話し方も表情も仕草も全部が千尋! 圧巻の再現度と評判の舞台「千と千尋の神隠し」ゲネプロ鑑賞レポート

文●オシミリン(LOVEWalker編集部)

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 子供の頃、何度も繰り返し見たジブリ作品。なかでも「千と千尋の神隠し」は私のお気に入りでした。両親が豚に変えられてしまうシーンや、カオナシや湯婆婆のビジュアルは恐ろしくもあったのですが、お話が進むにつれ、色鮮やかな映像や生き生きと動く千尋の虜になっていました。

 不朽の名作ともいうべき「千と千尋の神隠し」ですが、2022年に舞台化されて話題に。私もあの世界観が一体どんな風に舞台化されているのだろう…ととっても気になっていたのですが、初演を観に行くことはかないませんでした。

 そんな舞台「千と千尋の神隠し」が、2023年の愛知・御園座での再演を経て、今年、再び帝国劇場にて開幕しました。これを皮切りに全国ツアーも行われ、さらにロンドン公演も行われるのです。海外にまで飛び出すなんて、いかに素晴らしい舞台か、ということですよね。

 さらに今年は、初演から千尋役を演じてきた橋本環奈さん、上白石萌音さんに加え、川栄李奈さん、福地桃子さんも新たにキャスティング。ますます気になる舞台「千と千尋の神隠し」のゲネプロを鑑賞することができましたので、レポートします!

目の前に広がるあの“千と千尋”の世界

 今回観劇してきたのは、千尋役を上白石萌音さんが演じたゲネプロ。橋本環奈さん、福地桃子さんが演じる千尋役の写真も交えながらご紹介します。

千尋(演・橋本環奈)とハク(演・醍醐虎汰朗)

千尋(演・福地桃子)とハク(演・増子敦貴)

 物語は、千尋一家が引っ越し先へ向かう途中にあったトンネルから、八百万の神々の世界へ迷い込むところから始まります。そこで見つけた飲食店で両親が勝手に食べ物を食べ始め、豚になってしまう“あの”シーンももちろん再現。豚の被り物をした状態で登場する両親の姿は、舞台でも映画に劣らぬ恐怖感があります。

 そして、物語の主な舞台となるのは神々が湯浴みをしに訪れる「油屋」。舞台上に高さのある大きなセットで再現された油屋は迫力があり、一気に“千と千尋”の世界観に引き込まれます。この油屋のセットは、シーンに合わせて回転しながら表情を変えていくのですが、その様子も圧巻。そんな油屋で、豚となってしまった両親を救い出し、共に人間の世界へ帰るため、千尋が奮闘する…というのがこの物語です。

奇妙な見た目のキャラクターたちも見事に再現!

 「千と千尋の神隠し」といえば、現実にはあり得ない姿をしたキャラクターが数多く登場するのも特徴の1つ。緑色の頭だけで跳ね回る「頭」や、すすから生まれた小さな「ススワタリ」、真っ白な肥った神様「おしら様」などなど。アニメーションだからこそ実現することができたのでは?と思うようなキャラクターがたくさん登場します。しかし、それらのキャラクターもパペットや衣装で再現され、舞台上に現れます。こんな不思議な姿かたちのキャラクターたちが実際に動いているのを見られるなんて!と驚きです。

 油屋のボイラー室を取り仕切る、腕を6本持つ釜爺も、役者の腕2本と、パペットによる腕4本でしっかりと再現。パペットの腕も巧みに操られるので、全く違和感なく受け入れられます。

釜爺(演・宮崎吐夢)。パペットの腕も自然に動きます

 また、映画では強烈なビジュアルで描かれる湯婆婆も、そのインパクトをメイクでしっかりと表現。さらに、激しく怒るシーンでは、大きな怒りの表情がパペットで表現され、映画以上の迫力を感じられるほどです。

舞台でもしっかりとインパクトのある見た目が再現されている湯婆婆(演・羽野晶紀)

 映画で何度も観てきた「千と千尋の神隠し」の世界がこんな風に再現されるなんて!と、どんどん引き込まれていきます。

カオナシ、銭婆によって姿を変えられた坊、湯バードと共に電車に乗る千尋(演・上白石萌音)

魅力的なキャラクターが舞台上で生き生きと動き回る!

 「千と千尋の神隠し」の中で、私が好きなキャラクターの1人がリン。油屋で働く先輩として千尋を助けてくれるリンは、さっぱりした性格が気持ちいいキャラクターです。油屋では嫌われる存在である人間の千尋にも親切に接し、頼りになる先輩です。そんなリンが生き生きと動きまわる姿もこの目で見ることができ、嬉しくなりました。

千尋にとって頼れる先輩のリン(演・実咲凜音)

 そして、「千と千尋の神隠し」で圧倒的な人気を誇るキャラクターといえば、やっぱりハク。舞台上でももちろんハク様の涼やかな美しさは健在です!

舞台上でもかっこいいハク(演・増子敦貴)

 竜の姿のハクもパペットで見事に表現され、迫力があります。

竜の姿のハクと千尋(演・橋本環奈)

竜の姿のハクと千尋(演・福地桃子)

 また、今回の舞台で私が一番印象に残ったシーンが、竜の姿のハクの背に千尋が乗って飛ぶシーン。パペットの竜と千尋の動きが見事に合わさり、本当に空を飛んでいるよう。息を飲むような美しいシーンでした。

ハクの背に乗って飛ぶ千尋(演・上白石萌音)

 幕が上がると同時に引き込まれ、全く飽きることなくあっという間に過ぎ去った約3時間の上演時間。舞台上を駆け回り奮闘する千尋の姿に、何度心の中でエールを送ったことか…。

 4月にはロンドンでも上演がスタートする舞台「千と千尋の神隠し」。この迫力あるステージ、ロンドンでも間違いなく受け入れられるはず。東京・帝国劇場での公演チケットは全日程完売してしまっていますが、当日券のチャンスもあるようです。詳しくは公式サイト(https://www.tohostage.com/spirited_away/)をご確認ください。私も今回観劇した上白石萌音さん以外が演じるそれぞれの千尋も気になるので、チャレンジしてみようかな…と考え中です!


舞台「千と千尋の神隠し」
上演期間:
東京・帝国劇場 3月11日~30日
愛知・御園座 4月7日~20日
福岡・博多座 4月27日~5月19日
大阪・梅田芸術劇場メインホール 5月27日~6月6日
北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru 6月15日~20日
ロンドン・ロンドンコロシアム 4月30日~8月24日
原作:宮﨑 駿
翻案・演出:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子
キャスト:
千尋役 橋本環奈、上白石萌音、川栄李奈、福地桃子
ハク役 醍醐虎汰朗、三浦宏規、増子敦貴
カオナシ役 森山開次、小㞍健太、山野 光、中川 賢
リン/千尋の母 役 妃海 風、華 優希、実咲凜音
釜爺役 田口トモロヲ、橋本さとし、宮崎吐夢
湯婆婆/銭婆 役 夏木マリ、朴 璐美、羽野晶紀、春風ひとみ ほか


文 / オシミリン(LoveWalker編集部)

大阪生まれ。
趣味は読書と写真を撮ること、おいしいものを食べておいしいお酒を飲むこと。