「聴いてよかったものを買う」のが当たり前
── 「やること」とは具体的に何でしょう?
津田 端的にいえば、カタログを充実させたり、ユーザーが使っていて不便を感じないDRMを用意する、もしくはDRMフリーにするといったことじゃないですかね。
そもそも音楽は「何らかの手段で聴き、いいと思ったものを買う」という当たり前のプロセスを経て購入されるわけです。
現状、新しい音楽を知る入り口として、テレビやラジオ、店頭の試聴機などが用意されています。そうしたメディアの中には、1曲フルで聴けるものもありますし、テレビやラジオなら私的複製の範囲で保存することもできる。
違法ダウンロードについての「まったく同じものが手に入ってしまうから、そこで満足して正規のコンテンツが売れない」という彼らの主張も理解できますが、ユーザーは無料でまず聞いて、そこで気に入ったものを買おうという人が大多数なんです。どこかで新しい音楽に触れても、そもそも音楽にあまり興味がない人は買わないわけで。
── とはいえ、著作権侵害による金銭的な被害が生まれていることも見過ごせませんが……
津田 不正ダウンロードによる経済的な損失と、そのPR効果で得られる利益。これはとても難しい問題です。間違いなくどちらもありますし、コンテンツの種類や販売チャンネルなどの環境的要因にも左右されますから。
ただ個人的には、今の規制の流れが進む先には「音楽はお金を出さなければまったく聞けない」「新しい音楽に無料で触れる機会が少なくなる」といった状況があるんじゃないかと感じるですよね。僕はそれが音楽業界の自殺行為だと思います。
違法なものを認めろとは言いませんが、対処/摘発のしきい値をどこに置くのか、これを時代に合わせて柔軟に検討していかなければならないんじゃないでしょうか。一般の人々にとっての音楽は「娯楽のひとつ」でしかないわけですから、今音楽業界がやるべきことは、他の娯楽よりも音楽に対して興味を示す人をどれだけ多く生み出せるかということですよね。
少なくともエルマークにはそういう効果は一切期待できない。だから、ムダなことを一所懸命してるな、という感覚はあります。頑張りどころはそこじゃないだろ、っていう。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ。














