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中小企業が狙われる!公的機関をかたる業者の悪質セールス手口

2018年07月11日 06時00分更新

文● 角南丈[清談社](ダイヤモンド・オンライン

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会社に毎日のようにかかってくる営業電話。その中でも特に迷惑なのがNTTや東京電力、省庁の名をかたった公的(準公的)機関風なセールストークだ。しかも、中には詐欺会社だけではなく一般企業までもがこうした紛らわしい電話をしてくることもあるわけだが、そこに法的問題はないのか。フジテレビ系「バイキング」でおなじみの「弁護士法人・響」の徳原聖雨弁護士に聞いた。(清談社 角南丈)

NTTや東電の名をかたる電話
正体は電話機やブレーカーのリース

NTTや東電の名をかたる営業電話にご注意
明確に社名を名乗らずNTTや東京電力などを装う「かたり営業」。中小零細企業の、特に高齢経営者が被害に遭うケースが多いという

――プルルル。建設会社のオフィスに1本の電話が鳴る。

窓口担当者 「お電話ありがとうございます。××建設でございます」

男 「私、“電力会社”の検査をしている電気保安会社の○○と申します。電気のご契約者である代表者さまはいらっしゃいますか?」

窓口担当者 「ハイ…、失礼ですがもう一度御社名を伺ってもよろしいでしょうか」

男 「ですから、電気保安会社です!代表者さまに電力の検査の“説明”をさせていただきたいのですが」

窓口担当者 「か、かしこまりました。少々お待ちいただけますでしょうか」

 この電話、実はブレーカーのリースを組ませようとする業者の“営業”である。

 いわゆる、かたり営業というもので、社名を名乗らないまま準公的機関を装い、さも義務であるかのように社長や役員など決裁権を持つ管理者に電話をつながせて、商材を売り込もうとする営業スタイルである。

 徳原弁護士によれば、こういった事例はほかにも多数存在するという。

「電力会社のほかにも、NTTの名をかたって電話機や複合機のリースを組ませ、さらには抱きかかえでネット関連のソフトまで導入させようとしてくる企業もあります。実際に被害に遭われて、私のところに相談に来る方も多いですね」

 そして信じがたいことに、明らかな違法企業だけではなく、上場しているような一般企業までもが、こういったかたり営業をしてくることもあるのだ。

公的機関の名に引っかかり
義務だと感じる被害者

徳原聖雨/弁護士。東京・大阪・神戸・福岡に拠点を持つ『弁護士法人・響』所属。税理士資格も持つ。消費者委員会、精神保健委員会、子どもの権利委員会、法教育委員会所属。労働・交通事故・離婚・相続・借金問題など民事案件を主に扱う傍ら、グループ企業の顧問弁護士として企業法務も行っている。テレビや雑誌、新聞などメディア出演も多数。フジテレビ「バイキング」にもレギュラー出演中。 http://hibiki-law.or.jp/ 

「彼らのセールストークをよくよく聞いてみると、決してNTTや東京電力の“委託”とは名乗っていません。ただ、こうしたセールストークを聞いた人にしてみれば、いろいろと長い説明をされる中で“NTT”や“東電”の名前だけが記憶に残り、なんとなく“義務なのかな…”と感じて話を進めてしまうケースも多いようです」(徳原弁護士、以下同)

 かたり業者の多くは、アポイント時には準公的機関をにおわせるものの、その後訪問する段階になって、改めて社名を名乗る傾向にある。ただし、その時も“公的なコールセンターからの依頼を受けて、我々、民間会社がやってきました”というようなスタンスを取るのだという。

 そして対面営業の段階に入ると、彼らは“お得感”で攻めてくる。

「NTTのかたり営業の例でいえば、これまで複合機などのリース料に月々1万円かかっていたとします。それが8000円に下がると聞けばお得な気がしますが、これには数字のマジックがあります。例えば元々リースを組んでいた場合、残り3年で完済予定だったのに、新たに5年の再リースを組まされてしまうことで、トータルで見ると割高になってしまう危険性もあるのです」

 かたり営業を行う理由は非常にシンプルで、単純に効率良く稼げるからだ。本来、企業が商材を販売しようとすれば、まずは資料を送り、アポを取り、担当者と商談を重ねたりと、時間がかかる。しかし、そこに“公的感”をまとわせることで、一発目の電話で社長にたどり着くことができるという寸法だ。

狙われやすいのは
中小零細企業の高齢経営者

 徳原弁護士によれば、これらのかたり営業を発端として裁判が起きた場合、購入者にどんな利益、不利益があったか、詐欺、錯誤(「勘違い」のこと。錯誤が認められた場合、契約は原則無効となる)に該当するか、が争点になりやすいという。

「購入者がどのような不利益を負っているのか、客観的に見れば不利益といえないのではないか、を考えなくてはいけません。また、例えば『費用が安くなると聞いたのに全然ならなかった、NTTと聞いて義務だと思ったから契約した』という場合には、詐欺や錯誤が認められ、購入者が勝つ可能性が高いかもしれません。しかし、裁判所も、企業はある程度の営業トークはするものという認識がありますから、企業の営業活動の内容次第では、一概にかたり業者側が負けるというわけではないのです」

 こういったかたり業者が狙うのは、主に中小零細企業、つまりは法人であるが、これにも理由がある。

「個人として契約した場合はクーリングオフ(一定期間内なら契約解除できるという法制度)が認められることが多いのですが、法人事業のための契約などは原則対象外です。ただし、あまりに大きい企業が相手ですと、優秀な弁護士さんをそろえられて裁判で負けてしまうリスクもあるため、あえて中小零細企業を狙うこともあります。中でも高齢の代表者が被害に遭うケースが多いようにも思います」

 こうした悪質企業は裁判沙汰が日常茶飯事なためか、ネット上の評判にも敏感だ。リスクマネジメントの一環として、ネットに書かれている自社の悪評を探して回り、個人ブログに対してでさえ「名誉毀損にあたる可能性が高いため削除せよ」というメッセージや内容証明を送りつける企業も多いという。そのため、ネット上でも悪評を見つけにくくなっているのだ。

電話は折り返すべし
来訪時は録音を心がけよ

「もしネットでその企業について調べたいのであれば、例えばGoogle検索の場合、最初の2~3ページを見るだけではなく、7~8ページまでチェックするようにしましょう。その企業が意図的に悪評記事の表示優先順位を下げるように細工している可能性がありますし、削除要請に応じないサイトの情報が出てくるかもしれませんからね。あとは国民生活センターに行って、その企業のクレーム件数などを取り寄せるのも1つの手です」

 では、実際に会社にかたり営業の電話がかかってきた場合、本物と偽物をどう見分ければいいのか。

「基本的に東電やNTT、省庁から直接電話がかかってくることなど、そうそうありません。もし相手が大きな組織や会社の名前を出してきたら『こちらからかけ直します』と伝えることが大切です。それが本当にNTTの関連会社からの電話なら、NTT本体にかけてみても何らかの説明があるはずです」

 かたり業者にだまされないためには、普段から業者や営業マンなど訪問者に対して、録音をする癖をつけることも1つの対策だ。

「結局、裁判では『言った言わない』の押し問答になるケースも多いので、どこかの業者さんが訪問してきた際には記録に残すことが大切です。もし、すでに契約書にサインしてしまい、解約したいと後悔している人は、今すぐに国民生活センターや信頼できる弁護士など第三者に相談することをお勧めします」

 この“虎の威を借る狐”たちが、早々に取り締まられることを願うばかりだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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