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タクシーが「乗り放題」導入へ、事業者の苦境を救えるか

2017年09月25日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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タクシー業界は厳しい経営状況に加えて、運転手の長時間労働・低賃金・高齢化も大きな課題となっている Photo:123RF

 タクシーに、鉄道の定期券のような、定額で乗り放題になる運賃体系が新たに導入されそうだ。国土交通省と複数のタクシー事業者で、来年度から実証実験をスタートし、再来年度に本格導入する見込みなのだ。

 利用者と時間帯、エリアを限定して乗り放題にし、従来の距離や時間に応じて加算される運賃よりも割安な運賃を設定する。

 タクシー業界の旅客輸送量は過去20年で4割も減るなど、電車やバスと比べて「独り負け」の状況だ。一方で、主に子育て世帯や高齢者からは、子供の学校や塾の送迎、通院や買い物などの生活の足として「もっと手軽に利用できたらいいのに」という声は多い。

 乗り放題にすることで、「タクシーは高い」「幾ら掛かるか分からない」といった利用者の心理的ハードルを下げて、タクシー需要を喚起するのが狙いだ。

 同様に、需要を掘り起こす取り組みとして、今年1月からは東京都内で初乗り運賃が値下げされた。従来は初乗り2キロメートル730円だったのを、初乗り1052メートル410円に、運賃改定されたのだ。

 短距離で気軽に使ってもらう「ちょい乗り」を狙った策だが、その効果は上々で、導入後2カ月間の初乗り利用数は、昨年同時期と比べて36%も増えた。

 他にも、8月からは事前確定運賃制の実証実験がスタート。スマートフォンの専用アプリを通して配車を依頼すると、ルートと運賃を確定してから乗車できる仕組みで、「渋滞で待たされたり、運転手に余計な回り道をされたりして運賃が高くなるかもしれない」といった不安をなくすのが目的だ。

 この他、今冬からは「ライドシェア」、いわゆる「相乗り」制度の実証実験も始まる見込みだ。

 さまざまな取り組みが始まる一方で、定額乗り放題に対して、「商売上がったりだよ」(タクシー運転手)と反発する声もある。

 それもそのはず。多くのタクシー運転手の給料は歩合制のため、定額乗り放題が導入されると、例えば深夜帰宅のサラリーマンなど「上客」を取りこぼし、給料が下がる可能性があるからだ。

 国交省もそうした事情を考慮し、「事業者や労働者の減収につながらない仕組みにする」と言う。

初乗り値下げで増収効果

 実は、初乗り運賃値下げに関しては、近距離では確かに値下げになったものの、6.5キロメートル以上の中長距離ではむしろ値上げになっており、利用数増加も相まって、運送収入全体は約3%増えている。

 あるタクシー会社幹部は「業界全体の地盤沈下を食い止めるには、新しいサービスをどんどん出して、収入を増やす他ない」と危機感をあらわにする。利用数減以外にも、運転手の高齢化が大きな課題で、ジリ貧の中小事業者も多い。業界全体の底上げのためにも、利用者と事業者、双方にメリットのある新サービス導入に、熱い視線が注がれている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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