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ANAのミャンマー進出が2度目の頓挫、アジア戦略にどう影響?

2017年11月21日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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日本はミャンマーに対して主に設備インフラの支援をしてきたが、ANAは航空人材の育成支援で同国との関係を強化する

ANAホールディングスは今秋、ミャンマーでの航空会社立ち上げを断念した。アジアの競合と伍して戦うため、新興国リスクに振り回されながらも、チャンスを貪欲につかもうと悪戦苦闘している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「当初のもくろみよりも時間がかかり過ぎている。やめたくない思いはあるが、決断も必要だ」(片野坂真哉・ANAホールディングス社長)

 10月末、ANAはミャンマーで国際線専門の航空会社を立ち上げる計画を断念した。2016年3月に現地の大手財閥グループと合弁でアジアン・ブルーを設立。18年中の就航を目指し準備を進めていた。

 ところが「政権が変わり、計画の先行きが見通せなくなった」(ANA関係者)。同国では昨年春、歴史的な政権交代が行われたものの、政治や経済の改革が期待されたほど進んでいないことも指摘される。そうした影響もあってか、「就航の許認可の見通しが立たず、今回の手組みは終わりにせざるを得なかった」(同)。こうして合弁会社はひっそりと清算されるに至った。

 実はこれ、ANAにとっては2度目の頓挫である。13年夏にはミャンマーの航空会社に2500万ドルを出資し、同様に航空会社を立ち上げると発表した。しかし両社間で資本参加に係る交渉が難航。翌年、ANAは出資を取りやめ、計画は破談となった。

 それでも2度目のトライをしたのは、ミャンマーが「ラストフロンティア」だからだ。

 アジア各国の航空市場は伸び盛りである一方、多数のプレーヤーがひしめき合い、競争が激化している。その点、ミャンマーならANAが主導権を握れるチャンスが残っているのだ。

 ミャンマーの国際線乗客数は直近5年間で倍増し、400万人に拡大。それに対して現地資本の航空会社は、数こそ多いものの、どこも小粒で経営は芳しくない。市場の成長を取り込んだのはタイやインドネシア、マレーシアの外資系大手ばかりで、地元の航空会社は競り負けている。

 ANAはここに目を付けた。外資系としてではなく、自らがミャンマー発の国際線キャリアーになることで、有望市場をリードする戦略なのだ。

 ミャンマーとの結び付きは深く、1997年に関西国際空港からヤンゴンに直行便を就航。その後この便は運休するも、ANAは現地支店の営業を継続し、今では成田国際空港から直行便を毎日飛ばす。同国の航空人材育成も積極的に支援し、グランドハンドリングスタッフ30人弱を日本で技能実習生として指導している。

 アジアの需要を捉え、勝ち残るには、日本を拠点にしていても限界がある。ローカルを拠点にしたコスト競争力が必要不可欠だ。それに合わせてANAの優れた運航ノウハウやサービス品質を移植できれば、「最強のエアライン」になれると踏んだわけだ。

 こうした背景から、2度の頓挫を経てもなお、同国での航空会社立ち上げを「諦めたわけではない」(同)。新たなパートナーが見つかれば「3度目の正直」に挑む構えだ。

勢い増す中国勢
傘下LCCの中距離参入が課題

 アジア市場の陣取り合戦で残された時間は少なそうだ。スピードが増しているのだ。例えば、カンボジアでは来年、新たに5社の航空会社が立ち上がる。そのうち3社は中国資本だ。

 もちろん、ANAも指をくわえて見ているわけではなく、昨年秋、ベトナム航空に約120億円(株式割合で8.8%)を出資し、コードシェア(共同運航便)やマイルで提携。ベトナム航空は長年、日本航空と提携関係にあったから、ANAが“略奪”したと周囲を驚かせた。

 提携後1年たった今秋からはさらにシナジーを出そうと、ベトナム~カンボジア便にもコードシェアを拡大した。今後は人事交流を深め、コスト改善などオペレーション改革にも取り組む。

 もう一つ、アジア戦略の有力な打ち手が、傘下のバニラ・エアとピーチ・アビエーション、二つのLCC(ローコストキャリアー)の活用だ。すでに2社は台湾や韓国に飛ばしているが、ANAは東南アジアのビーチリゾートや世界遺産の街に、LCCを使って新規就航できないか探っている。

 しかしこれにはクリアすべき課題が山積みだ。LCCは単一機材で短距離輸送に特化することでコストを抑え、利益を生み出すビジネスモデル。飛行距離は4時間半圏内の鉄則がある。日本から東南アジアに飛ぶとなればこの鉄則から外れ、成功するかは未知数だ。

 それでも、「あれこれ考えている間にも、早くしないと外資LCCに市場を押さえられてしまう。中国がLCCを積極的に認可するようになったらアジアの勢力図は大きな影響を受ける」(片野坂社長)との考えから、次の一歩を急ぐ。

 焦るようなANAのアジア戦略は吉と出るのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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