仮想化技術によるデータセンター間連携が可能に
1000km越えで災害回避まで実現!EMCのVPLEX Geo
2011年05月26日 07時00分更新
5月25日、EMCは遠隔データセンター間でストレージを連携させ、単一の仮想化ストレージプールとして利用可能とする「EMC VPLEX Geo」の販売開始を発表した。
データセンターをまたいで仮想化連携
EMC VPLEXは、規模に応じて“VPLEX Local”“VPLEX Metro”“VPLEX Geo”“VPLEX GLOBAL”の4段階が構想されている。VPLEXが最初に発表されたのは約1年前で、その時点ではVPLEX LocalとVPLEX Metroが実現していた。今回は、VPLEXのシステムのアップデートによって既存のLocal/Metroも機能拡張を受け、さらに新たにVPLEX Geoが実現したということになる。
EMC VPLEXは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成されるシステムで、複数のストレージを連携させて仮想的な単一ストレージプールとして見せる、いわゆるストレージ仮想化を実現する。ストレージ仮想化は以前から実現されている技術ではあるが、通常はデータセンター内部など、ごく近距離で同一のSANに接続されているストレージを対象とするのに対し、EMC VPLEXでは遠隔のストレージまで対象に含めることができる点が特徴となる。
説明を行なった同社のエンタープライズ・ストレージ担当バイス・プレジデント兼グローバル製品販売部門チーフ・テクニカルオフィサーのケン・スタインハート氏は、従来の仮想化技術のメリットとして「非破壊的な情報のマイグレーションが実現できる」「マルチベンダー環境でのストレージ管理/プロビジョニングを一元化できる」「既存ストレージに対する投資保護が実現できる」という3点を挙げる一方で、問題点として「距離の制約で単一データセンター内部での利用に限定されるため、災害対策のための拠点分散に対応できない」「冗長性が低く、二重障害に耐えられない」という2点を指摘した。そして、EMC VPLEXは従来の3つのメリットはそのまま実現した上で、2つの問題点をも解決できるソリューションだと位置づけ、「EMC VPLEXは“真のミッションクリティカル・ストレージ”だ」とした。
EMC VPLEXは最大16台で1システムを構成でき、筐体間でデータの一貫性を維持する分散キャッシュ連携技術を実装する。ハードウェアが更新されて最新のWestmere世代のプロセッサが搭載されて低消費電力とハイパフォーマンスを両立させた。また、ソフトウェアもバージョンアップを受けてGoeSynchrony 5.0となり、さまざまな機能強化が行なわれている。
DRではなく災害回避が可能になる
なかでも注目されるのがオプション機能として追加された“VPLEX Witness”だ。VPLEX WitnessはVPLEXとは独立にVMware対応の仮想マシン上で動作するソフトウェアで、2拠点のデータセンターを監視し、フェイルオーバークラスター機能を実現する。VPLEXの分散キャッシュ連携機能によってデータセンター間でもデータの一貫性が保たれているため、ユーザーはどちらのデータセンターにアクセスしても最新のデータを参照することができるアクティブ/アクティブ構成のクラスターとして利用できる。また、障害発生時には即座に他のデータセンターに切り替えが行なわれるため、事実上RTO/RPOがほぼゼロとなるという。
なお、データセンター間の距離としては、VPLEX Metroでは100km以内、VPLEX Geoでは1000km以内が想定されている。実際には、データセンター間でのネットワーク通信のレイテンシが問題で、Metroでは5ms以内、Geoでは50ms以内というのが条件となる。この結果、Metroの環境においてはRTO/RPOがゼロ、Geo環境ではほぼゼロ、ということになっている。
同氏はこうした機能を踏まえ、「従来は災害発生時に迅速に復旧を果たすDisaster Revovery(災害復旧)が実現できるというレベルだったが、EMC VPLEXではRPO/RTOがほぼゼロという環境を実現できるため、事実上災害の影響をまったく受けずに済む“災害回避(Disaster Avoidance)”が実現できる」と語った。
次のレベルとなるVPLEX GLOBALでは、複数のデータセンターを相互に連携させ、全世界レベルをカバーする規模に対応することが構想されている。同氏はGLOBALの実装について「現在のVPLEX Witnessは2拠点間の監視を行なっているが、これを3拠点以上を同時に監視するように拡張することでGLOBALが実現できる」とした上で、「技術的には大幅なブレークスルーが必要ということではなく、段階的に実現していく道筋はすでに立っている」と語った。
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