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含蓄だらけのMANABIYAのパネルディスカッションを詳細レポート

クックパッド、VOYAGE、メルカリが語るエンジニアにとって理想の制度

2018年05月30日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●中井勘介

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3月24・25日に秋葉原のアーツ千代田で開催された「MANABIYA -teratail Developer Days-」(主催:レバレジース)では、クックパッド、VOYAGE GROUP、メルカリの3人が登壇し、「エンジニアにとって理想の制度とはなにか?」を語るパネルディスカッションが行なわれた。アスキー編集部のオオタニのモデレートの元、会場の質問もとりながら、80分に渡って行なわれた討論の模様を詳しくお伝えする。

「エンジニアにとって理想の制度とはなにか?」のテーマに会場からもさまざまな質問が飛び交う

クックパッド、VOYAGE、メルカリの制度の向き合い方

 「エンジニアにとって理想の制度とはなにか?」80分におよぶパネルの趣旨について説明したモデレーターのアスキー編集部のオオタニは、まず参加者の属性を挙手でリサーチ。半分はエンジニア、3割がマネージャー、残り経営・ビジネス側という内訳だった。また、sli.doを用いて、会場からの質問も受け付け、イベントの随所で答えていくとアピールした。

 続いて「そもそも制度とはなにか?」についておさらいする。「キャリアをどのように作っていくか?」「どのように成長していくか?」といった生存戦略に対し、オオタニが定義する「企業内制度」は、まさに全社的に適用される「社内制度」と、エンジニアチーム内で運用されている「チーム内制度」の大きく2つに分けられると自説を展開。「そもそもチーム制度と社内制度は分けてよいのかということまで含めて、議論していきたい」と説明した。

 その後、オオタニは記事とともに改めてパネラーを紹介する。1人目はクックパッドCTOの成田一生氏。3月に開催された福岡のさくらインターネットのイベントでエンジニア組織について語っていた成田氏は、エンジニアの成長をサポートする制度や文化について以下のように語る。

「現状、うちは手厚い教育や研修制度を用意していない。僕自身がどうやって成長してきたかを考えてくると、会社になにかしてもらったというより、邪魔しないとか、調整してくれたというのが大きかった。そういう環境の方が、伸びたい人にとってよいのではないかと思っている」(成田氏)

クックパッドCTO 成田一生氏

 実際、記事では「谷底に突き落とすこともある」という表現もあった。「谷にまで連れて行って落とすんじゃなくて、崖の端っこでちょっと押してあげるイメージ(笑)。『海外でがんばってみたいけど、今の仕事も忙しいんだよなー(チラッ)』みたいなことを言っているエンジニアを東南アジアとかに送り込んじゃう。一押しあればチャレンジできるという人を押してあげる」(成田氏)という。

2人目のパネラーはVOYAGE GROUP CTOの小賀昌法氏。インターネット広告事業などを幅広く手がけるVOYAGE GROUPでは、被評価者は半年の仕事の中から1つを評価者の前で発表し、ディスカッションしながら評価を進める技術評価会を7年に渡って定着させてきた。

「われわれの新規事業の部署は若手を中心に構成されることがある。若手にチャンスを与えたいということで、組織作りとしてはそれで正しいのですが、エンジニアとして正しく評価できる人材がいないこともあります。そのため、私がCTOになってから、他部署のエンジニアによって、技術力を客観的に評価できる制度を導入しました」(小賀氏)

 3人目はグローバル展開も強化しているメルカリでEngineering Operations Teamマネージャーを務める梶原 賢祐氏。業界内でも制度面の評価が高いメルカリについては、内定期間中の昇級や海外出張費用の全額負担まで盛り込んだ新卒新入社員向け人事制度「Mergrads(メルグラッズ)」のプレスリリースを紹介した。

「新入社員が一律同じ給料っておかしいよねという課題感があった。学生でも、キャリアを積んだ人を、同じように評価していこうというのが今のメルカリの流れ」(梶原氏)

エンジニアだけのフレックス制度は受け入れられなかった

 イントロだけでも十分な含蓄があったが、まずはフレックス制度を掘り下げる。3社のうち、メルカリとクックパッドは勤務時間が柔軟なフレックス制度を導入している。

 成田氏が所属するクックパッドは、エンジニアの開発効率を考えた制度設計になっている。当初はフレックス制度もエンジニアのみが対象だったが、逆にエンジニア以外の部門の人から反発があったという。「今は全社員フレックス制なので、外回りの多い営業も、子育て中のママさんも、同じようにフレックス制の恩恵を受けられている」(成田氏)。特定の部署や人を対象とした制度は受け入れられないというのは、制度を考える上の重要なポイントだと思われる。

 一方で、クックパッドはコアタイムを廃止した。「グローバル展開するにあたって、そもそもタイムゾーンがあわなくなっているし、働き方も役割もそれぞれ異なるので、どの時間に仕事すればよいのか、チームごとに全然違う。だから会社としてはコアタイムを設けず、チームに任せている」(成田氏)。現場にあわせて柔軟に制度を運用しているわけだ。

 勤務時間は参加者にとっても気になるようで、さっそく「エンジニア=朝弱い」という前提で、「朝早く来いという勢力とどう戦ってますか?」という質問が寄せられた。これに対して成田氏は、「必ずトレードオフが存在するので、答えはない」と持論を展開する。

「マネジメントの観点だと、全員同じ時間に来て、同じ時間に帰ったほうがいいに決まっている。でも、サービスラウンチ前はメンバー全員でフェイスツーフェイスで打ち合わせた方がいいし、コーディングのフェーズでは各人がパフォーマンスの上がる時間で作業を進めた方がよいかもしれない。やっぱり現場で柔軟に対応してねとしか言えない」(成田氏)。

 続いてコメントした小賀氏は、「朝、来なかったときになにが課題だっけ?ということを営業なり、エンジニアなりが出し合って、解決を進めた方がいい」と建設的な意見。出勤時間に限らず、行動様式が違うエンジニアと事業開発などビジネス系の人は、とかく対立構造になることが多いが、課題解消は同じ論法だという。

「ビジネス側の人の目的はサービスが成長することなので、そこが共有できれば、エンジニアの行動を理解してもよいのではないか。とにかく感情論にならない議論に落とし込むことが重要」(小賀氏)

 後半の質疑応答でも出てきた話だが、やはり制度とは会社のもの。エンジニア向けの制度はない方がよいというのが、ここでの結論だ。3人は以下のようにコメントする。

「こだわりのキーボードやモニターを経費で買えるよという制度があっても、確かに使うのはほとんどエンジニア。それでも全社員に適用できる制度にした方がいい」(小賀氏)

「前職のスタートアップでは、エンジニアのための組織を作ろうと思っていたけれど、やっていくうちになんだか違うなと感じ始めた。メルカリに入ってすごいと思ったのは、ソフトウェアエンジニアだけでなく、全社員に対して働きやすい環境を作ろうとがんばっていたところ」(梶原氏)

「エンジニアとそれ以外って分けるのって理不尽で、職種って全部つながっているんですよ。エンジニアはデザイナーやユーザーサポートと連携する必要があるし、営業ともつながっている。ユーザーに届ける価値を最大化するためには、フロントだけ厚遇しても仕方なくて、全メンバーの生産性を最大化することを考えなければならないと思う」(成田氏)

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