米国時間の9月12日に米アップルが新しいiPhone3機種を発表したことを受け、今年もiPhone商戦が大きく盛り上がる機運を見せている。その新iPhoneの発表に合わせ、「iPhoneギガトクキャンペーン」を打ち出たのがKDDI(au)だ。auのiPhone商戦に向けた取り組みについて、コンシューマ事業本部 コンシューマ事業企画本部 副本部長の多田一国氏と、コンシューマ事業企画本部 コンシューママーケティング1部長の松田浩路氏に話を聞いた。
Netflixパックは想定以上の反響
──新iPhone商戦に向けたキャンペーンの狙いを教えて下さい。
多田氏 従来、携帯電話業界では端末の価格を重視してきましたが、格安スマホの台頭などもあってランニングコストを重視する傾向が強まっています。そこで弊社でも2017年7月に「auピタットプラン」「auフラットプラン」など、端末の割引がない代わりに通信料金が安くなるプランを導入しました。
iPhoneユーザーは大容量の「auフラットプラン」の利用比率が高いんです。そうしたことから今回は端末値引きではなく、大容量プランの通信料金を割り引くキャンペーンを入れた方がいい、という判断をしました。すべての割引が適用されることで1年間、「auフラットプラン20」では月額1520円、「auフラットプラン25 Netflixパック」では月額2020円の割引が受けられます。また、新型iPhoneだけでなく、iPhoneX、iPhone 8/8Plusも対象です。
また「auフラットプラン25 Netflixパック」が想定以上に反響があったことから、1ヵ月間、通信量を5GB増量する「Netflixプラン データ増量キャンペーン」も実施します。たとえば韓国ではスマートフォンでの動画視聴が積極的で、日本より通信トラフィックが多いのですが、クオリティーの高いNetflixをバンドルしたプランの提供で、日本でもスマートフォンで動画を視聴する習慣が根付くといいなと思っています。
──iPhoneユーザーに「auフラットプラン25 Netflixパック」はどの程度響くと見ていますか?
多田氏 新しいiPhoneではディスプレー全面で映像を見る視聴スタイルを提案していましたし、相性はいいと思っています。Netflixのような有料のオンデマンドサービスは日本でなかなか伸びていませんが、セットにすることで、別々に契約が必要な状態と比べると高い加入率で推移すると思っています。
──通信料ではなくiPhone自体を安くして欲しいというニーズも多いと思います。行政の影響で端末の大幅な値引きが難しくなる中、こうした人達の声にどう応えるんでしょうか?
多田氏 (auフラットプランのような)分離プランは、ハイエンド端末を買うハードルが高くなってしまうのが最大の課題ですが、端末を頻繁に買い替える人とそうでない人との公平性を保つためにも、単純に値引きする訳にはいきません。やはり長く利用する代わりに購入しやすくする「アップグレードプログラムEX」の仕組みが、その解決策だと考えています。
アップグレードプログラムEXに関しては、残債免除に「プログラムへの再加入が必要」という条件について公正取引委員会から指摘を受けたことから、そこは真摯に対応して条件を撤廃することにしています。できるだけ早く対応したいのですが、システムの改修が必要なため、いつからとは明言できません。ただ、新iPhoneを購入した人が、プログラムに再加入する必要がない形にするように進めています。
データ容量は20GBで十分という人が多数派
──ソフトバンクが、複数のSNSや動画サービスの通信量をカウントしない「ウルトラギガモンスター+」を発表し、消費者の注目がそちらに移ってしまった印象も受けます。
多田氏 確かに印象的な面はあると思いますが、弊社の利用傾向では、動画を視聴しても20GBで十分という感覚です。実際、auフラットプランも20GBの選択率が9割を超えており、ほとんどの人がそれで足りている状況です。現在のプランを値引くことで、多くのニーズに応えられるのではないでしょうか。
また、弊社のキャンペーンは、家族契約がなくても、Netflixが付いて1年間は月額3980円という料金を実現しています。そうした点も大きなポイントといえるでしょう。
──「auフラットプラン25 Netflixパック」は発表当初から、25GBの容量では足りないとの意見が多く上がっていました。実際のところはどうなのでしょうか。
多田氏 NetflixはSD品質の「ベーシックプラン」をベースにしており、100時間くらい視聴できることを基準としています。より上位のプランを選ぶ人は容量の影響を受ける可能性はあるかもしれませんが、極端に不足するということはないと考えています。容量が足りないという声が増えれば大容量プランを検討したいと思っていますが、まだそこまでではないというのが実情です。
もちろん弊社としては利用が増えることを期待しています。そうでなければ5Gの必要性も問われてしまいますからね。インフラ面での対策も推し進めつつ、データ通信の利用拡大を推し進めていきたいです。
──(KDDI代表取締役社長の)高橋氏はネットワーク中立性の問題もあり導入に慎重な姿勢を示していますが、ソフトバンクのようにカウントフリーの導入に踏み切る考えはないのでしょうか。
多田氏 ネットワーク中立性については議論を進めている所なので、野放図にやっていいというものではないという理解です。技術面での検証も必要なことからリスクもあり、現状はこれらの推移を注視しているところです。
