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ECサイト構築における「Linux」となるか?

大阪の会社がなんで“無料”!?

2008年04月24日 18時00分更新

文● 中西祥智(編集部) 写真●曽根田 元

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月刊アスキー 2008年5月号掲載記事

「EC-CUBE」――オープンソースのECサイト構築ツールとして無償で提供

商品の陳列・注文から受注管理、売上げ集計等、ECサイトの構築に必要なひととおりの機能を備える。プログラムはPHPで記述され、GPLライセンスに基づいて自由に改変・再配布できる。すでに100サイト近いECサイトがEC-CUBEで構築されており、またEC-CUBEを利用したASPサービスもホスティング企業によって展開されている。

「アドエビス」――広告効果測定システムで収益を上げる

広告がどれだけ成果に結び付いたのかを測定するツール。クリックした数日後にビジネスに結び付いた事例、あるいは成果に直接結びついた広告だけでなく、呼び水となった過去の広告の効果も、Cookieなどを利用して測定する。EC-CUBE専用ツールではなく、ECサイト以外の幅広いウェブサイトで利用可能だ。料金は月額1万500円から。

 商人の町たる大阪、ゼニの花咲く大阪に、なぜかECサイト構築ツールを“無料”で提供してしまう企業がある。「ロックオン」という企業がそれだが、別に同社が奇特なわけでも、ボランティアでやっているわけでもない。

 代表取締役社長の岩田 進氏は22歳のときに、ウェブ制作会社として同社を起業した。だが、岩田氏には「世の中にインパクトを与える“製品”を作りたい」という強い希望があった。その願いを具現化した製品として開発したのが、ECサイト構築ツール「EC-CUBE」と、広告効果測定システム「アドエビス」だ。

 まず「EC-CUBE」。これを無償で提供し、かつソースコードも公開したのは、岩田氏がECサイト構築ツールをパソコンにおける「OS」のようなものと捉え、プラットフォームとして広く普及させることを狙うからだ。

岩田 進社長

株式会社ロックオン 岩田 進代表取締役社長。同社は本社や開発拠点は大阪、営業拠点は東京に置く。大阪に本社を置くことは、移動のコストなど、実際にはデメリットのほうが大きいとか。それでも、すべてが東京に集まることに疑問を感じる岩田氏は大阪にこだわり、「大阪から全国へ、そして世界へ広がる製品を作りたい」と語る。

 インターネットでの商取引はいま、約4兆円という巨大市場に膨らんでいる。この市場において、個々のECサイトが収益を上げるには相当な独自性を発揮できなければならず、それには柔軟なカスタマイズが可能なツールが必要となる。

 そこで岩田氏は、いわばリナックスのように多くの人々が自由に開発できるオープンソースのECサイト構築ツールなら、ロックオンが1社で開発するより迅速かつ高度に進化するに違いないと考え、ソースコードの公開に踏み切った。

 EC-CUBEがECの基盤として普及すれば、その上で動作する顧客管理や広告効果測定など、ECに必要な各種のしくみを提供することで、ソフトウェア企業も収益を上げられるだろう。

 その一例として、同社は「アドエビス」を提供する。従来からウェブサイトのアクセス解析ツールは存在したが、バナーや検索広告など、広告の効果をリアルタイムに分析できるツールはなかったという。

 そこに目を付けた岩田氏は、どの種類の広告からどれだけのアクセスが収益に結び付き、顧客の獲得単価がいくらだったかまでを一括して分析・管理できるツールとしてアドエビスを開発。最近になって国内でも広告効果測定システムという存在が認知されるようになってきており、その分野ではトップシェアという。

 大阪でいま元気なのは、橋下府知事だけじゃない。大阪の会社が作ったECの基盤ソフトが、世の中を変えるかも!?

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