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業界研究レポート 第4回

動画配信業界・後編

どうなる動画配信業界――深夜アニメがなくなる日

2008年05月01日 16時00分更新

文● 斉藤邦雄(大空出版)

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業界研究レポート

著作権問題「売れない理由をYouTubeに押し付けるな」

 コンテンツホルダーらが著作権侵害でYouTubeなどを攻撃する最たる理由は、「商品を他者が無料で流通させてしまったら商売にならない」ことだ。インターネットが普及する以前、映像コンテンツは<製作者→テレビ局>あるいは<製作者→配給会社→流通業者→小売業者>という過程を経てユーザーの手に届いていた。この過程は映像・動画配信も同様で、インフラが放送電波や物理的な流通からインターネットに置き換わった程度にすぎない。また、各過程においてビジネスが成立している。こうした業者たちにしてみれば、劣化することなくコピーできるデジタルコンテンツを勝手にアップロードされることは、商品の万引きに等しい行為だろう。

 だが、動画共有プラットフォームだけが“映像コンテンツが売れない”理由なのだろうか。この問題に反論するユーザーサイトを巡回したところ、次のような意見が多数見られた。「(コンテンツ配信プラットフォームは)視聴したいと思う番組が少ない」「コンテンツ数は多くても購入したい作品が少ない」「パッケージ製品の価格が不当に高い」というものだ。ユーザーは、本当に手元に置いておきたい作品は高価でも購入するが、それに至らない作品はYouTubeで視聴すれば十分という傾向になっている。昨今のユーザーは無料配信に慣れている分、対価を支払うべきコンテンツであるか否かをシビアに判断していると言えよう。さらには、クオリティの低さを棚上げにして、売れない理由をYouTubeに押し付けるのは怠慢という意見も飛び出している。

コンテンツホルダーと動画共有の歩み寄り

 テレビ視聴率や映像パッケージ製品の売り上げが低迷している現在、コンテンツホルダーにとってユーザーを確保することが大きな課題となっている。このような中、多くのユーザーを抱えるYouTubeを自らのコンテンツをプロモートする場として利用しない手はないということか、最近になってYouTubeとの提携を進めるコンテンツホルダーも増えている。1月にYouTubeとの提携を発表した角川グループHDの角川歴彦CEOは「YouTubeはコンテンツの世界共通語、日本初コンテンツが世界に広まることに大きく貢献している」と語っている。ユーザーの確保という切実な問題が両者の歩み寄らせ、十把一絡にダメではなく対話の中で著作権管理に取り組んでいく事態に至っているのだ。この点では、有料配信や自前プラットフォームでの配信にこだわるテレビ局と温度差がある。

会見風景

角川グループHDの角川歴彦氏(右から2人目)が、YouTubeで公式コンテンツを提供することを発表した会見風景(2008年1月25日)

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