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「WAC720」のアンサンブルモードを活用、改修費用を抑えて全館でWi-Fi接続可能に

サッカー合宿所の“ミンママ”、ネットギアでゲストWi-Fiを改修する

2017年06月05日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「いつでも先端を行きたい、何事も他人に遅れたくない。わたしたちの商売は、何かに取り組むのは早ければ早いほうがいい。そうすればお客様もついてくれるから」。学生たちから“ミンママ”の愛称で親しまれるミンションやまざきの山崎早苗さんは、そう熱く語る。

ミンションやまざきの“ミンママ”こと山崎早苗さん、そして常連客であるフォースネット 事業開発部 部長の平栗大輔さん

 ここは茨城県神栖市波崎(はさき)。茨城県の最南東端に位置する神栖市は、隣接する鹿嶋市、潮来市、鉾田市、行方市とともに、Jリーグ鹿島アントラーズのホームタウンだ。その中でも波崎地区は、1990年代前半から民間の旅館やホテルによって多くのサッカーグラウンドが造成されてきた。夏は涼しく冬は暖かな気候ということもあり、現在では年間を通じて多くの大会や合宿が行われる“アマチュアサッカーの聖地”となっている。

 ミンションやまざきも、そんな波崎地区の一角にある。もともと、現オーナーである山崎芳一さん(愛称は“ミンパパ”)の両親がここで民宿を営んでいた。1989年、山崎さん夫妻(芳一さんと早苗さん)が経営を引き継ぐタイミングで、スポーツのできる芝生グラウンドを設け、名前も「ミンションやまざき」と改めた。

ミンションやまざきの本館(星の館)

 「ちょうど鹿島アントラーズが発足したこともあって、わたしたちもスポーツ合宿に力を入れることにしました。『ミンション』という名前は“民宿”と“ペンション”をくっつけた造語。短い名前のほうが覚えやすいと思って名付けたら、皆さんからは『かわいい名前』だと言っていただけました」(山崎さん)

 最初は1棟だけでスタートしたミンションやまざきも、現在では11棟/90部屋に350名が宿泊できる規模の合宿所に成長した。敷地内には皆が食卓を囲める食堂やミーティングのできる広間、野外バーベキュー場、大小8カ所あるお風呂、ランドリールームなど、大人数のチームが生活する合宿所ならではの施設も揃う。

 ミンションやまざきのいちばんの自慢は、いつも丁寧に手入れをしている8面の芝生グラウンドだ。8面(天然芝7面+人工芝1面)が一カ所に集中しているため利便性が良く、合宿で訪れたサッカー、野球、ラクロス、アメフト、ラグビーなどのチームがここで汗を流す。

ミンションやまざきの自慢、よく手入れされた8面の芝生グラウンド

 ミンションやまざきのハイシーズンは、学生が夏休みや春休みの合宿で訪れる7~9月や2~4月、そして、波崎地域挙げての大イベントとなる「波崎ユースカップ」の開催される12月だという。

 ユースカップには、全国の高校サッカー部からおよそ4000人が集い、リーグ戦を行う。1校で複数チームがエントリーできるため、ふだんの公式戦には出場できない選手たちも、ここ波崎ではグラウンドで活躍する機会が得られる。「全員が試合に出られる、それがいいところ」(山崎さん)。スポーツに打ち込む若者たちを長年見守ってきた“ミンママ”の視線は温かい。

 「スポーツを通じて、就学前の子どもから、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人まで、こんなに素晴らしい人たちが集まる場所はない。とても幸せな仕事をしているなと、いつも実感しています」(山崎さん)

広間に貼ってあった“ミンママ”からの注意書き。合宿で集まる学生たちを厳しく見守るのも大切な役目だ

全館でゲストWi-Fiを提供する工事をしたはずが……

 そんな山崎さんは、冒頭の言葉にもあるとおり進取の気性を持つ人でもある。たとえば宿泊客に対するインターネットの無料開放も、この地域ではどこよりも早く取り組んできたという。

