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新MacBook Pro/iMac登場! Appleシリコンの性能は「M3」で新段階に! 第13回

Macによるゲーム体験の進化が止まらない! アップル担当者に聞く「シリコンとOSの技術革新」

2023年12月14日 12時40分更新

文● 山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

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Apple M3チップに初めて採用された「ダイナミック・キャッシング」。オンチップメモリの処理を最適化して、ゲームなどチップのGPUによるグラフィックス処理に大きな負荷がかかるタスクに対して余裕をもってこなせるように環境を整えます

Apple M3チップの新しいテクノロジー
「ダイナミック・キャッシング」とは

 続いてApple M3チップから搭載された「ダイナミック・キャッシング」を紹介します。新しい機能の概略をブルックス氏が次のように語ります。

 「ダイナミック・キャッシングはApple M3チップの中で、グラフィックス処理の中核を司る高速次世代GPUのパフォーマンスを最大限まで引き出すことを狙った新しいテクノロジーです。M3チップはM2よりも50億個多い、250億個のトランジスタと、次世代アーキテクチャを採用する10コアGPUを搭載しています。従来のAppleシリコンに比べるとグラフィックス処理のスピードが大きく向上します。Apple M1チップとの比較では約65%高速化しています。ダイナミック・キャッシングはMacのゲーミングパフォーマンス改善も引き出します」

 従来のGPUアーキテクチャではMacが複雑なプログラムを実行する際に、最も負荷の大きなタスクを元にしながら各タスクに同量のメモリを確保していました。ダイナミック・キャッシングはM3チップのGPUの性能をさらに限界まで引き出せるよう、各タスクが必要とする適切な量のメモリをリアルタイムに、かつ動的に割り当てます。M3チップのGPUが持つコンピューティングリソースがより効率よく使えることから、負荷の高いゲームやプロフェッショナル向けのクリエイティブツールなども使用環境に余裕が生まれます。

 ダイナミック・キャッシングはM3チップのGPUアーキテクチャに組み込まれる機能であることから、グラフィックスによる表現に贅を尽くしたゲームタイトルを快適な環境で遊ぶのであれば、やはりM3チップ搭載のMacが一番おすすめということになります。

デベロッパーによるMac版ゲームタイトルの開発を支援する
「ゲームポーティングツールキット」

 アップルは今年の世界開発者会議「WWDC23」で「Game Porting Toolkit(ゲームポーティングツールキット)」というデベロッパー向けのツールを発表しました。Windowsなど他のプラットフォーム向けに開発されたゲームを、Appleシリコン搭載のMacで動かせるよう、簡単に移植するためのツールです。AppleのウェブサイトでApple Developer Programの加入者向けにツールの提供が始まっています。

アップルは2023年のWWDCで、他のコンソール向けに作られたゲームコンテンツをmacOS向けとして簡単に移植できるデベロッパーツール「Game Porting Toolkit(ゲームポーティングツールキット)」を発表しました

 新しいツールキットの特徴をマーティン氏に聞きました。

 「ゲームポーティングツールキットにはいくつかの主要な構成要素があります。ひとつはエミュレーション環境です。ツールキットを活用すれば、デベロッパーの方々はプログラムコードを1行も書かずに、既存のWindowsゲームをmacOSで実行した時の潜在的なパフォーマンスが把握できます。最初のシーンをmacOSの環境で動作させるまでに必要になるソースコードのリコンパイル、HLSL(High Level Shading Language)からの何千ものカスタムシェーダーの変換など、通常は何ヵ月もかかる前処理の作業が省けます」

 MetalはAppleプラットフォーム上で、ゲームなどのグラフィックスから豊かな表現を引き出すソフトウェアです。ツールキットに付属するMetalシェーダーコンバーターの役割をマーティン氏が次のように説明しています。

 「どんなゲームにも何万行ものシェーダーコードがあり、それをMetalに変換するためには大変な労力が必要になります。この大きな負担を目の前にして、二の足を踏んでしまうデベロッパーの方々の気持ちも良くわかります。ゲームポーティングツールキットのMetalシェーダコンバーターを使えば、既存のHLSL GPUシェーダーを自動的にMetalに変換できます。シェーダーやグラフィックスの移植がとても簡単に、より短い時間でできます。ゲームタイトルのリリースまでの工期短縮にもつながります」

ゲームポーティングツールキットにはWindows向けゲームの移植を想定したエミュレーション環境と、HLSLからMetalへのシェーダーコンバーターなどのコンポーネントが含まれています。デベロッパーにはタイトルのローンチに向けて必要になる移植作業の負担が大きく軽減されます

 マーティン氏は「Appleシリコンが、より多くのプレイヤーにゲームを届けたいと考えているデベロッパーにも大きなチャンスを提供する」としています。ゲームポーティングツールキットを活用した“Mac版”の好例として、マーティン氏は「The Medium」を注目すべきタイトルに挙げています。

 今後はコジマプロダクションの「デス・ストランディング ディレクターズカット」やカプコンの「バイオハザード RE:4」の“Mac版”など、楽しみなビッグタイトルもローンチを控えています。

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