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都市デジタルツインで地域はどう変わる?仙台市民が考えた街を楽しむ新たなアイデア

「PLATEAU IDEA PITCH SENDAI 2023」開催レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

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この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 2023年12月2日に「PLATEAU IDEA PITCH SENDAI 2023」が、宮城県仙台市にあるシェアオフィス・コワーキングスペース「enspace」で開催された。「3D都市モデルで何ができるか」をテーマにアイデアを出し合い、5つのグループに分かれてプレゼンテーションを行った。

進化を続ける「PLATEAU」

 12月2日、仙台で行われた「PLATEAU IDEA PITCH SENDAI 2023」。イベント当日は20名の参加者がenspaceに集まり、1日開催という短い時間の中で集中してアイデアソンに取り組んだ。

 今回のアイデアソンは、全9回に及んだ今年の「PLATEAU Hack Challenge」としての最後のイベントとなる。なお、開発関連のイベントの締めくくりとしては、最終選考通過作品も発表された「PLATEAU AWARD 2023」が2月24日に予定されている。本記事では、仙台でのアイデアソンのレポートに加えて、改めて「PLATEAU」を知らない初心者でもわかるよう、その現在地点をお伝えしたい。

 2020年にスタートしたProject PLATEAUは、国土交通省が地方公共団体、民間企業、多分野にわたる研究者、エンジニア、クリエイターら、さまざまなプレイヤーと進めている、日本全国の都市のデジタルツインを実現するプロジェクトだ。地方公共団体が持つ既存のデータから3D都市モデルを整備・活用・オープンデータ化し、さまざまな形での利活用を推し進めている。

 2021年度に全国56都市(市町村)、2022年度は新たに全国71都市の3D都市モデルのオープンデータを追加。2023年度は約70都市で新規整備する予定となっている。これら3D都市モデルだけではなく、データを扱うためのツール類も含めてオープンソースで公開されている。

PLATEAUの3D都市モデルをおさらい

 PLATEAUは、「都市デジタルツイン」を実現する手段である。

 デジタルツインとは、現実から収集したデータをもとにサイバー空間上で「もう1つの現実」を仮想構築し、フィジカルな空間と連携する技術のことを指す。PLATEAUの場合、実際の都市を高精度な形状として3Dモデルに落とし込むだけではなく、地物の種類(建築物や道路などが判別できる)や属性情報(それぞれの地物に付与されたデータ。建築物における階数や建築年、災害リスクといったものまで)なども入れ込むことで、従来の3Dモデルにはできない高精度なシミュレーションが可能となっている。

 PLATEAU公式サイトには、全国各地で実際に進められているユースケース開発事例が掲載されている。地域活性化・観光や災害対策のほか、エリアマネジメント、インフラ管理、自動運転などその多様さが見て取れる。

PLATEAU公式サイトに掲載のユースケース。3D都市モデルと様々な技術を組み合わせた実証の事例を掲載している
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/

 このような拡張性を実現させるため、PLATEAUが用いているのは、「CityGML」と呼ばれる3D都市モデルの国際標準規格だ。航空測量データなどから都市空間の形状を3D化したジオメトリ(形状情報)と、地方公共団体が持つ都市計画基礎調査などを基にしたセマンティクス(意味情報)で成り立っている。

PLATEAUのデータは年度ごとに更新されており、最新データはG空間情報センター内の「3D都市モデル(Project PLATEAU)ポータルサイト
で参照できる。またPLATEAUで扱う3D都市モデル固有の仕様は「3D都市モデル標準製品仕様書」に定められ、毎年バージョンアップがなされている

 なお、PLATEAUを扱う際に、3D都市モデルの表現レベルの詳細度LOD(Level of Details)の段階を知ることが重要だ。

LODによる詳細度の違い

 建築物モデルを例にとると、LOD0は平面情報、LOD1は箱モデル(建物+高さ情報)、LOD2は箱モデル+屋根の形状、LOD3は箱モデル+屋根の形状+外構、LOD4は箱モデル+屋根の形状+外構+室内となる。建築物や道路などの3D都市モデルについて、PLATEAUでは現在LOD1をベースに、エリアによってはLOD2、LOD3が整備されている。

 PLATEAUの3D都市モデルはこれらのマルチスケールな情報を同じデータとして持つことで、用途に応じた使い分けができるようになっている。LODに応じてセマンティクス側の情報量も変わる。例えば、LOD2ではLOD1に対して屋根・壁・屋外付属物などが区別できるので、「屋根だけの面積を集計する」「壁だけの面積を集計する」といった活用が可能になる。

 実際に触ってみるのが一番早い。PLATEAUウェブサイト上でWebアプリケーション「PLATEAU VIEW」(現在、V2.0)が提供されており、PLATEAUの3D都市モデルをブラウザ上で体験できる。

PLATEAUを使った開発のサポート体制

 PLATEAUの特徴として、データを整備・公開するだけではなく、開発環境へのフォローやコミュニティでのオープンイノベーションが盛んなことが挙げられる。特に、2023年2月にはゲームエンジン「Unity」および「Unreal Engine」向けのSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)を公開し、データを容易に扱えるようになった。

 PLATEAU SDK for Unity/Unrealは随時更新され、3D都市モデルのインポート・エクスポートにとどまらず、属性情報の表示や地物に応じたデフォルトマテリアルの設定、地形に航空写真や地図を貼り付ける機能などが実装されている。さらに、2023年度はUnityを対象に、環境設定・テクスチャの自動作成などをGUI上で可能にする「Rendering Toolkit」、乗り物・人・プロップスなどの配置及び操作、Tracksの設定などをGUI上で可能にする「Sandbox Toolkit」、Cesium for Unityと連携しBIMモデルを読み込む「Maps Toolkit」、Geospatial APIやARマーカーを用いた3D都市モデルの位置合わせやARオクルージョン機能を提供する「AR Extensions」を含む、PLATEAU SDK-Toolkits for Unityがリリースされた。

 これらの開発支援ツールはGitHubのProject PLATEAU リポジトリにて公開されている。PLATEAU公式YouTubeでは、これらのツールを使ったチュートリアルなどが公開されている。

 また、 3D都市モデルの利活用を加速するためにさまざまな地域団体とタッグを組む形でイベントを開催し、多様な角度から開発者コミュニティへと働きかけている。

 仙台市主催で開催された「PLATEAU IDEA PITCH SENDAI 2023」も、その一環だ。このような開発環境や情報が整備されたことで、生まれてくる作品の質や種類も年々高まっている。今回のアイデアソンでは、果たしてどのような作品が生まれたのか紹介したい。

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