデューサーなんてゴロゴロ転がっていそうなものである。そういう名プロデューサーを産出した土地であることは間違いないのだが、まったく
活かしきれていないのは残念な話ではある。
“中央との連携”なんてものは、一企業や個人が、それぞれで開拓しなければ得られるものではないのかもしれない。
しかし、それは私有財産であるだけでなく、その後のきちんとつながるビジネスとでなければ連携は不可能である。おいしい料理とお土産の“交流会”で嬉しい接待だけでは、そのきっかけにはなっても、成果(ビジネス連携)にはつながりにくいかもしれない。
しかし、せっかくなら、きちんとマーケティングを行なって、上京した1人ひとりがそれなりの成果をあげていただきたいところである。などとお役所に言うのは無理があるのだろうか。
会場風景 |
MAFでクリエーターは育成されるか
東京からの仕事の受注、などという意識では地方の一制作者が入り込みにくいというのは確かにある。しかし、そもそもSOHOなどというのは実力のあるクリエーターのために作られたような言葉で、自分で創って営業して納品できるのならば、どこにいても仕事が集中するもの。福岡在住の制作者でも殆ど東京の仕事をメインにこなしていたりする。MAFは、そんな福岡のクリエイターに儲かってもらうにはどうしたらいいか、を考えるべきかもしれない。そんなクリエーターを何人養成できるか、がMAFの成果ともいえる。なぜなら、設立趣旨にある“地元クリエーターの育成”という目的ならば、既に活躍しているクリエーターが、福岡にいても儲かる状況であれば、福岡にコンテンツビジネスが根付いてゆくのかもしれない。
東京のビットバレーは、場所とかイメージの印象が強くて、得をしているのかもしれない。マルチメディアビジネス系・デジタルコンテンツ系といっても、コアメンバー企業を除いては、非常に野次馬が多いように感じる。“代理店系”、“ブローカー系”、“コンサルタント系”が多く、実際にウェブ以外にコンテンツを生み出しセルフプロデュースをしている企業は少ないのではないか、というのが個人的ながら正直な実感だ。
その点、福岡は意外と中身が濃い。3Dソフトメーカーのエクスツールスをはじめ、オリジナルコンテンツパッケージ売りで勝負している企業や個人が多いあたり、ビットバレーとはまた違った味わいの地域になる可能性を秘めている。
「ビットバレーめざしましょう」というのではなく、「日本のデジタルコンテンツといえば福岡だ」というような、最初から自信を持ってオリジナルメーカーになるくらいの勢いがあって欲しいと思うのだ。
MAF'98年カタログ『マルチメディアショウケース』 |
第1回グランプリ受賞作品。酒見亮平氏の『福岡銀行』 |