 「こんなに若い人が来てるんですよ。だから、どこにも負けないものを先に、どこよりも早くやりたいと思って」(山崎さん)

 初めは2000年ごろ、有線LANでインターネット接続されたデスクトップPCをロビーに設置した。合宿所という場所柄、娯楽よりも、大学生の就職活動によく使われたそうだ。やがてロビーのPCは3台まで増えたが、現在は利用者も減ったという。

 「ほら、今はみんなコレ(スマートフォンのこと)を持ってるからね」(山崎さん)

 宿泊者用のゲストWi-Fiサービスも、比較的早くから取り組んできた。当初は事務所用のWi-Fi電波が届く本館(星の館)ロビーでのみ使えたが、ニーズも高まってきたことから、11棟あるミンションやまざき全体で使えるようにすることにした。2015年、ある地元業者に工事を依頼し、工事は夏前に完了した。

 これで、ミンションやまざきのゲストWi-Fiは全棟どこからでも利用できるようになった――はずだった。

ミンションやまざきの建物は、敷地内に全部で11棟ある。食堂や広間、岩風呂や野外バーベキュー場なども

 2015年12月、ミンションやまざきの宿泊客として平栗大輔さんが訪れる。平栗さんは、東京のネットワークインテグレーターであるフォースネットの社員だが、それ以前に、ミンションやまざきに20年間ほど通い続けている「常連客」である。

 「そもそもは、母校である東京高校のサッカー部でコーチを始めたのがきっかけです。サッカー部が校外合宿をするようになって以来、20年間ほどずっとお世話になっているのがミンションさんです」(平栗さん)

 合宿のほかに遠征試合などもあるため、平栗さんはサッカー部の行事だけで毎年3、4回はここを訪れる。それに加え、最近ではオーナーの“ミンパパ”にゴルフを教わりに来ることも多くなった。「常連客の域を越え、ほとんど従業員のよう」だと平栗さんは笑う。ミンションやまざきのWebサイト管理も手伝っており、現在は毎月のように訪れているという。

 ミンションやまざきの全館でゲストWi-Fiが使えるようになった話も、2015年の夏ごろには聞いていた。ただ、平栗さんはいつもモバイルルーターを持参していたため、実際にゲストWi-Fiを使う機会はなかった。

 2015年12月、いつものようにミンションを訪れた平栗さんは、うっかりモバイルルーターを持参し忘れたことに気づく。

 「モバイルルーターを忘れてきたのですが、そういえばミンションのゲストWi-Fiが使えるんだよな、と思ってノートPCで接続しようとしたんです。しかし、SSIDは見えているけどつながらない。これはおかしいぞ、となったのが始まりでした。何カ所か移動して試したのですが、やはりつながりません」(平栗さん)

 平栗さんは、まずは山崎さんに報告しなければと思った。「このWi-Fiつながらないよ」と伝えたときの、“ミンママ”の悲しそうな顔が強く印象に残っているという。

 「まるでこの世の終わりのような、悲しい顔をされて。『そんなはずないよ!』と怒られたりもしました(笑)。それまでお客さんからのクレームはなかったそうですが、学生が中心ですし、つながらなくても『まあそんなものか』で済ませてたのかもしれないですね」(平栗さん)

 平栗さんが工事の見積書などを見せてもらったところ、合計で13台の家庭用Wi-Fiアクセスポイント(AP)が設置されていた。しかし、メーカーのWebサイトで調べると、そのAP 1台あたりの推奨接続デバイス数は3~4台。最大で350人が泊まる合宿所のゲストWi-Fi環境としては、あまりにも貧弱だった。

 ただしこのとき、「つながらない」ことに強く反応したのは、むしろ山崎さんのほうだったようだ。

 「(Wi-Fiの設備は)わたしなんかには難しいし、本当に使えているかどうかわからないでしょ。(工事業者の)言いなりになってしまった部分もある。それでも、『Wi-Fiが使える』と言っておいて実際は使えないというのは、来てくれたお客様への裏切りになってしまう。追加のお金がかかっても仕方がない、それは直してほしいと、平栗さんにお願いしました」(山崎さん)

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