iPhoneを長く使う人に向けてサポートも充実
──料金だけでなく、サポートに関する取り組みも強化しているようです。
松田氏 iPhone商戦は料金施策が中心になりますが、これだけiPhoneユーザーが増えると、日常的に利用している人の不満を改善する取り組みも必要です。中でも8月28日から実施している「iCloudキャンペーン」は機種変更時にデータを移行する際の端末バックアップに関する課題を解決するものになります。
必ずしもすべての人がパソコンを持っている訳ではありません。バックアップにiCloudを使うという方法もあるものの、容量が少ない。そこで2ヵ月間、200GBのiCloudストレージを無料で提供するキャンペーンを展開し、安心して機種変更できる形を取っています。期間はあくまで2ヵ月ですが、iCloudは利用すると価値が分かってくるだけに、ぜひ使ってほしいですね。
──新iPhoneの発表に合わせて、9月14日からは「端末紛失サポート with AppleCare Services」を提供しています。
松田氏 こちらはApple公式のアフターサービスを、4年間受けられるようにするものです。iPhoneユーザーのすそ野が広がってきており、早く機種変更する人だけでなく、長く使う人も増えています。そこで劣化したバッテリーを交換したり、故障や紛失時に新しい端末を届けたりするなど、保証の部分をブラッシュアップすべくアフターサービス期間を2年から4年に拡張したサービスを提供するに至りました。
特に端末紛失時の保証はパワーアップしています。従来は顧客自身が端末を購入して、後から料金を補填する形をとっていましたが、今回のサービスではアップルストアが近くになくても、最短で当日中に端末を届けるという仕組みを用意しています。
──アップル製品はサポートが独自でキャリアショップでの対応が難しく、アップルストアがない地方のユーザーには不便な部分があります。どのようにして解消に取り組んでいますか?
松田氏 現在では修理の予約受付などをアップルと連携して案内する仕組みを取っていますし、直営店では修理も受け付けているほか、一部店舗では修理の取次もしています。日本では米国よりアップルストアが少ないことから、アップルとうまく合意して仕組み作りをすることによって、auショップに行っても困りごとが解決できる、補完関係を構築しています。
インフラ面でも新技術に対応
テザリング料金はどうなる?
──以前はiPhone発売に合わせて各社がアピールしていたネットワークに関して、新iPhoneで新しい動きはありますか?
松田氏 LTEが広いエリアで利用できるようになった一方、これからNetflixなどの利用が拡大するための準備を整える必要があります。新iPhoneに関して言うと、5つの周波数帯を束ねて通信速度を向上させる「5CC CA」と、4つのアンテナを用いて高速化する「4×4 MIMO」に、初めて対応しています。
これらの活用によって、通信速度は理論値で最大818.5Mbpsを実現しますが、それだけでなく、負荷分散などによるキャパシティーの向上にも効いてきます。弊社はグループで「UQ WiMAX2+」を展開するUQコミュニケーションズで、4×4 MIMOをいち早く手掛けてきた実績があることから、それを生かして既に全国の95%のエリアで、幅広く4×4 MIMOが利用できる環境を整えています。
──インフラ面で、新しいiPhoneに備えた準備はしているのでしょうか?
松田氏 アップルはグローバルの市場に向けて部品を選定しているため、弊社向けに端末を供給するメーカーとは異なる部分があります。弊社はインフラは長期に渡る計画で進めており、そうしたデバイスがいつ投入されても対応ができるよう、準備をしています。
──サービス、インフラ面で通信需要の拡大に向け取り組む一方、今年「テザリングオプション」の無料キャンペーンを終了し、ユーザーの批判を集めました。
多田氏 その件は十分承知しています。20GBのプランを導入した当初、従来の段階制プランと異なり、実質的に無制限プランに近い感覚があったことからコスト面でのリスクがあったことと、通信パターンがつかみきれないということもあり、有料オプションという形を取りました。
ですが、通信の中身が料金に関係してくるのか? というユーザーの感情は理解できますし、理解を得られにくい形ではあったと捉えています。5Gの導入後になるかと思いますが、今後納得感のある料金にしていきたいと考えています。
──ちなみに、iPhoneに向け充実した施策を打つことが、Androidユーザーからの不満につながることにはならないのでしょうか?
多田氏 Androidはスマートフォンデビューする人にミドル・ローエンドのモデルが選ばれる傾向が強いのに加え、利用者も「auピタットプラン」の比率が高くデータ通信量も少ないので、そのベースは押さえられているのかなと思います。
松田氏 一方でiPhoneはハイエンドが主体で、データ通信量を大量に使うユーザーが多い傾向にあることから、新しく楽しい価値を提供する取り組みを進めています。我々は分離プランや4×4 MIMOの導入など積極的にゲームチェンジをやってきていますし、アップルとの近い関係を生かしたサポートの充実も進めています。そうした歴史を積み重ね、充実を図っていきたいと考えています。
──ありがとうございました。
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