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Arriving UFO

1999年07月16日 00時33分更新

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 Linuxおよびオープンソースのビジネスに関する考察は、今のところ、あまり多くはない。オープンソースのエバンジェリストであるEric S. Raymondが「The Magic Cauldron」と言う考察を行なっているくらいであろうが、彼の考察は基本的には技術的な視点に基づいていると言って良いと思う。実際のビジネス市場の視点からの考察は、アメリカでも日本でもあまり行なわれていないようである(実は、私が知らないだけかもしれないので、ご教示、いただければ幸いである)。

 フリーOSであるLinuxがビジネス市場として有望視されているいっぽう、実際のビジネス分野の方々にとっては突飛なものであるという感覚がまだまだ根強い。そういう方々にLinuxビジネスに関して説明を重ねていく中で、私なりにLinuxのビジネスモデルを構築する必要に迫られた。マーケットという観点から言えば、大別して、テクニカル市場、組み込み市場、ビジネス市場の3つのビジネスモデルが考えられる。

 テクニカル市場モデルは、従来の伝統的Linuxビジネスモデルであり、技術市場や教育市場を中心に発展してきた。ここでのビジネス主体は中小規模のシステム・インテグレーション(SI)企業であり、エンド・ユーザーに対してLinuxのインテグレーションとサポートを行なうものである。

 このモデルにおいては、エンド・ユーザーの規模は比較的小さい。また、エンド・ユーザー自身がある程度Linuxに関する知識を持っているか、エンド・ユーザーが技術力のある中小企業からの提案を受け入れる判断力と柔軟性を持っている。あるいは絶対的な資金不足から敢えてチャレンジすると言うこともあるだろう。

 このモデルにおいてSI企業が成功するために必要なことは、まず、十分な技術力を持つことである。テクニカル市場では、エンド・ユーザーの多くが技術的理解を持っているので、SI企業の技術力が比較的評価されやすい。ある程度広義に考えれば、ユーザー自身がLinuxを用いてシステム構築を行なっているケースもこのモデルに含まれると言えよう。

 組み込み市場では低コストが重視されるだけにLinuxのライセンスが無料であるということはそれだけで大きな意味を持つ。それに加えて必要なモジュールだけを組み込んだり必要なデバイスドライバを作成したり、柔軟にシステム構築できる自由度の高さも評価されている。この分野でも、ビジネスに成功するには技術力が重要である。

 前回と変わって堅い話になってしまったが、今後は堅い話が延々と続くことになる。

(続く)

(樋口貴章)

樋口 貴章/ひぐち たかあき

プロフィール
1961年生まれ。今を去ること約15年ほど前、インターフェースの別冊付録「UNIXの世界」に書かれていた「UNIXの国のアリス」(萩谷昌己著)を読んでUNIXに興味を抱く。以来、体にしみついたコマンドラインは手放せないvi派。サン・マイクロシステムズ(株)ディベロッパープログラム推進部勤務。日本Linux協会事務局長、日本インターネット協会幹事、UBA(オープンシステム推進機構)Linux部会長、Javaカンファレンス幹事。

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