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【KNN特約】電話市場に革命が! シリコンバレーのベンチャーカンパニー、ウェブ無料電話サービス、ダイヤルパッド・ドット・コム

1999年11月10日 00時00分更新

文● KandaNewsNetwork 神田敏晶

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3週間で30万人のファンをつかんだ無料の電話。世界で一番小さな放送局、神田敏晶氏のレポートでお届けする(本稿では、企業名をカタカナ表記とした)。

無料の電話サービス、国際電話も可能

もしも、電話料金がまったく無料になったとしたら? そんな夢物語のようなネットサービスがウェブに誕生した。しかも日本からだと国際電話でさえも無料になってしまうのだ!

そのウェブサイトは--。

・ダイヤルパッド・ドット・コム
 http://www.dialpad.com/

今までインターネット電話はいくつも登場してきたが、会員制度や接続方法の難解さ、アクセスポイントの限定といった難があった。そして、一番の普及の障壁は、それらが有料であったことである。しかし、このダイヤルパッド・ドット・コムが、それを広告というビジネスモデルですべて無料にしてしまったところに注目したい。

ダイヤルパッド・ドット・コムのウエブサイト。非常にシンプルだ
ダイヤルパッド・ドット・コムのウエブサイト。非常にシンプルだ



このウェブビジネスを理解するには、あなたが自らJavaで作られた、padをダウンロードして、電話を掛けてみることが一番の近道である。米国内のどこへでも無料でインターネット電話をかけることができてしまうのだ。しかも日本からはインターネットを経由することによって、それは国際電話をも無料にしてしまったのだから……。

スタンフォードの学生たちに、「もはやダイヤルパッドなしでは暮らせない」ともいわせるほどのバイラル(viral)マーケティング(日本でいう口コミ)でこのサイトは3週間で30万人の熱狂的な顧客をつかんだ。10月18日(米国時間)のデビュー以来、毎日1万人以上の顧客が増殖している。

ダイヤルパッド本体。ウェブブラウザーに表示されるのが特徴
ダイヤルパッド本体。ウェブブラウザーに表示されるのが特徴



シンプルなパッドは、今までの電話のメタファーをそのものを再現しており、誰もが使用できることだろう。しかもアドレス管理などの機能がフィーチャーされることによって電話以上の便利な使い方をもたらし、CTI市場にも大きな影響力を及ぼすものと思われる。

ダイヤルパッド無料のビジネスモデルとは?

これには、2つのビジネスモデルがある。このサイトの特徴であるが、まずは、ダウンロードする前の、年収までヒアリングするような、ウンザリするような顧客データの収集がすべてを物語っている。

それらは、すべてパッドに表示するための広告のためにあり、広告主は属性を絞って、パッドを持っている顧客を選ぶことができるのである。これは広告主にとって魅力的であり、顧客も電話している間、常にその広告を見ることができ、もしも電話の話が退屈であれば、話の合間にウェブでその広告主のサイトをブラウズすることもできるからである。

ダイヤルパッドのフォーム入力画面。年収や学歴、趣味や購買予定など延々と続くが、無料電話のためなら仕方がない……
ダイヤルパッドのフォーム入力画面。年収や学歴、趣味や購買予定など延々と続くが、無料電話のためなら仕方がない……



顧客の多くが、このダイヤルパッドで5分以上の長話をする傾向にあるようで、すでに広告の露出機会はそれだけ高まっているといえる。

技術ライセンスの可能性も

そしてもう1つのビジネスモデルについて、ダイヤルパッド社のCEO、ハンダック・アーン氏に聞いた。

ダイヤルパッド社の社長兼CEO、ハンダック・アーン(Hyunduk Ahn)氏
ダイヤルパッド社の社長兼CEO、ハンダック・アーン(Hyunduk Ahn)氏



「2年半前からVO-IP(インターネットの音声プロトコル)を研究しており、今年の10月13日にウェブでの初公開に踏み切りました。私たちの特徴は、とにかくフリーであるということです。また、電話に対抗するものではなく、インターネットの音声コミュニケーションの1つのアーキテクチャーの確立なのです。GTEやいろんなパートナーとも現在協力しあっています」

「現在は、広告のビジネスモデルがあるのですが、それだけに依存したくはありません。私たちは国際規格 H.323に準拠した“Split-323”というアーキテクチャーを特許で申請しており、そちらでのライセンシングをも、今後のビジネスモデルとして考えているのです」

ダイヤルパッド社マーケティングディレクター、ダヤン・キム氏
ダイヤルパッド社マーケティングディレクター、ダヤン・キム氏



ダイヤルパッド社のマーケティングディレクター、ダヤン・キム氏には、国際市場での展開について聞いた。「確かにグローバルなマーケットは念頭においてはいるが、まだ米国市場でもベビーカンパニーであり、まずは、こちらの市場でオーソライズされることが必須だ。また、現在3週間前の熱烈なユーザーたちからの声に応えるだけでもテンテコマイなんだ」と語る。

読者の皆さんは、この企業は、どのくらいの規模だと思われるだろうか? 実際に取材で訪ねてみて驚いた。本社はサンノゼから少しはずれたミルピタスにあるインキュベーターであり、本社は、なんとパーティションで区切られたキュービクルである。月額800ドルのキュービクルに創業メンバーをいれても10人に足らずが、全世界を相手にネットビジネスに賭けているのである。また、メンバーはコリアンアメリカンで形成されてもいる。

インキュベーター施設のキュービクルからも世界を狙えることを見事に正銘してくれた
インキュベーター施設のキュービクルからも世界を狙えることを見事に正銘してくれた




ダイアルパッド社が入居するインキュベートセンター(http://www.eg-group.com/)

編集部注:インキュベーター=ベンチャー企業が、スタートアップ時に入居できるように、いろいろなサービスを共有できるようにした貸しオフィス。キュービクル=部屋全体を借りているのではなく、部屋の一部の、仕切られた一角だけを借りているという意味

インターネットであれば、事務所の規模も国際性もまったく関係なく、純粋なドット・コム企業で勝負できることをよく表わしている好事例といえる。彼等に、Yahoo!の創業期と同じニオイをボクは感じた。

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