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デジタルトランスフォーメーションを実現できる組織はここが違う

エンジニアの野心と意思から生まれるリクルートテクノロジーズの現場力

2018年02月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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多くの事業をWebサービス化し、10年以上も前に「デジタルトランスフォーメーション」を済ませてしまったリクルート。AIやIoTなど新しいITの時代を迎えてますます輝きを増すエンジニアと組織の理想像を最新刊「自走するIT組織~リクルートのエンジニアはこう動く」(日経BP刊)からひもといていく。

すべての会社がIT企業になる時代

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が、数多くのIT系イベントで聞かれるようになったのはこの3年くらいになる。「デジタルによる変革」というキーワードだけ見ると、紙のプロセスを置き換える単なる「ペーパーレスの推進」のように聞こえるが、実際はクラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャル、IoT、AIなど最新のITを用いて、ビジネスのやり方自体を大きく変えて行くという潮流になる。

 バズワードだったデジタルトランスフォーメーションが大きなインパクトを持ってわれわれの胸に響くようになってきたのは、グローバルスタートアップが既存のリアルビジネスを猛烈な勢いで置き換えつつあるからだ。もとよりITの世界では、AmazonやGoogle、FacebookなどのWebジャイアンツが既存の産業を大きく変えてきたが、この10年はプレイヤーも多彩になり、そのスピードはますます速まっている。

 配車アプリを手がけるUberのグローバルでの取扱高は2兆円を超えており、世界192ヶ国で事業を展開する民泊最大手のAirBNBの評価額は、2016年時点ですでに3兆円以上にのぼる。共有を前提としたシェアリングエコノミーを基軸に据えた彼らは、ブルドーザーのように伝統的な産業を破壊し(デジタルディスラプト)、新しい秩序を立ち上げつつある。

 彼らに共通しているのは、最新のITを圧倒的なスピードでビジネスに取り込んでいる点だ。特にスモールスタートでサービスを開発できるクラウドは、リソースの少ないスタートアップを強力な戦闘集団に変えた。IoTなどから集めた大量のデータをAIで分析し、ユーザーに対する最適解をサービスとして提供している。歴史と実績を持った多くの会社は、従来のスピード感とまったく違うこうした新しいプレイヤーと戦っていかなければならないのだ。

すでにデジタルトランスフォーメーションしてしまったリクルートという会社

 こうしたデジタルトランスフォーメーションを10年以上前から進めてきたのが、国内最大級のWebサービスを抱えるリクルートだ。

 私のような40代にとって、リクルートはコンビニエンスストアや駅の売店でお仕事系の媒体を展開しているメディア企業だ。しかし、今の20代・30代からすると、就職、結婚、子育て、衣食住など、あらゆるライフイベントに向けたWebサービスの会社に見えるはずだ。この見え方の違いには、インターネットに大きく舵を切った同社の戦略転換がある。

 本格的なインターネットの普及が見えてきた2000年、リクルートは会社としてWebサービスに注力するという戦略にシフト。それに伴い、従来協力会社や社外に任せきりにしていたシステム開発を、社内で主導的に行なう内製化へ突き進んだ。結果として2012年の組織再編で生まれたのが、リクルートグループのIT関連施策を一手に担うリクルートテクノロジーズだ。

 そんなエンジニア集団リクルートテクノロジーズの強みを余すことなく描いたのが、「自走するIT組織~リクルートのエンジニアはこう動く」である。変化の中で学んだエンジニアや組織論を前著で書いた米谷修 CTOが今回描いているのは、同社の原動力である自ら考え、行動するエンジニアの成長とそれを活かせる組織の作り方だ。

しかしそのリクルート自身の変化の中でも、最も驚くべき変化の1つは、私の予測をはるかに超えるスピードで若手エンジニアが次々と成長を遂げたことでした。<中略> ですから二作目の著書で、こうした彼ら、彼女らを主人公にしたのは必然だったといえます。

 エンジニアの能力を最大化するリクルートテクノロジーズとはどんな組織なのか? 以下、「自走するIT組織」からひもといていこうと思う。

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エンジニアが「テクノロジーファースト」を貫ける組織

 最初に感じたのは、エンジニアが「テクノロジーファースト」を貫けるという点だ。エンジニア向けメディアを運営するにあたって、筆者が読者となるエンジニアとよく話しているのが、「なぜ今の会社に入ったのか?」というテーマだ。給料や職場、制度、働きやすさ、企業理念への共感、いっしょに働くメンバーなど、職場選びにはさまざまな条件があるが、多くのエンジニアが重視するのは「自ら使いたい技術を使えるか」だ。エンジニアは好きなことにとことんチャレンジできる環境が大好きなのだ。

 その点、リクルートテクノロジーズは技術的にチャレンジできる風土を持っているようだ。「自走するIT組織」で印象的だったのは、事業部門ではなく、ITエンジニアの想いを元にプロジェクトを立ち上げる「エンジニアの想いを起点にギークの専門スキルを結集」というパートだ。

「自身の専門スキルという“武器”で、どれだけ難易度の高い課題を解決できるのか」――。腕に覚えのある“ギーク”と称されるエンジニアの場合、この問題がモチベーションの源泉である傾向が強い。そんな「ギークなエンジニア」が結集すると、どんな成果を生み出すのだろうか。

