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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第88回

手元資金は潤沢だ:

アップルは5G iPhone発売が遅れても焦らない

2020年04月03日 16時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura 編集● ASCII

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●アップルは持ちこたえられるのか

 さて、アップルは中国でのビジネスに深く関わっていることから、クルーズ船運行会社と金融系を除き、米国企業で最も早くから新型コロナウイルスの影響を受け、戦ってきた企業と言えます。

 2月の春節後の労働力をあてにしているのは中国の工場で製品を作るファブレス企業の例年の流れです。春節休みが1週間延長され、2月10日から始業したとアップルも伝えていましたが、それでも製造能力は戻りませんでした。

 アップルは2月17日に米国企業の先陣を切って利益警告を出し、2020年第2四半期のガイダンス未達を伝えました。売るものが作れない、売る場所が閉鎖される、需要がしぼむということを、中国で経験した結果でした。

 しかしその後、感染は中国にとどまらず、欧州、アジア太平洋地域、そして米国本土へ拡大しました。これらの地域では、Apple Storeを無期休業にして売る場所を閉鎖しました。ロックダウンによって需要もしぼんでいます。

 アップルにとって米国での売上が6割であることから、米国のロックダウンが長引くほど、そして失業する人が増えるほど非常に不利な経済環境に陥ることになります。

 一方アップルは手元資金の潤沢さも指摘されています。2019年12月31日時点の現金および現金同等物の残高は416億ドル。年間750億ドル規模の自社株買いをしてきました。

 そのため、経済の回復に先行して新製品を発売するといった活動が不可能なわけではないといえます。

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