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カーボンニュートラルの実現へ 技術で貢献するスタートアップ5社

「第49回 NEDOピッチ(カーボンニュートラル ver.)」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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 2022年9月5日、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)事務局が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で開催するスタートアップ企業によるピッチイベント「第49回 NEDOピッチ(カーボンニュートラル ver.)」が開催された。

 品川区、大田区、川崎市、株式会社三井住友銀行との共催により、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組むスタートアップ企業6社の革新的な技術を紹介。また、あわせてENEOS株式会社の取り組みや経済産業省産業技術環境局のカーボンニュートラルの政策についても紹介する。

 開会の挨拶として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の久木田正次氏が登壇。ロシアのウクライナ侵攻や、少子高齢化、エネルギー問題など、多くの社会課題を解決する上でスタートアップへの期待が高まっていると解説した。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事 久木田 正次 氏

「政府は今まさにエネルギー環境問題への対応として、2050年までに二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルへの対策を始めたばかりです。そして2022年7月に岸田総理は『スタートアップ創出元年』を掲げ、5年間でスタートアップを10倍にするという話も出ています。さらには経済や安全保障、働き方改革、DXなどもあります。これらを共通的に解決できるのがテクノロジーです。これを実施する上でスタートアップへの期待はものすごく大きいと考えています」

 NEDOピッチは2015年からスタートし、これまでに244社のスタートアップが登壇、そのうち約20社は10億円を超える資本金の企業に成長しているという。

 さらに久木田氏は、「ここはスタートアップの成長の入り口だと考えている。スタートアップは技術を投資家に紹介して成長していく。そして、ここから大きく羽ばたくスタートアップが出てくることを期待している」として挨拶を締めた。

カーボンニュートラル領域における投資と協業

 続いてグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社の野本遼平氏が登壇し、カーボンニュートラル領域においてのVC(ベンチャーキャピタル)の投資やアライアンスがどうなっていくべきかについての説明があった。

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 プリンシパル 野本 遼平 氏

 野本氏はカーボンニュートラルに対して「インフローを絞り、アウトフローを加速する、バスタブ理論と同じ」だと解説。この2つの変数を動かすために様々な研究開発が進んでいると語る。

 投資家の資金は多くのスタートアップの中でも、特に深い技術を持ったスタートアップにお金が集まるべきだと考えているが、残念ながら日本においてはこの領域に投資が集まっていない状況だという。そこで野本氏は独立型のVC、投資家の考え方を解説。

「大事なのは当事者が誰か、受益者誰か特定できているか、具体的な課題が書かれていて、それが普遍的なものかどうかが、出発点になります。その上で課題やニーズに対して、どういった付加価値を提供できるのか、その結果、前後でどういった差分が生まれるのか、このあたりを投資家は重視します」

 その上で、簡単には真似されない、バリューを生むための持続可能な仕組みがあり、収益性があることが求められるという。また、カーボンニュートラルなどのグリーンテック関連の特殊性に付いても触れ、「過去のグリーンテックブームとの違いや今回は本物なのか、という部分に関して投資家の間でも議論になる」と語った。

 ただし、現在はハードウェア、素材、バイオなどの領域の先端技術が実用レベルに到達してきていることや、クラウドが一般的になるなど、技術的なインフラが整ったことに加えて、政府の掛け声などもあり、過去のグリーンテックブームとは変わってきていると考えているそうだ。

 投資状況に関しては米国においてはユニコーンといえる企業が50社近くまで増えている上、セグメントの多様化が進行、それらに伴い投資金額が増えている状況だ。それに対して日本も調達額は増加しているという。

「とはいえ、スタートアップだけで何かを成し遂げるのは難しいところがあるので、大企業としっかり組んで、継続的に収益を分け合うアライアンスを仕掛けていくことは重要だと思います」

 カーボンニュートラルの場合、技術提携はもちろん、販売面での協業が重要になる。大企業のブランドなどを借りた上で国と連携していくといった取り組みができると、スタートアップは成長しやすい。また、生産面では大企業の生産資源を借りることで、コストを抑えることなどができるという。

「グローバル展開を大前提として大きい市場を最初から見ていると資金も流入しやすい。スタートアップの皆さんには、日本だけでなくグローバルにどうやって展開していくのかを考えて、そのときに大企業の力を借りて事業をブーストするといった取り組みを進めると日本ももっとプレゼンスを発揮できるのではないかと考えています」

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