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日本代表はゲノム解析技術のbitBiome。人類の課題に取り組むスタートアップコンテスト XTC2023 日本予選

「Extreme Tech Challenge 2023(XTC)日本大会」レポート

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 2023年4月10日、グローバルでの課題に技術で取り組む起業家を発掘・支援する世界最大級のスタートアップコンテスト「Extreme Tech Challenge(XTC) 2023」の日本予選が新丸ビルコンファレンススクエアにて開催された。コンテストにはフィンテック、バイオテック、環境、スマートシティなどをテーマとしたスタートアップ10組が出場し、審査の結果、bitBiome株式会社が優勝、エレファンテック株式会社とAseel Technology Corporationが準優勝に選ばれた。

 XTCは人類のグローバル課題にテクノロジーで取り組む起業家を発掘・支援する世界最大級のピッチコンテスト。テーマとして農業・食糧、環境・エネルギー、新素材、教育、実現技術、バイオ技術、デジタルヘルスケア、フィンテック、交通、スマートシティの10カテゴリーが設けられており、毎年100カ国から3000社以上が参加。過去の7年のファイナリストは累計約5000億円の資金調達を実現、うち36%は女性起業家によるスタートアップとなっている。

 日本予選は2020年より開催しており、今回で4回目。決勝出場スタートアップは、パートナーVC&企業による事業・資金面の手厚いサポートとネットワーキングが受けられる。

 日本大会の審査員は、鎌田 富久氏(TomyK Ltd.代表 株式会社ACCESS共同創業者)、西尾 信彦氏(立命館大学 情報理工学部 教授)、白井 健宏氏(株式会社アイティーファーム ジェネラルパートナー)、馬 静前氏(Plug and Play Japan株式会社 Head of Ventures)の4名。審査基準として、革新性、市場性、インパクト、チームの4つの観点から審査が行われた。

独自のゲノム解析技術と世界最大のゲノムデータベースで
バイオものづくりを加速

 2023年の日本代表の優勝企業に選ばれたのは、bitBiome株式会社。

bitBiome株式会社 取締役 COO 鈴木 悠司氏(右)と審査員の鎌田 富久氏(左)

 bitBiomeは、早稲田大学発のバイオものづくりのスタートアップ。単一細胞レベルのゲノム解析技術により、8億のゲノム情報を格納した世界最大級のデータベースを利用。新たな酵素の発見などバイオものづくりを加速するサービスを展開している。

 サービスを構成するのは、既存の方法より30倍もの精度で微生物の遺伝子を解析できる独自技術「bit-MAP」(特許取得済み)。これを用いて構築した8億の遺伝子を収録するデータベース「bit-GEM」。そして、「bit-GEM」を使った世界最速の酵素探索・改変技術「bit-QED」の3つ。「bit-QED」による酵素探索はDeepMindが開発したGoogle AlphaFold2の500倍の速さで絞り込みが可能だという。

バイオものづくりを加速する3つのプロダクト「bit-MAP」「bit-GEM」「bit-QED」

 すでに「bit-MAP」を用いた解析や「bit-QED」の酵素探索サービスで多数の契約を獲得しており、今後は1件あたり数百万円~数千万円のプロダクトとして収益拡大を狙う。

 また2023年度は、感染症治療薬創成に関する共同研究を科研製薬株式会社と開始。共同研究契約を締結したほか、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基⾦事業に採択され、カーボンリサイクルでの貢献を進める。

独自の金属印刷技術でプリント基板製造にともなう環境汚染と
コストを大幅削減

 準優勝を獲得したのは、エレファンテック株式会社とAseel Technology Corporationの2社だ。

エレファンテック株式会社 代表取締役社長 清水 信哉氏(右)と審査員の西尾 信彦氏(左)

 エレファンテックは、電子回路基板に金属を印刷する、ナノメタル・インクジェット印刷技術を開発。従来のプリント基板製造では、基板全面に銅をメッキし、焼き付け、余分な銅の除去といった何段階もの工程が必要だが、同社の手法は、インクジェット印刷技術で金属インクで直接回路を印刷するだけ、と非常にシンプルだ。プリント基板製造をこの技術に置き換えることで、銅消費を70%減、CO2排出量75%減、水消費量95%減、水消費95%減、およびコストの大幅減を実現できる。

従来のプリント基板製造工程との比較

 すでに国内で量産化を進めており、EIZO株式会社のFlexScanディスプレーのスイッチや株式会社フクダの圧力センサーモジュールに採用されている。2023年度中に数百万個の海外出荷を開始予定だ。

アフガニスタンと世界の支援者をつなぐ
民芸品販売&支援物資流通プラットフォームを構築

 Aseel Technology Corporationは、米軍撤退後のアフガニスタンで人道支援を再開するプラットフォームを開発・運営している。アフガニスタンは、度重なる紛争や災害で多くの人々が支援を必要としているが、国からの組織的な支援がない状態が続いている。また、アフガニスタンを含む途上国の人々はスマートフォンやクレジットカードを持っていないため、ECへのアクセス手段がなく、海外市場と断絶している。

Aseel Technology Corporation創業者のNasrat Khalid氏(右)と審査員の白井 健宏氏(左)

 同社は、アフガニスタンの人々が海外のデジタル経済に参加するインフラとして、民芸品の販売を代行するEコマースプラットフォームを構築。Aseelを通じて世界中のバイヤーに商品を販売、決済や発送も行い、売り手に代金が支払われる。商品の未着や代金の未払いといったトラブルが起こらず、売り手側にも安全に取引ができる。

ECサイトを支援物資の流通ルートに活用

 さらにこのプラットフォームを用いて、お金や物資を逆向きに流すことで、人道支援ルートの構築を実現。非支援者側(売り手)は、家族やコミュニティに必要な物資、例えば、食料、防寒具、育児用品などを選ぶことができる。また支援者側(バイヤー)には、相手が支援物資を受け取った写真が届く仕組みだ。

 以降、ほか7組のファイナリストのピッチ内容を紹介する。

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