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“大画面化”の次は“使いやすさ”がキーワード——2日目基調講演レポート

Display 2007、3大メーカーが今後のテレビのあり方を語った

2007年04月13日 21時32分更新

文● 編集部 永水和久

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11日に開幕したFPD(フラットパネルディスプレー)の最新製品の展示会“第3回 Display 2007”特別招待講演の2日目(12日)には、ソニー(株)、松下電器産業(株)、シャープ(株)(講演順)の代表者が登壇した。

ソニーの取締役代表執行役副社長の井原 勝氏

ソニーの取締役代表執行役副社長の井原 勝氏

松下電器産業の常務役員パナソニックAVCネットワークス社上席副社長の森田 研氏

松下電器産業の常務役員パナソニックAVCネットワークス社上席副社長の森田 研氏

シャープの取締役ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏

シャープの取締役ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏

2006年の基調講演のスピーカーである、ソニーの取締役代表執行役副社長の井原 勝氏と松下電器産業の常務役員パナソニックAVCネットワークス社上席副社長の森田 研氏に加え、シャープからは新たに取締役ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏が登壇した。なお、昨年に引き続き、今年も片山幹雄氏(元AV・大型液晶事業統括兼AVシステム事業本部長)が登壇予定となっていたが、今年2月に同社代表取締役社長に就任したため、都合により水嶋が登壇した。

前年は合計2500名が5ヵ所のサテライト会場からビデオ中継で視聴するほど注目を集めた基調講演であったが、今年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された家電製品のトレードショー“2007 International CES”の動向からもうかがえる通り、100インチ超えのFPD TVが量産体制に入り大画面化競争が一段落したからか、今年は大規模な講演にはならなかった。とはいえ、会場がほぼ満員の約1000名が来場した。

11インチ有機ELテレビは年内に発売すると明言した

11インチ有機ELテレビは年内に発売すると明言した

最初に登壇した井原氏が、11インチ有機ELディスプレーの年内発売を表明(関連記事)。そのほかは松下電器産業やシャープも含め、現在のFPD生産ラインの取り組みや、画像エンジンなどの独自技術を振り返る内容となった。


ホームネットワークはさらに使いやすく
テレビだけでフルHDの動画再生も


ただ、ソニーと松下電器産業に関しては、テレビの機能が充実する一方で、複雑な設定方法や接続に使用するケーブルが大量の束になってしまう問題を取り上げ、ユーザーにとっての使いやすさを訴えた。井原氏については、「テレビはコンセントにつないで電源を入れるだけで使えなければならない」とも例えた。この問題に対応するものについては、松下は“VIERA Link”(関連記事)、シャープは“AQUOSファミリンク”(関連記事)といった機能を2006年から搭載し始め、2007 International CESでは韓国LG電子社が“SIMPLINK”(関連記事)の搭載を発表し、海外のメーカーも取り組み始めている。

ソニールームリンク

ソニールームリンク

デジカメ専用の表示機能

デジカメ専用の表示機能

この問題に対して、ソニーは、デジタルコンテンツを家庭内ネットワークで共有する規格“DLNA”に対応する機器の使用時に、アイコンなどのインターフェースを追加してユーザーに扱いやすくさせる“ソニールームリンク”機能のほか、同社のデジタルカメラをUSBケーブルでテレビに接続して、動画や静止画をテレビの解像度に最適化して表示する機能などを今年のラインナップに搭載し始めた(関連記事)。関連して井原氏は、「動画や静止画のコンテンツを、パソコンではなくテレビで再生する習慣を作りたい」と意気込みを語った。

“アプリキャスト”

“アプリキャスト”

海外向けの機能“インターリンクビデオ”

海外向けの機能“インターリンクビデオ”

また、パソコンレスのAV/ネットワーク機能として、ブラビアには“TVをながら見しながら、ネットワークコンテンツを楽しむ”をコンセプトにしたガジェット“アプリキャスト”(関連記事)を搭載し、インターネットを利用する通販サイトやオークションといったコンテンツの立ちあげに、積極的に取り組んでいることを挙げた。「日本よりも海外では、インターネット上の動画コンテンツが盛り上がりを見せている。海外向けのラインナップには、インターネットを利用する動画コンテンツの再生機能も搭載する」と海外での積極的な取り組みも説明。

“VIERA Link”

“VIERA Link”

“VIERA Link”

“VIERA Link”を応用して、ラックの中にアンプなどのAV機器を組み込んだ製品

同社のカメラに使用するSDメモリーカードを直接テレビに差して再生できる機能

同社のカメラに使用するSDメモリーカードを直接テレビに差して再生できる機能

松下電器産業も、先に述べた、各機器をHDMIケーブル一本で接続して、対応リモコン1つで操作しわける規格“VIERA Link(ビエラリンク)”のほかに、テレビ本体にSDメモリーカードスロットを搭載して、同社のカメラで撮影した静止画/動画(フルHD含む)をテレビ本体だけで再生させる機能なども搭載し始めている。


ディスプレー技術が夢のある映像文化を牽引する


将来の予想図

将来の予想図

放送品質とディスプレー技術の関係

放送品質とディスプレー技術の関係

シャープは昨年と同様に、11日(1日目)のスーパーハイビジョン(関連記事)の話題を交えつつ、将来の予想図といった、夢のある話を提示した。今年はその夢の実現に向けて積極的な姿勢を見せており、従来は放送品質にディスプレー技術が追いつかない形であったが、現在は逆転して放送品質がディスプレー技術に追いついていない、と指摘をした。その上で、「これからはディスプレー技術が映像文化を創っていく」と意気込みを語った。

この水嶋氏の意気込みと、11日の基調講演に登壇したNHK技術研究所所長の谷岡健吉氏の言う、“スーパーハイビジョン実現のキーは今後のデバイス開発にある”という指摘とは、両社(者)がスーパーハイビジョンを基準に考察していないために共通するビジョンとはなっていない。が、この2日間の基調講演を通しての印象として、ディスプレー技術(デバイス開発)の進歩次第が、“夢”のある映像文化を実現するためのキーとなっているのは確かと言えるだろう。

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