このページの本文へ

【Key Word Survey】インターネットの新しい標準~XML

1998年09月03日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷


インターネット技術の新しいサイクル

 コンピュータ技術の進化のスピードは、ついていけないほど速いということになっているが、ある課題を実現するための技術の世代に着目すると、20~30年という長期のサイクルが存在することがわかる。そして4、5年というのが短期のサイクルである。新技術の展示場のような様相を呈しているインターネットの世界も例外ではない。ここではいま新しい世代を形成するものとしてXML(eXtensible Markup Language)が脚光を浴びている。

 HTMLの最も重要な拡張、あるいはHTML以後の最も重要な標準であるXMLは、WWW技術の標準化を進めるW3Cという団体が採択するデファクトスタンダードである。マイクロソフトやサン・マイクロシステムズ、ネットスケープなどの有力ベンダーをはじめ、新興のベンチャーも、この新しい標準が生み出す事業機会に注目している。XMLは分散ミドルウェア、ドキュメント管理、ワークフロー管理など、21世紀の最初の10年間において最も重要とみられる技術市場とも密接な関係を持つ。インターネットに接続するコンピュータでは、数年以内にはすべてXMLが使えるようになるだろう。

考え、実行するドキュメントへの歩み

 日常のオフィスワークにおいて、仕事の起点と終点となるのはほぼ必ずドキュメント(企画書、報告書、伝票など)であり、その中間においてもドキュメント(メール、業務連絡、照会)が交わされる。さまざまな業務アプリケーションやデスクトップアプリケーションを使って実行される仕事を流れとして機能させるのがドキュメント、つまりビジネスで日常的に使用される文書であることに、千年前も現在も変わりはないのである。

 そのドキュメントが電子化されることによって、業務システムのインターフェースになりうることは、WYSIWIG技術がペーパードキュメントと電子ドキュメントとの見かけ上の差をなくした1980年代には知られていた。つまり情報システムと日常的なオフィスワークとの距離をゼロにする、ということが目標となったわけである。しかし、これにはシステムインテグレーション、分散した情報要素の管理という、技術的にも標準的にも大きなハードルを越える必要があり、インターネット(TCP/IP)と分散オブジェクトという二つの技術が問題を解決するのを待たねばならなかった。

 1990年代に入ると、統合電子文書システム、あるいはフォーム(帳票)ソフトのベンダーが、LAN環境でワークフローをサポートするドキュメンテーションシステムをリリースし、ターゲットが鮮明になってきた。そしてグループウェアの普及と相前後したインターネット/イントラネットの登場によって、システムベンダーからアプリケーションベンダーに至るすべてのソフトウェアベンダーが、この新しい電子ドキュメントに取り組むようになったのである。

 表示されるドキュメントの形式標準は、HTMLである。そして多くのアプリケーションがこれを使って作られた。HTMLドキュメントは、ポータビリティーは完全であったが、専用システム製品が提供していたようなプログラマビリティーは断念せざるを得なかった。

XMLで何ができるか

 XMLはHTMLが止まったところからスタートする。HTMLはドキュメントの構造を扱えるが、せいぜい見出しや表などである。ページの体裁を整えることはできても、より詳細な構造要素を定義したり、それらに特別な意味を持たせたりすることはできない。XMLを使えば、例えば楽譜のデータを送って表示あるいは演奏させたり、統計データを数式を使って計算し、グラフに表示させたりすることができる。まさに「応用は無限。想像力しだい」ということになる。これらすべてが、特定のアプリケーションに依存しないでできるようになるところが画期的な前進といえるのである。代表的な応用分野を示すと、次のようになる。

 (1)グループウェアの拡張
 (2)インターネット検索の高度化
 (3)電子メールの高度化
 (4)電子商取引(カタログ/受発注)
 (5)知識情報管理(文書管理の高度化)
 (6)電子フォームの拡張
 (7)事実上すべての業務アプリケーション

 逆にいうならば、現在有望と見られるコンピューティングの応用分野がそっくり入ってしまうのである。XML(本質的には構造化された情報の集合としてのドキュメント)のパワーはこのように巨大である。

 XMLをめぐっては、HTMLと同様オーサリング環境と実行環境が必要になるほか、特定の用途のためにドキュメント構造を定義したDTD(Document Type Definition)を整備する必要がある。事実上すべてのベンダーが、なんらかのソリューションを提供しようとしのぎを削っている。既存の業界地図を塗り替え、新しいスターを登場させることは確実である。

・(株)創研プランニング
http://www.skpl.com/index-j.html

鎌田博樹(かまたひろき)氏プロフィール

(株)創研プランニング代表。ニューズレター『オブジェクトレポート』編集長。オブジェクト・マネジマント・グループ(OMG)日本代表。ObjectWorldJapanコンファレンスを企画・運営。

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン