MSのエンジニアには副社長並みの給料を取る人が200人いる
中島 エンジニアは神ですよね。
海部 そうですよね。価値を作り出しているのがエンジニアです。
中島 グーグルは1億円の売上のうち9000万円くらいがエンジニアから生み出されています。一方、同じお金を生み出すということでも、日本のIT産業では1億円のうち9000万円くらいを営業が生み出していると思うんです。
営業が取引先のお偉いさんを接待漬けにして500万円で作ったものを1億円で売っているという世界なので、日本ではエンジニアが神になれないんです。僕は、「エンジニアになるというのはもっと幸せなことなんだよ」と伝えたいですね。
世界のトヨタも最初はベンチャーだったんです。当時のトヨタは技術者が作っていました。その頃はベンチャーキャピタルなんてありませんでした。だから、日本にシリコンバレーがないからできないということはないと思うんですよ。
司会 では、日本にいる人たちはどうしたらいいんでしょうか?
海部 日本に来る前に訪れたグーグルでは、「エンジニアが仕事をするには200メートル以内に食事ができる店がなければならない」という話を聞きました。それは、カジュアルに集まって話ができる場所が必要だということです。
話を聞いていて、私が昔務めていたホンダにいた時に聞いた話と似ていると思いました。80年代から90年代初めにかけて日本が注目されていたときには、「ホンダを見習え」と言われていました。ホンダに世界共通の優れたセンスがあったからではないでしょうか。
変人の話でも、本田宗一郎さんが日本の一つのモデルケースになると思います。日本人だからダメということはないんです。実際にそういう人がいたんですから。戦後の混沌があって、そういう人が出ました。だから、積極的に混沌や厳しいぬるま湯を作るべきなんです。
司会 私は「議論が分かれることをやれ」というのに感動しました。YouTubeも「あんな著作権に引っかかりそうなビジネスはアリなのか」という意見も出ていましたが、結局成功してグーグルに買われましたよね。
海部 議論が分かれることをしないのが閉塞感の原因だと思うのです。物事を進めるには、その周囲に弁護士などがいて、賛成する側がそれなりに強くないとダメなんですよ。「ぬるま湯」は、何かを実現するためのそうしたサポートシステムとして必要だと思います。
※4月24日発売の「月刊アスキー6月号」にて対談の全文を掲載予定