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パイロット不足「2030年問題」が10年前倒しで顕在化する理由

2017年08月23日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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パイロット不足問題が顕在化したことで、産学官の新しい取り組みも始まっている Photo by Ryosuke Shimizu

 航空業界でパイロットが不足する「2030年問題」は、「2020年問題」に前倒しされた。今そこにある危機となったのだ。

 16年8月、国土交通省は不足に対応するため、パイロットを養成する航空大学校の18年度からの入学者を現在の約1.5倍となる108人程度に増やすと発表した。

 もともと、航空業界内では「2030年問題」が危惧されていた。原因は、LCCの台頭、観光客数の増加、航空機の小型化や中型化などにより、世界中でパイロット需要が飛躍的に増していることだ。

 国内では、パイロットの高齢化も一因だ。国土交通省によれば、国内のパイロットの年齢構成は40代後半に偏っている。彼らが大量に退職するのが30年なのだ。

 パイロットの養成は民間航空会社、航空大学校に任されてきた。近年、そこに私立大学が加わった。ANAホールディングスが、06年に東海大学と産学連携し、国内で初のパイロット養成コースを開設。10年以降、ANA全体で80人以上の卒業生を、自社養成の採用とは別枠で採用してきた。

 現在の体制ではパイロット養成は年間で300人ほどが限界だが、30年には400人規模の新規パイロットの採用が必要になる。

「割愛」という“裏技”もある

 そんな状況に追い打ちをかけるように、不足の度合いが急激に高まっている。「中国系の航空会社が3000万~4000万円の報酬を提示し引き抜きにかかっている」という話が業界から聞こえる。さらに、政府は20年までの外国人観光客数目標を年間4000万人に設定しているため、不足の度合いはさらに高まるだろう。

 事態がより深刻なのは、LCCだ。大手からLCCへの転職組は年齢が高い傾向にあり、パイロット不足が早く顕在化すると予測されている。過去にはパイロットが足りず、大量欠航に追い込まれた国内LCCもある。

 パイロットは機長になるまで約10年かかる。確保するには長期的な視点が必要なのに、時間的猶予が一気になくなってしまったのだ。

 実は、自衛隊の操縦士を民間航空会社で活用する「割愛」という“裏技”もある。現状では制限があるため年間10人程度にとどまる。

 諸外国の主要な航空会社では、軍などの公的セクターがパイロットの半数の人材供給源となることもあるため、航空業界では解決策として期待する声がある。ただ、航空関係者によれば、割愛の拡大は、国土交通省、防衛省、財務省など複数の省にまたがる問題となるため、事態がなかなか進まないという。

 そもそも、民間航空会社のパイロット採用人数は業績により変動するため、不安定になりがちだ。

 事態を抜本的に解決するには、省庁の枠組みを超えた、国を挙げての取り組みが必要だろう。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 森川幹人)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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