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大ヒット映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」をASCII.jp的に斬る

【インタビュー】昭和33年の東京に突如出現したアイツの真相を山崎貴監督に直撃!!

2007年12月31日 16時00分更新

文● 千葉英寿

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 昭和33年の町に地響きとともに強烈な咆哮が響き渡る。ヤツの巨大な足に家が壊され、尻尾の一振りに車や都電が吹き飛ぶ。勇敢にもその地獄絵図の中を、今にも崩れ去ろうとしている我が家に向かって、猛然と疾駆する一台のオート三輪。そして、町を廃墟に陥れ、愛する家族に迫るヤツに敢然と立ちはだかる男が向かった先は鈴木オート。そして、そのヤツとは………。

山崎 貴監督

山崎 貴監督

 ロングランヒットを記録し、日本アカデミー賞をはじめ数多くの賞を獲得した日本映画の傑作「ALWAYS三丁目の夕日」。その続編として11月に公開され、この年末年始も全国で話題を集めて、ロングランを続けている「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のオープニングが、前述のシーンだ。

 このオープニングは公開まで秘密にされ、ごく一部の関係者だけが知るサプライズ演出として、公開当日に劇場へ足を運んだ観客の度肝を抜いた。観客を涙の海に沈めるだけでは飽きたらず、今度は超ド級のVFXエンタテインメントで幕を開けるとは、やはり山崎 貴監督はタダモンじゃない

 そこで2007年も暮れようとする中、2002年の映画「リターナー」でのインタビュー(関連記事)から実に5年ぶりに、山崎監督にお話をうかがう機会を得た。通常のインタビューであれば、ALWAYSで描いた昭和の世界や感動のストーリーに話が集中するところだろうが、ASCII.jp的にはこのオープニング、そしてVFXの話題にフォーカスして単独インタビューを敢行した。



なぜ、大スター、ゴジラを起用?


―― のっけからマニアックな質問ですが、あのゴジラは“どのゴジラ”をモデルにしたものですか?

山崎 あれは金子さんのゴジラ※1がベースになっています。いわゆるGMKゴジラとか、白目とか言われるヤツですね。僕が白目のゴジラが好きだったのと、怖いゴジラにしたいと思ったので。

※1金子さんのゴジラ:金子修介監督がメガホンを取った映画「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001年)に登場した“白目”のゴジラ。徹底して悪役として描かれた


―― 昭和30年代という設定を考えたら、昭和29年の“初代ゴジラ”ではないのですか?

山崎 そうなんですが、それでもちょっと初代を意識して耳をつけたりとか、いろいろしているんです。ハイブリッドなゴジラなんですよ。

―― なぜ、怖いゴジラに?

山崎 一作目のゴジラはとにかく怖いですよね。戦争のメタファー(隠喩)だと思うのですが、キノコ雲のイメージがあったり、ゴジラが東京に入ってくる経路がB29の侵入経路とまったく同じだったりとか。戦争が身近にあった時代に成立するものとして、怖いゴジラを選びました。とにかく大人が見て怖い、大人が見るエンタテインメントに相応しいものを考え、そのイメージを大事にしたいと思いました。

―― それにしてもなぜオープニングの大事なシーンにゴジラを出そうと?

山崎 昭和がポイントでした。昭和でなければゴジラは出せないと思っていて、以前、もし自分がゴジラを作るとしたらと考えたことがあって、それには昭和は切り離せないと考えたんです。戦争の傷後が残っているあの時代のムードは、現代では成立しません。フィクションとしては面白いけど、現代ではあまりにも現実と乖離しすぎていて。
 そして、なんと言ってもゴジラは大スターじゃないですか。それをお迎えするには、ちゃんとした舞台を用意すべきだと思ったんです。それなら、ゴジラが原風景にある、昭和だと。今ならゲストでお迎えできるかもしれない。このチャンスは逃せないと思ったということもあります。ただ、それには最高の舞台を用意したいなと。最高の舞台を用意するとなれば、尺はあまり長くできないなと思って、このような登場をお願いしたわけです。

―― ゴジラが登場するシーンがあるから、本編の感動的で暖かなストーリーが生きてくると思ったのですが。

山崎 それは深読みです(笑)。そんなたいしたもんじゃないんです。もし、あのシーンに意味を持たせるとすれば、1作目を白紙にしてほしいと言うことです。一旦、ぶっ壊して、観客のみなさんに口あんぐりしてほしいと。

―― 出てきそうでなかなかゴジラ本体は出てきませんが。

山崎 制作する上で意識したのは、ゴジラ本体より、ゴジラが起こしていること。例えば、家やビルが吹っ飛んだり、都電が飛んできたりとか、そういう部分です。最近のハリウッドの優れたホラーやパニック作品って、本体よりも、そいつが起こす周りのことを描いていますよね。その手法できっちりやろうかな、と思ったんです。なんと言っても、本人よりも噂話の方が凄い、ということがあるじゃないですか。本体を見せるよりも、断片的にその場にいる人だけが知りうる情報だけを提供した方がリアリティーがあるんです。それが俯瞰で見せたりすると、急に人ごとになっちゃうじゃないですか。登場人物だけしか体験できないことを画面で見せて、それで最後に“ご本尊”がバーンと出てくる。最初、鳴き声だけで、という話もあったんですが、やはり出てこないと。ゴジラが登場するシーンは、あそこはまさに歌舞伎ですから。「よっ、ゴジラ屋!」と言うことで(笑)。

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