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空路倍増で羽田拡張に備えは万全

日本の空が二層構造に! RNAVとは?

2008年04月29日 17時00分更新

文● 野口岳郎(編集部)

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月刊アスキー 2008年6月号掲載記事

日本の空が変わる

羽田から札幌の航空路における、VORとRNAVのルート比較。ほぼ一直線のRNAVに対し、VORはジグザグだ

 大空は一見自由な空間に見えるが飛行機が好き勝手に飛んで衝突でもしたら大惨事だ。米軍や自衛隊の訓練空域もある。そのため、空にも地上の道路と同様「航空路」があり、旅客機はそこしか飛べないようになっている。従来航空機は、VOR(VHF Omnidirectional Range:超短波全方向式無線標識)という地上にある電波発信基地を順にたどる形で飛行してきた。しかし、出発地と目的地の間を直線的に結ぶ位置にすべてのVORを設置できるわけではないため、飛行経路はどうしてもジグザグになってしまっていた。

国土交通省・吉村氏

お話をうかがった国土交通省・航空局管制保安部 吉村 源氏

 だが、GPSや、DME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置、VORと併設されることが多い)という距離情報も発信できる基地の電波を使うことで、飛行機が自分のいる位置を把握できるようになった。これを使い、VORに頼らずに2地点間を直線的に飛ぶ「広域航法」(RNAV:aRea NAVigation)が導入されている。それでも好き勝手に飛ばれては危険なので、従来の航空路に加えて「RNAV用」の航空路が設置されている。RNAVを用いれば図のように飛行距離を短くできるため、飛行時間短縮とともに燃料消費(もちろん二酸化炭素排出量も)を抑えることができる。

 従来RNAVは、日本独自のレギュレーションで運用していたが、昨年4月に国際的な標準が定まったこともあり、昨年9月に羽田、伊丹など8つの空港の出発・到着経路において、また今年3月13日からはこれらを結ぶ航空路においても、国際基準に準拠する方式で運用が始まった。国際基準では、飛行機が航路上を飛ぶ際、5マイル以上逸脱しないという「精度」も規定されている。これは逆に言うと、5マイル以上離せば、もう1本航空路を設置できる、ということでもある。

 利用者にとってはただちに何か利便性が高まるわけではないが、これは、関西空港二期工事や羽田の第四滑走路などが揃い、いっそう空の過密化が予想される2012年以降を睨んだ「スカイハイウェイ」構想の第一段階でもある。2012年以降、飛行機が経済的に飛べる2万9000フィート(約8800メートル)以上の空域をRNAV専用にすることで、VORとRNAVの路線の交差をなくして管制の負担を軽減する一方、RNAV専用の上空域では高い飛行精度を生かし、鉄道の複線・複々線のように、現行航空路に並行した路線を設置することも可能になる。空の混雑が減れば、利用者にも飛行時間や待機時間の削減という形でメリットが現れる。

無線航法図

国土交通省航空局が発行しているエンルートチャート(Enroute Chart:無線航法図)を見ると、日本の空の混雑具合がわかる

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