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エンジニア同士によるディープなインフラトークも披露

Webサービスの先達はてなが語る、戦い続けるためのインフラ設計

2018年06月18日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

提供: さくらインターネット

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電力を意識しないで済むのが専用サーバのメリット

 続いて、さくらインターネット、ALiNKインターネット、はてなの3社によるトークセッションに移る。さくらからはモデレーターとしてエバンジェリストの横田真俊氏、専用サーバチームの井上昌之氏、前半で登壇したさくらインターネット 研究所の大久保修一氏とALiNKインターネット CTOの松本修士氏、渡辺氏より現場に近いはてなのWebオペレーションエンジニア 古川雅大氏が登壇した。

ALiNKの松本氏、はてなの古川氏、さくらの井上氏と大久保氏

 まずはなぜさくらのサービスを選んだのか?という質問。2016年入社のはてなの古川氏は、「当時はXenのハイパーバイザーで仮想化していく途中だったので、そのタイミングでデータセンターでサーバーをきちんと運用していこうという流れになり、選定の結果としてさくらのハウジングを選んだ……という話を社内のグループウェアで読みました(笑)」とコメント。現在はハウジングや専用サーバ、AWSやGCPなどのパブリッククラウドをさまざまな案件やシステムにあわせて使い分けているという。

 古川氏は、サービスを使った感想を聞かれると、「ハウジングのサーバーをMackerelの前身みたいなやつで監視しているのですが、項目に「電流」や「電源」とかあって、なるほどラック単位で電源オーバーしないときちんと見ないといけないんだなと初めて意識した。でも、専用サーバは物理サーバーですが、それらを意識しなくて済んでいる」と語る。また、PXEブートや自動インストールの仕組みを別途で用意しなければならないが、さくらの専用サーバでサポートされているOSであれば、これらも機能として提供されているという。さらにローカルルータでハウジング、さくらの専用サーバ、仮想サーバーをつなぐことで、意識することなく利用できる点もメリットだった。

はてな Webオペレーションエンジニア 古川雅大氏

 2007年当時、はてなと直接やりとりしていたという大久保氏は、「はてなさんの拠点にお邪魔して、弊社のデータセンターとL2 VPNで接続させてもらったのを懐かしく思い出した。ミニハイブリッド接続みたいなものをはてなさん用に作っていたようなイメージです」と振り返る。

 続いて2001年からさくらのサービスを使っている松本氏は、「複数のサービスを使っていると当然、営業同士であいみつを出し合います。その点、さくらはWebサイトで値段が明記されていて、しかもお安い。安くて、速くて、うまい(笑)」と語る。また、東日本大震災の時にも、ハウジングしていた機器の保全が担保されていたこと、負荷でサーバーが落ちても、ネットワークが使えていたということが、かなり松本氏の中でエポックメイキングな出来事だった。「気象情報を扱うメディアとしては、これ以外の選択肢はないと思っている」(松本氏)。

ALiNKインターネット CTO 松本修士氏

 さくらの専用サーバのメリットについては、松本氏は「ハウジングだと、物理的にハイスペックなサーバーは置けるのですが、全体での電力は必ず意識しなければならない。でも、さくらの専用サーバは電力を意識しないで済む」と語る。これについて古川氏は、「書き込み重視のサービスのためにioMemoryのような高速ストレージを導入すると、結局電力消費が大きくてラックが埋まらない。でも、ラック単位の契約になるので、集約率が上がらないとコストが無駄になります。その点でも、電力やサーバーの位置を検討しなくても済むさくらの専用サーバはありがたい」と語る。

 これに対して提供側のさくらの井上氏は、「さくらの専用サーバはサービス全体で電力のキャパシティを考えているので、詰まっているラックもあるし、空いているラックもあります。でも、全体で見ることで、サーバー1台あたりのコストは適性にできる」とコメントする。

サービスの満足度は高いが、もちろん要望もある

 続いて、他社サービスとの使い分けと今後の計画について聞いた。

 はてなでは、はてなブログをAWS、はてなブックマークなどは、ハウジングと専用サーバで運用しており、すでにマルチクラウドな利用方法となっている。古川氏は、「さくらとAWSとの接続も、われわれからお願いした意見が通ったというもの。とりあえず言ってみるもんだなと思いました(笑)」と語る。AWSではやはり多くの互換APIを利用できるAmazon S3がやはり人気で、アクセスログのバックアップに使っているとのこと。現在はハウジングをさくらの専用サーバに移行させている途中で、数多くのサービスの要件にあわせてクラウドと物理サーバーを使い分けるていくという。

 一方、ALiNKインターネットは、天気図データの保存にAzure BLOB Storageを使っており、物理的に離れた地域へのレプリケーションなども一部利用しているという。一時期、CDNとしてAkamaiを使っていたが、さくらのウェブアクセラレーターの方がコストパフォーマンスが高かったために切り替えた。今後はヘビーな画像処理のため、高火力コンピューティングを活用できないか検討しているという。

 最後、横田氏がさくらへの要望を聞いたところ、古川氏は「ハウジングからさくらの専用サーバへの移行、クラウドと物理サーバーの使い分けという要望は、かなり聞いてもらった」と満足そう。一方でさくらのクラウドに関してはやや不満もあるようで、「もう少しロードバランサーの性能を上げて欲しい」といった要望も出た。松本氏は、「専用サーバの運用監視で人手が足りておらず、今のところ外部に委託している状態。なので、障害の通知だけでなく、復旧までパッケージになっているサービスが欲しい」とリクエストした。

 巨大サービスの後ろでどのようなインフラが動いているか、当事者から聞くことができた貴重なイベント。ユーザーとベンダーが直接会話し、サービスを作り上げている感も高く、実際セッションの後に行なわれた懇親会でもディープなインフラトークをあちこちで聞くことができた。

(提供:さくらインターネット)

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