IBMに続いてお届けする「業界に多大な影響を与えた現存メーカー」はHPことHewlett Packardである。正式にはHewlett-Packard Companyで、2015年にはHP Inc.とHPE(Hewlett Packard Enterprise)の2社に分裂してしまっているが、これは最後に補足することにする。
ちなみにIBMの次にインテルを予測していた方も多いと思うが、これは同業の福田昭氏が「福田昭のデバイス通信」の中で、インテルの歴史を1年ごとに振り返る(しかもどうかするとある1年が前後編などに分かれてるので、おそらくあと数年は終わらない)という連載を昨年末からスタートされているので、こちらにお任せすることにした。
余談だが、そのインテルの天敵(?)であるAMDについては、AMD HEROESに前編と後編として寄稿させていただいた。さすがに50年の歴史を連載2回にまとめるのは無理があって、かなり駆け足になってしまっているが、よろしければご覧いただきたい。
スタンフォード大の学生2人が起業
のちにシリコンバレー誕生の地となる
ということで今回からはIBMに負けず劣らず、コンピューター業界に大きな影響力を持つHPを取り上げたい。HPの創業は1939年1月1日のことである。
創業者はWilliam R. Hewlett氏とDavid Packard氏。2人はスタンフォード大でFrederick Emmons Terman教授のRadio Engineering Programのコースを取った同級生であった。

左がPackard氏、中央がHewlett氏。Packard氏が握手しているのは、かつての恩師であるTerman教授。これは1952年に、二人がスタンフォード大のElectronics Research Laboratoryに寄付した際のスナップだそうだ
画像の出典は、HPのVirtual museum
ただ2人がスタンフォード大を卒業した1934年という時期は、1929年から始まった世界恐慌の最悪の時期は抜けていたものの、まだ景気回復には遠い時期であり、なかなか就職先は見つからなかった。
そうした状況を鑑みてか、Terman教授は2人に「就職先が見つからないなら、自分達で会社を興したら良い」と起業を勧めたそうである。ちなみにこのTerman教授も、シリコンバレーの父として知られている人物である。
幸いにもPackard氏の方はGE(General Electric)に職を得て、ニューヨークに移る。一方でHewlett氏の方はマサチューセッツ工科大学で修士課程を経て、その後に再びスタンフォード大に戻ってTerman教授の下で学ぶことになり、ここで抵抗可変式の発振器を研究している。1938年、Packard氏は研究奨学金を得て再びスタンフォード大に戻ってくることになり、ここで2人は再会した。

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