月刊アスキー 2007年7月号掲載記事
BSE、輸入野菜の残留農薬等、食の安全を脅かす話題が昨今しばしば話題になる。下げ止まらない食糧自給率も懸念の種だ。
昨年12月には「有機農業推進法」が制定され、国や地方自治体における推進義務が明記された。しかし現実に農産物、特に生鮮野菜を効率的に流通させるにはさまざまな困難がある。
農産物は通常、生産者からJA経由で中央青果市場に持ち込まれ、そこで値が付けられる。したがって、生産者(農家)と買い手(スーパーなど)に接点はない。結果、いま何が求められているかが伝わらず、需要と供給のミスマッチが起きる。電化製品なら作りすぎても在庫にしてゆっくり消化できるが、生鮮食料品は保管がきかないから、作りすぎたぶんはまるまるロス、価格も暴落する。
生産者と小売業者が直接契約できれば、求められているものを指定の時期に作ろうとすることもできるし、価格も契約で決めておけば収入面でも安定する。しかし、チェーンストアとの電子商取引は、27年前に定められたアナログモデムベースの「JCA手順」が基本。今時モデムを入手するのさえ難しいし、システムを構築するのに数百万円の投資が必要になるという。
大手チェーンストアは、ウェブEDI(電子商取引)プロトコルでの取引に移行しているが、データフォーマットはチェーンごとに別々なので、相手ごとにシステムを作らなければならない。小さな農家がチェーンごとに別々のシステムを作ることは現実的ではない。
イーサポートリンク(以下ESL)は、すでにバナナやキウイなどを扱う大手の果物の生産者とチェーンストアとの間を結ぶシステムを開発・運営しているが、この夏を目処に、小規模の生産者がチェーンストアと電子商取引を可能にするASPサービス「生鮮MDシステム」を提供する準備を進めている。同社のサーバが小売業者との通信用にJCAや各種ウェブEDIをサポート、小規模生産者とはインターネット経由で通信することで両者を接続する。生産者はPCを1台用意すればチェーンストアと決済が行えるわけだ。さらにESLは、販売体制を持たない生産者のために、受注代行等の支援業務を行っている。
冬までにはさらに機能拡充を予定している。「早期支払いシステム」は、青果市場における5日程度という短い支払いサイトに合わせて先に生産者に代金を支払うというもの。さらに、生産者・生産履歴等を小売店や、買った消費者がウェブ上から参照できる「履歴情報システム」も追加する予定だ。
スーパーで買った野菜がどこから来たかわかるようになる日も、そう遠い未来ではなさそうだ。