 本書にも書いてあるが、通常の事業会社の場合、新サービスを作りたいとか、こんな課題を解決したいといったビジネスニーズからスタートし、これをIT部門が実装していく場合が多く、エンジニアの想いは必ずしも重視されない。しかし、エンジニアがイニシアティブをもってサービスを見直すと、「検索結果がイケてない」とか、「こんな機能が実装できるはず」といった観点になる。目的を達成するための局所解に陥らず、テクノロジーを知るエンジニアがより広い観点でサービスを開発できるわけだ。

実業から得られた真のビッグデータ

 AIやIoTなど多くの最新テクノロジーが「エネルギー」としているのがデータである。デジタルトランスフォーメーションを標榜する多くの企業は、自社の抱えるデータを分析することで顧客に対して新たな価値を創出する必要がある。裏を返せば、いくらテクノロジーの知見に長けていても、スキルを持ち合わせていても、リアルなデータで試行錯誤できなければ、エンジニアの実績にはつながらない。

 その点、リクルートテクノロジーズはリクルートのWebサービスから蓄積された膨大なデータを保有している。しかも、単に量が多いだけでなく、質、種類から考えても、国内で最高峰の「リアルビッグデータ」である。若手データサイティストI君の活躍を描いた「研究開発にも存在する、ビジネスを実装する意識」の中ではこういった記載がある。

リクルートには、大量の画像データが存在する。これらは主に各種Webサイトにおいて商材のイメージを伝えるためだけに存在しており、解析の対象には事欠かない。ただ、ビジネス価値が生まれない分析をしても仕方ない。そこでI君が考えたのが、画像データを元にしたレコメンドができないか、ということである。

 もちろん、データがあるだけで、すぐにサービスが作れるというわけではない。しかし、試行錯誤のためのデータが豊富にある環境は、エンジニアやデータサイエンティストにとっても魅力的なのではないだろうか。

試行錯誤の結果をビジネスに適用できる

 エンジニアが試行錯誤の結果、生まれた成果物を実際のビジネスに投入できるのも素晴らしい。情報を必要とするユーザーと情報を提供するマッチングする原稿の精度を高めるべく、「自然言語処理を用いた原稿自動校閲システム」を構築したメンバーはインタビューパートでこう語る。

将来は何となく、大学で学んだ専門知識を生かして、データを扱う仕事に就かなければと思っていたのですが、「どうせならビジネスになるべく近いところで、ユーザーに直接価値を提供できるような仕事に挑戦したい」とも考えていました。その点、数多くの大規模サービスを運営しているリクルートは格好の舞台だと思ったのです。

 事業部門とエンジニアがつねに仲違いをしているという話は、正直枚挙にいとまがないが、リクルートテクノロジーズはエンジニアがビジネスを尊重する文化がある。単なる研究開発ではなく、ビジネスで活かせるテクノロジーを安定した環境で試行錯誤できる職場。そして、ビジネスに貢献したい地に足の付いたエンジニアたちの集まり。本書を読む限り、リクルートテクノロジーズはそんなエンジニアの居場所を作り上げているようだ。

作っているのはWebサービスだけではない

 今はWebサービス事業者がリアルビジネスへの足がかりを求め始めている時代だ。ECサイトとリアル店舗を連動させたオムニチャネル施策や、モノに通信機能を載せたIoTによる新しいソリューションも次々と登場している。本書を読んで驚いたのは、Webサービス事業を支えるリクルートテクノロジーズがハードウェア開発も手がけているという点だ。

 「既成概念を取っ払い、IoTデバイスを開発」のパートは、米谷氏が管轄する研究開発期間「ATL(Advanced Technology Lab」で出てきた「IoT関連でなにかやってみよう」という研究テーマに対して、実際にキーレスエントリーシステム(スマートロック)を開発してしまったという話だ。

「リクルートでIoT」と聞くと、デバイスから収集したデータを使ったマーケティングサービスのイメージが強いかもしれない。しかし、このキーレスエントリーシステムを担当するATLの研究員S君の発想は、こうした固定概念に縛られることなく、デバイスの開発を選択した。

 リクルートとしては異例のこうしたハードウェア研究開発がスタートしたのは、エンジニアの興味とモチベーションを重視する文化だから。そして、「多くの人に使ってもらいたい」という思いを実現するため、「リクルート=Webサービス」という常識を破壊してしまったのだ。今後、新しいITを構成する要素として重視されるIoT、ロボット、VR/ARなど、さまざまなハードウェアまで組織として取り組んでいるところが先見の明だと思う。

チャレンジを許容するリクルートテクノロジーズの強さ

 最後に指摘したいのが、マネジメントがチャレンジするエンジニアを見ているという点だ。CTOがつねに現場を見ていなければ、今回紹介している「自走する組織」のような書籍はそもそも実現しない。スタートアップよりもはるかに巨大な組織なのにもかかわらず、エンジニアのことをここまでマネジメントがきちんと見ているというのが、私にとっては驚きだ。

 「自走するIT組織」から見えるのは、ビジネスサイドとテクノロジーサイドが両輪で回っている日本型デジタルトランスフォーメーションの1つの形だ。もちろん、デジタルトランスフォーメーションの過程においては、組織同士の軋轢、エンジニア同士の衝突、終わりの見えない試行錯誤などさまざまな障壁がある。そして、チャレンジは自由なだけでなく、大きな責任もついて回るはずだ。

 しかし、それらを乗り越え、若手エンジニアが自らの野心と意思を持ってビジネスを刷新していく様は、テクノロジーメディアの記者である私から見ても気持ちよいモノだ。チャレンジを掲げるエンジニアは確実にベンチマークしておきたい会社である。

(提供:リクルートテクノロジーズ)

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