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「スタートアップ育成5か年計画」を経産省やスタートアップ協会、大手VCが語る

IVS2023 KYOTOセッションレポート『「スタートアップ育成5か年計画」の道の歩き方

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若者にスタートアップの情報が届いておらず、起業が将来の選択肢になっていないのでは。国は誰にスタートアップしてほしいのか?

佐俣:若者に情報が回らないことは理解できる。なぜならマイノリティには情報が回りにくいためだ。しかし、それでも情報が得られる場所を目指してほしい。また、自ら発信することで、逆に情報が入ってくることもある。

 誰にスタートアップしてほしいのかでいえば、スタートアップはあくまで手段なので、誰が使おうと構わないと思う。大企業の元役員で、役職定年後に起業するような人もいる。「スタートアップ育成5か年計画」は、スタートアップという手段を国が推進しているという単純な話だ。

M&Aでイグジットしたいスタートアップは、大企業とどのようにコミュニケーションを取ればよいのか?

宮下:大企業が圧倒的に苦手なのがPMIだ。買収した事業や人材を自社のリソースとして使いこなす能力が非常に乏しい。「Googleは人事の会社」という世界観がM&Aする側の企業に備わっていなければ、日本からGAFAMは生まれない。スタートアップ目線でいえば、どちらかというとM&Aの後が重要になると思う。

砂川:Googleに所属していた経験からいえば、Googleは買収がへたな企業だ。誤解しないでほしいのは、会社ではなく、PMIの担当者が優秀かどうかが重要になるということだ。日本でいえば、ニデック株式会社(旧・日本電産株式会社)はPMIが非常にうまい。PMIのレシピがあり、PMIの良し悪しが企業価値につながることを社員が理解している。

 スタートアップは、M&Aの相手企業にPMIの能力がどれくらいあるのかを必ずチェックしたほうがよい。それが買収される側のデューデリジェンスといえる。

国が注力して支援したい産業領域はあるのか?

:これは難しい問題で、まさに議論中だ。そもそも国が産業を決めるべきなのかどうかも判断が難しい。半導体などはあるが、むしろ意見があれば聞かせてほしい。

佐俣:国が率いるほうがよい産業と、率いないほうがよい産業は明確に分かれる。資源や半導体、安全保障に関する産業は、国が主導しなければどうしようもない。

小笠原:宇宙産業は国が率いたほうがよい。たとえばNASAは民間に予算をつけることが仕事だと明言している。今年3月に提言された、JAXAに戦略的な資金供給機能を付加するような話は非常にポジティブに捉えている。

小笠原治氏

砂川:『官僚たちの夏』という小説で、先進的なアメリカを真似することで、日本は経済成長を成し遂げた話がある。しかし、現代のように経済成長の種がわからない時代においては、イノベーションに頼るほかない。産業を絞ることはナンセンスで、出てくるものを伸ばすしかない。だからこそ、スタートアップという産業でもないものにかけているのだと思う。

スタートアップは「スタートアップ育成5か年計画」をどのように使いこなすとよいのか?

佐俣:VCの立場でいえば、公共調達はおすすめできる。国がスタートアップに発注するケースが増えている。スタートアップ支援は、スタートアップに売り上げをつけることに尽きる。国がスタートアップに売り上げをつけられるのが公共調達だ。

M&Aでイグジットする場合、ストックオプションはどのような取り扱いになるのか?

:これまでは無償取得や放棄するケースが多く見受けられた。しかし、起業家が従業員の努力に報いたいと思うのは当然のことだ。税制適格ストックオプションという、税優遇が受けられる仕組みを、M&Aのときにも行使できるよう改正を進めたい。

佐俣:スタートアップの産業においては、コミットした全員が報われる構造にしなければならない。投資家や経営者に利益が集中する仕組みでは盛り上がらない。利益を得た人が、シリアルアントレプレナーやエンジェル投資家になるサイクルが確立された先に、GAFAMの誕生がある。

:ストックオプションはスタートアップエコシステムを形成する観点から、非常に重要だと考えている。スタートアップに関心がない人も、身近にストックオプションで利益を得た人がいれば興味がわくと思う。スタートアップ産業の裾野を広げる意味でも、幅広い意見を取り入れながらストックオプション制度の改正を進めていきたい。

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