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フィリピン産コーヒーの「復活」を仕掛ける日本人の思い

2018年07月12日 06時00分更新

文● ジャイアント佐藤(ダイヤモンド・オンライン

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かつては世界有数のコーヒー産地だったのに、病気や害虫被害が原因で生産量が激減したフィリピン。そんなフィリピン産コーヒー豆を復活させるべく奔走する日本人の取り組みをご紹介する。

歴史が古いコーヒー産地なのに...
生産量が激減したままのフィリピン

フィリピンのコーヒー農家
真剣にコーヒー豆を選別する農家の人たち。選別の精度がコーヒーの美味しさを大きく左右する

 日本人にはあまり馴染みがないかもしれないフィリピン産のコーヒー。しかし、フィリピンのコーヒー産地としての歴史は実は古い。1740年にはスペインのコーヒー移入により生産が開始されている。

 200年ほど前は世界でも有数のコーヒー生産国であったが、19世紀の終わりにコーヒー錆病が蔓延し、害虫被害により生産量が激減してしまった。

 現在でもかつてほどではないが、小規模に生産は続けている。ただし、年間生産量2万7000トンに対し、輸出はわずか600トン。そして38万7000トンは輸入に頼っている。インスタントコーヒーに関しては輸入量世界一だ。

 今回は、フィリピン南部にあるミンダナオ島の街ダバオに住む日本人が、フィリピンのコーヒー農家の発展とフィリピン産コーヒーの美味しさを日本の消費者に知ってもらうことに取り組み、現地のコーヒーを日本に向けて輸出しようと挑戦していることに注目したい。

 フィリピン共和国ミンダナオ島ダバオ地区の企業として2018年6月、東京ビッグサイトで行われた「CAFERES JAPAN 2018」に出展したピスタシア・ミンダナオ・コーヒー・エクスポート, Inc.の代表取締役・太田勝久さんにお話を伺った。

途上国の貧困を
何とかしたいという思い

 太田さんは愛知県出身の47歳。幼いころから飢餓問題に関心があり、途上国の貧困を何とかしたいと思っていた。「飢餓から人を救うには食糧を増やさなければ。食糧といえば農業だ」という動機で名古屋大学農学部に進学する。大学時代にミンダナオ島のバナナ農園を視察したのがフィリピンとの縁の始まりだ。

プライベートでは格闘技が大好きな太田さん(左)と、営業を担当する取締役の松田和也さん(右)

 貧困について学び続けているうちに太田さんは、地球には200億人を養えるだけの食糧が実は存在しているということを知った。「ただ作物をつくるだけではダメだ」と太田さんは強く感じたという。貧困に対するアプローチを変えた太田さんは、フィリピン大学大学院に進学してコミュニティ開発を学ぶ。そこで「住民が自分たちで立ち向かうべき問題を意識して、一人では解決できないことを組織的に解決していく」参加型アプローチという考え方を学んだ。

 フィリピンでコンサルタント会社に現地採用され、後にNGOやコンサルタント会社で開発業務に従事していた太田さんのもとに2014年、フィリピンの勉強会からコーヒーの資料が送られてきた。太田さんはフィリピンがコーヒー生産国なのに輸入量が圧倒的に多いことに驚いた。

ただ袋に入れても商品にならない
豆の選別が大切

「これは何とかしなきゃ」――太田さんは早速、フィリピン産のコーヒーを袋に入れて日本に持って来て、知り合いの元コーヒー製造販売業者の人に豆を選別してもらい飲んでみた。

「美味い!これはいける!」

商品のコーヒー豆。日本にミンダナオの産物を扱うアンテナショップ兼倉庫を持ち、実店舗およびオンラインで販売することも太田さんの目標の1つだ

 可能性を確信した太田さんはその後、東京都江東区にあるスペシャリティコーヒーショップ「アライズコーヒーロースターズ」に袋に入ったコーヒー豆を持ち込み店主に感想を聞いてみた。しかし、店主は焙煎後の豆を見て言ったという。「これはダメだね。欠点豆、未熟豆が多すぎる。全部一括りに袋に入れるのではなく、しっかり豆を選別しないと日本で売るのは難しいよ」

 豆の選別の仕方を教えてもらった太田さんはフィリピンに帰国して、農家の人たちに徹底してコーヒー豆の選別の方法を教えた。

 少しずつ選別の精度が上がって来た時に追い風が吹く。前述の元コーヒー製造販売業者の知人をフィリピンに呼び、さらなる豆の選別をトレーニングした時にダメ元で応募した「第2回フィリピンコーヒー会議」(2016年11月にバギオ市で開催)のコンテストで優勝してしまったのだ。

日本市場のニーズに合った
作物づくりを支援したい

 太田さんはいよいよ本格的に輸出に向けて動き出し、ダバオにある「ピスタシア, Inc.」に就職をした。同社は日本語教育や人材事業、IT事業を行っていた企業だが、新規事業として輸出事業を立ち上げようとしていたからだ。

 2017年2月に輸出業者としての申請を始め、今年3月に認可が下りた。6月には、日本に向けてコーヒー600kg、カカオ600kgの輸出を開始した。会社もピスタシア, Inc.のグループ会社として輸出を専門に扱うピスタシア・ミンダナオ・コーヒー・エクスポート, Inc.を自ら立ち上げた。

 今回出展をした「Tokyo Café Show 2018」はフィリピン貿易産業省ダバオ地方事務所が主導して、ダバオにあるカカオ、ココナッツ、コーヒーを生産する出展企業11社を選定した。その一つとして太田さんのピスタシア・ミンダナオ・コーヒー・エクスポート, Inc.は出展したのだ。

「カカオ、ココナッツ、コーヒーはフィリピン・ミンダナオ島が最も強みとしている生産物です。今回の展示会では多くの商談を進めてしっかりと日本の皆さんに美味しさを広めていきたい」(フィリピン貿易産業省ダバオ地方事務所で地域ディレクターを務めるマリア・ベレンダ・Q.アンビさん)

 最後に太田さんに今後のビジョンについて訊いてみた。

「日本に向けて輸出をして、日本からのフィードバックをもらうことで今後フィリピン・ミンダナオの農家の人たちが、ただ作物をつくるだけでなく、市場のニーズに応えて作物を生産できるビジネスマインドを持った農家になっていく。そこをサポートする存在でいたい」

(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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