日本市場での大きな成長、オープンソース戦略の強み、ビッグデータ活用の波
データドリブンな企業に求められる統合基盤、Talend CEOに聞く
2018年01月16日 07時00分更新
「自社の持つデータを戦略的に活用していくうえでは、やはりきちんとデータを統合していかなければならない。そう考える顧客が増えており、それがTalendに対するニーズの大きな伸びにつながっている」(西村氏)
2006年、業界初のオープンソースETLツールを提供する企業としてスタートしたTalend(タレンド)。その後、同社ツールはESB/データ品質/MDM/リアルタイムシステム連携/セルフサービス(データプレパレーション)といった豊富な機能も包含する、統合的な企業向けデータプラットフォームへと進化している。昨年(2017年)末には、テレビ東京がTalendの商用版製品を導入したことも発表された。
冒頭のコメントどおり、日本国内のビジネスも成長軌道に乗り始めたTalend。今回は来日した米本社 CEOのマイク・トゥーケン氏と、日本法人 代表取締役社長の西村哲也氏に、Talendが提供する統合プラットフォームの特徴や現在の顧客ニーズ、オープンソース製品戦略、さらに今後の方向性などを聞いた。
「ビッグデータの世界の『縁の下の力持ち』を担う」Talend
Talendは2006年にフランスで設立され、現在は米国に本社を構えるソフトウェア企業だ。グローバルに17の営業拠点を持ち、1500社を超える商用版製品の顧客を持つ。日本法人は2010年に設立されている。
Talendの製品ポートフォリオは、Apacheライセンス下で無償利用できるオープンソース版(OSS版)の「Talend Open Studio」と、有償サブスクリプションの商用版「Talend Big Data Platform」「Talend Data Management Platform」などで構成される。OSS版は世界で累計250万件以上ダウンロードされており、コミッターも25万人以上の規模だという。
西村氏は「Talendは、ビッグデータの世界で『縁の下の力持ち』の部分をサポートしている」と説明する。オンプレミスかクラウドかを問わず、幅広い業務アプリケーション、データベース/DWH、Hadoop/Spark、データレイクを相互につなぎ、ビジネスユーザーも含めてデータのセルフサービス利用を可能にする。およそ700種類の豊富なコネクタを標準で備え、幅広いアプリケーションやデータソースに対応しているため、コネクタを別途購入または開発する必要がない点も強みだ。
また、単一のGUIツールを用いてノンコーディングで開発することができ、そこからJavaネイティブコードが生成されるため高速なデータ処理が期待できる。「サブスクリプションは開発者数ベースなので、データ容量やサーバー台数が増えても費用は変わらない。いま顧客環境ではデータが急増しているため、ここもTalendが選ばれる理由のひとつだ」(西村氏)。
ユーザーにもTalendにもメリットのあるオープンソース戦略
「Talendでは製品のコア機能をOSS化する“Open Core”戦略を取っている。そしてその戦略は、顧客にもTalendにも大きなメリットをもたらしている」とトゥーケン氏は説明する。OSS版は毎月数万件のダウンロードがある人気プロダクトだ。
「OSS版は開発者が必要とする機能をすべて備えている。一方で有償版には、企業のIT部門が運用するうえで求める機能、組織内のコラボレーションツールやスケジュール/モニタリング機能が追加されている」(トゥーケン氏)
簡単に言えば、開発/テスト環境や小規模な環境ならばOSS版でも十分だが、大規模な本番運用をするならば商用版のほうがより便利かつ高信頼な環境を構築できる、ということだ。もちろん、OSS版ユーザーがコミュニティに参加し、積極的にフィードバックすることで、製品品質も向上していく。
こうしたOSS戦略は、実際に商用版の売上にも良い影響をもたらしているという。
「ユーザーはコストをかけず、無期限にOSS版を利用できる。つまり、商用版を購入する前にじっくりと検討ができ、購入したあとも、どんな機能があってどう使うかを迷うことなくすぐに使える。購入前にかなり『リスク』が低減されているわけだ」(トゥーケン氏)
西村氏も、こうしたOSS戦略の強みは日本国内でも感じられると語る。
「OSS版ユーザーに告知して、商用版の機能を中心に説明するセミナーを毎月開催している。セミナーに参加した顧客が、わずか数日後に購入したというケースもあった。これだけ短期間で購入が決まるのは、やはり長い期間OSS版を使ってきて『何をやりたいのか』をしっかり理解されているからだ」(西村氏)
西村氏は、日本国内にも数多くのOSS版ユーザーがおり、こうした潜在顧客に対して商用版のメリットを伝えていく活動が大切だと考えていると語る。またトゥーケン氏は、Talend製品のターゲットユーザーは開発者だけでなく、エンジニア、データアナリスト、データスチュワードなどにも及んでおり、「すべての従業員がデータを扱えるようになってほしい」と考えていると述べた。
データ活用の波に乗り日本法人も成長軌道へ、「5領域にフォーカス」
日本法人は2010年の設立から長らく伸び悩んでいたが、2017年の売上は前年比で4倍に急成長したという。その背景として、国内企業におけるビッグデータへの取り組みの本格化があると、西村氏は指摘する。
「今年(2017年)出展したAWS Summitでは、ブースでお話しした顧客企業の8割がすでにクラウドを利用していた。その中で『オンプレミスだけでなく、Amazon S3やEMR、RedShiftなども使ってさらに効率的にデータ活用を行いたいが、パフォーマンスが上がらない』という悩みが多く聞かれた。自社の持つデータを戦略的に活用していくうえでは、やはりきちんとデータ統合をしていかなければならない。そう考える顧客が増えており、それがTalendに対するニーズの大きな伸びにつながっている」(西村氏)
今後の企業ITインフラの動向、データ処理基盤のあり方を考えると、マルチクラウド対応も必須の要件になるだろう。Talendは現在のところ、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)に対応している。
Talendの今後の方向性について、トゥーケン氏は5つの領域へのフォーカスを継続していくと説明した。
「クラウド、ビッグデータ、リアルタイム処理、セルフサービス、そして機械学習という5つだ。まさにこの5つが、顧客が課題を抱えており、解決したいと考えている領域だからだ。各領域の市場規模はまだまだ小さいが、成長は速い。ここでリーダーの座を獲得し、市場全体のリーダーになることを目指したい」(トゥーケン氏)
また、システムインテグレーションを行う販売パートナーとの連携もさらに強化していくと語った。データ活用に関して顧客が抱える課題をよく理解しており、エンドトゥエンドのソリューションを提供できるのはそうしたSIパートナーだからだ。
同様に、西村氏もパートナー強化が今後の取り組みのひとつだと語った。特に、アジア圏を中心とした顧客のグローバル展開をサポートできるパートナーを育てていくことが課題だと述べた。
“データはデジタルビジネスをドライブする『石油』”だと言われるようになった時代。トゥーケン氏は、データ活用によって市場のゲームチェンジを図ったGEやシーメンスなどの事例を挙げながら、業界/企業規模を問わず、これから多くの企業が同じ道のりをたどらざるを得ないだろうと語った。