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十数万円が一瞬でゴミに!?

冗談ではなく目の前が真っ暗になる恐怖……ピンを曲げてしまったRyzen 9 5950Xの修復を試みる

2021年06月10日 13時00分更新

文● 宮里圭介 編集● ASCII

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いざ、動作確認へ!
ソケットに入るかどうかが最初のハードル

 横から見てもピンのズレがほとんどなくなったら、修正作業は終了だ。ソケットにそっと載せ、ピンが入っていくか確認しよう。

 新品のように素直に入っていかないことがほとんどなので、真っすぐだけでなく、少し傾けた状態で挿す、左右に軽く動かすといったことを試してみるのもアリだ。

 どうやっても入らない場合は、ピンの傾きを再度チェックすること。ここで焦って押し込もうとすると、せっかく戻したピンが再び曲がってしまう危険があるからだ。

素直に入った……と思いきや、よく見ると片側が浮いている状態だった。このままCPUクーラーをつけてしまうと、再びピンが曲がってしまう

更に修正し、入るようになったのがこの状態。多少引っかかりはあるものの、奥までしっかり入ってくれた

最終的なピンの状態。ここまで修正して、ようやく入るようになった。ピンの列がほとんど乱れていないのがわかるだろう

 ソケットに無理なく入ることが確認できたら、CPUクーラーを装着して最小限の構成で動作確認へ。無事に起動したら、CPUのピン曲がり修正は完了だ。

修復に失敗してピンが折れてしまった……
しかし、一縷の望みがないわけではない

 金属にはある程度の延性や展性があり、多少曲げたくらいでは折れたりしない。しかし、何度も曲げ伸ばしを繰り返した場合はいわゆる金属疲労が起こり、ついには折れてしまう。

 次の写真は、今回修正したCPUとは別のもので、Ryzen 9 5950Xより前に持ち込まれたもの。この時は曲がったピンを直そうと、何人かでいじくったそうだ。

 ペンの先や尖ったものでつつき、なんとか戻したという話だったのだが……。

実体顕微鏡で観察したときの写真。よく見ると、根元が曲がったままだった

 実体顕微鏡を使って観察したところ、ペンでつついたときについた汚れか、曲がったピンが黒く汚れていた。また、よく見るとピンが真っすぐになっているわけではなく、根元が曲がったまま先端だけが上を向いている状態となっていた。

 この角度からではわかりづらいが、もう少し斜めから見ると根元が怪しく浮いており、首の皮1枚で繋がっているような状態だった。そのためピンセットで押したところグラグラと動き、ポロっと取れてしまった。

 基本的に、ピンが折れてしまうとCPUは動かない。ただし、ピンによっては動くこともある。

 これは、電源やGNDなどに多くのピンが割かれていることによる。折れたピンが代替のきかない重要な信号ではなく、こういった複数あるピンの1つだった場合、動作する可能性があるわけだ。ピンが折れてしまった時でも、念のため、動作確認してみるというのは悪くないだろう。

 ただし、マザーボードやメモリーなど周辺のパーツを壊してしまうリスクもゼロではないので、それ相応の覚悟をした上での動作確認となる。

 また、意味なくピンが複数使われているわけではないため、たとえ動いたとしても、高負荷で落ちる、マザーボードによっては動かないなど、動作が不安定になる可能性は否定できない。運良く動いた場合はストレステストなどを実行し、安定動作するかしっかり確認しておきたい。

 ちなみに、CPUのピンが折れそうになっているときは、絶対にソケットに挿さないこと。最悪ソケット内でピンが折れ、抜けなくなってしまうからだ。こうなるとマザーボードまで交換しなくてはならなくなる。

曲がったピンの修正は自己責任で!

 今回、ピンの曲がりがかなり急だったこともあり、折れてしまわないか心配していたのだが、何とか最後までもってくれた。一応修正できたとはいえ、ピンの根元は弱っているはずなので、可能な限りCPUの着脱は控えた方が賢明だろう。

 ピンの修正は自己責任となるものの、諦めて買い替える前に試してみる価値はある。この記事が、そんなチャレンジの一助となってくれれば幸いだ。

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