キングソフト(株)は19日、インターフェースに広告を配信する無料のセキュリティーソフト『Kingsoft Internet Security free』を発表、同日公開した。ユーザーインターフェースの一部に広告を表示することで、無料かつ無期限、機能制限なしでの利用を可能としている。広告表示のない製品版への移行も可能である。
Kingsoft Internet Security free(以下、無料版)は、ウイルス検出、スパイウェア検出、ソフトウェアファイアウォールなどの機能を備えた統合セキュリティーソフトである。無料版でも製品版と同じくあらゆる機能を利用でき、アップデートの更新も無期限で受けられる。その代わりに、アプリケーションのタイトルバーの下側に広告が表示される仕組みとなっている。
広告はアプリケーションの操作画面のほかに、アップデートの受信時にポップアップ表示するダイアログなどに掲載される。サンプル画面を見る限りにおいては、広告が邪魔をして操作画面が見にくくなったり、操作をしにくくなるといったデメリットはなさそうに思える。
この広告スペースには、ユーザーが無料版をインストールする際に入力した属性情報を元に、マッチすると思われる広告が配信される。ユーザーがこれらの広告をクリックすると、関連サイトなどへの誘導が行なわれる。
有料の製品版にアップデートすると、これらの広告は表示されなくなる。製品版は“1年更新版”(980円)から、更新期限のない“無期限版”(2980円)、パソコン3台までインストール可能な“3ユーザー無期限版”(3880円)が用意されている。なお、無料版の提供開始により、現在無償配布されている『Kingsoft Internet Security 6ヶ月試用版』については、9月3日から無料版に統合される。
無料で利用できるウイルス対策ソフトは同社製品以外にも存在する。同日、東京都内にて開かれた製品説明会で、説明を担当した同社取締役の沈 海寅(シン カイイン)氏は、これら競合ソフトと比べて無料版はインターフェースが日本語化されているほか、機能面も豊富でサポートも付属するといった優位を備えるとしている。
同社代表取締役社長の広沢一郎氏は説明会の冒頭で、無料体験版でユーザーを獲得した従来の手法から「ビジネスモデルの変革を発表する」と述べ、同ソフトで導入する広告配信モデルを、同社のビジネスの新たな柱としていくという意欲を示した。沈氏も今回の無料版の提供開始により、同社は従来のパッケージ・ダウンロード販売による販売収益のみの単一のビジネスモデルから、“ソフトウェアをメディアとした広告モデル”を加えた複合型のビジネスモデルへと転換するとしている。
広告配信モデルの構築に関しては、リンクシェア・ジャパン(株)とオーバーチュア(株)の2社と広告配信パートナーとして提携するほか、検索サイトなどをアライアンスパートナーとする。
また、一般的な広告配信モデルだけでなく、エンドユーザーに対する情報発信が多い企業(例としては、ショッピングサイトや自動車、不動産、ファッション系企業が挙げられていた)に対して、販促品としてのOEM版作成・提供というモデルも用意される。OEM版はOEM先企業のウェブサイトや販促物(CD-ROMやUSBメモリーなど)を通じて提供され、インターフェースにはOEM先企業のロゴや広告、リンクなどが掲載されるという。セキュリティーソフトをまったく異なる業種向けの販促物として活用するというのは、今までにない興味深いアイデアと言えよう。
Kingsoft Office 2007にVBA対応版登場
また同社は同日、マイクロソフト(株)の“Office”製品との高い互換性をうたったオフィススイート製品『Kingsoft Office 2007』の最新版(Ver1.2)を提供開始した。ユーザーインターフェースや機能面での細かい追加が行なわれたほか、ユーザーが独自機能をプラグインとして作成できるように、“プラグイン作成マニュアル”(PDF形式)とサンプルプラグインの提供も開始された。プラグインの作成はマイクロソフトの“Visual Basic”で行なう。
これに合わせて、ユーザーニーズの高いマクロ(Visual Basic for Applications)に対応する『Kingsoft Office 2007 Standard Edition(VBA対応版)』のダウンロード販売も開始した。マイクロソフトのOffice製品で使われるマクロの一部に対応する。価格は5480円。さらにVBA対応版の販売に合わせて、製品版の『Kingsoft Office 2007 Standard Edition』を通常価格4980円から、3980円に値下げして販売する“サマーキャンペーン”も行なう。期間は8月1日から9月30日まで。