家の掃除機で液体が吸える。キャニスター型掃除機にとりつけて使う湿式掃除アタッチメント。汚れ落ちや使い勝手をたしかめる。
水洗いクリーナーヘッド スイトル
実売価格2万1384円
シリウス
http://www.sirius-agent.co.jp/switle/
うちには生まれて2ヵ月の赤ちゃんがいてかわいい。赤ちゃんは自由なのでソファでも床でもおしっこやうんこをする。おむつはしているがゆるかったとかサイズがあってなかったといった理由で外側にピャーなさることがある。ソファのカバーは洗濯機に放りこんでおけばいいとしてもカーペットやマットレスが汚れては困る。しみになる前にスイトルである。
スイトルはコーヒー、しょうゆ、ソース、ジャム、ケチャップなど飲みこぼし・食べこぼしを吸える。別売りの除菌水を噴きながら吸うことでおしっこや吐しゃ物などもいけるという。公式によればインスタントラーメンなどの固形物も吸えるらしい。今は赤ちゃんも母乳を飲んでいるが、半年も経てば離乳食がはじまる。赤ちゃんは食ったものを吐いてこねくりまわすのが好きな生き物だとその筋から聞いたことがある。8~9月ごろには床やソファにはねばねばがくっついて楽しい世界になっているだろうから、ねばねばも早急にスイトルである。
スイトルは水を出しながら水を吸う「湿式掃除機」の仲間だ。
●乾式掃除機
日本ではオーソドックスな乾いたゴミやほこりのみを吸い取る掃除機。
●乾湿両用式 掃除機
洗浄水をまいた後に、バキュームで吸い込める、欧米で人気の掃除機。
欧米は室内に土足でズカズカ踏み込むパワフルさがあるため床に水をぶちまけるダイナミック掃除も可能。ちなみに某海外メーカーの掃除機は上陸当初じゅうたんから砂利をバリバリかきだすよう硬めのヘッドを採用していたためフローリングを傷つけまくったという話もあった。(現在は改良)
スイトルは掃除機につけるアタッチメント。小学生のころ通販番組でよく見かけた「スーパーはぼき」のようだ。スーパーはぼきは掃除機の先につけるとはたきとほうきのように使えるアイデアグッズで、子供心にこれは便利だと感動して親にねだった記憶がある。要望として地味すぎたと思う。シンプルな構造だったスーパーはぼきに比べるとスイトルはだいぶ技術的だ。遠心分離を使った仕組みで科学実験キットのような動きをするので子供も喜んでくれるのではないかと思う。
★スイトル「アクアサイクロン(AQUA CYCLONE)技術」
図:取扱説明書より
1.湿式吸引技術
対象となる汚れにノズルを当てると、瞬時に自動的に水が噴射され、汚れを洗浄しながら吸引する。対象からノズルを離すと自動的に噴射を停止する。
2.液体分離技術
風圧を利用してカバー部のターボファンユニットを回転させ、汚水をクリーナーヘッド内部に吸い上げて、水と空気に分離する。きれいな空気だけがダクトを通じてクリーナーヘッドに接続した掃除機本体側へと流れこむ。汚水はクリーナーヘッド内部の汚水タンクにたまっていき、汚水は手を汚すことなく捨てられる。
3.汚水しみあがり防止技術
外壁とファンの隙間に汚水を侵入させない仕組み。外気から取り込んだ空気を「逆噴射ターボファンユニット」で吸引と逆方向の風に変え、空気の壁(エアシール)を形成。隙間を完全にふさぐことなく、壁伝いにしみあがる汚水を押し戻して侵入を防ぐ仕組み。本体が倒れた場合などに汚水の逆流を防ぐ「逆流防止弁」も装備。
すごそうな原理だが、使い方は単純だ。
★使い方
1.タンクに水を入れ、掃除機のホースの先にスイトル付属のホースをつなげて取りつける。
2.掃除機をオンにすると自動的に“水洗い運転”を開始する。
3.終わったらカバーを開けて汚水を捨てたら終わり。動力が本体にないため丸ごと水洗いができる。
サイズは比較的コンパクトだが収納に困る。初めは掃除機と一緒に納戸に入れようと思っていたがショップの紙袋が死ぬほどたまっているので入らなかった。いい機会なので紙袋を捨てようかと考えたが妻に怒られそうなのでひとまずベビーベッドの下につっこんでおく。デザインは3Dプリンターのサンプルとして展示されたオブジェのように見える。未来的ベビーベッドだ。
■スペック
サイズ 幅148×高さ283×奥行き506mm
重量 本体のみ:約1.2㎏
鋼球弁パイプ:130g
ホース:約300g
素材 ABSほか
タンク容量
清水タンク:500ml
汚水タンク:FULLラインで600ml
用意をする。フタをあけて蛇口から清水タンクに500mlの水を入れる。
間違えた。
水を入れたのが汚水タンクだった。水をあけて上下をひっくりかえし、あらためて清水タンクに水をためた。説明書をちゃんと読まないからこういうことになるのだ。人の話はちゃんと聞くんだよ。
無事に水が入ったので、逆流防止弁をつけ、ホースをつなぎ、キャニスター型掃除機につないでいく。スイトルには吸込仕事率170W以上の吸引力が必要なためスティック掃除機やロボット掃除機はつなげられない。うちの掃除機は吸込仕事率に定評のある日立製なので問題ない。ホースの先をつなぐとカチッとはまって気持ちがよい。国内メーカーなら問題ないが、ミーレ、エレクトロラックスは場合によって別売の専用継手パイプが必要になる(実売価格1944円)。
試していく。
●しょうゆ
落ちた。楽勝である。
カーペットに手をつくと当然だがしっとり濡れている。スイッチをオンにしたままノズルを手にあててみると当然だが手がしっとり濡れた。手から離すと噴射はぴたりとやんで、水が散ることはなかった。理科の実験のようで面白い。
●ソース
落ちない。
台所用洗剤の出番である。生協で買っている台所用液体石けんをたらして歯ブラシで軽くこすって汚れを浮かせたあとにふたたびスイトルだ。
落ちた。
落ちたがソースくさい。それに毛羽立ってしまった。おかしい。説明書を見ると弱アルカリ性の液体石けんではなく中性洗剤を使うと書いてあった。そもそもラグが天然ウールで洗剤NGなのではないか。だからちゃんと調べてからやれと言っただろ。34歳にもなって何をしているんだ君は。悲しいがせめてソースくささは取りたい。スイトルには除菌・消臭ができる次亜塩素酸水をつくる「除菌水の素」の試供品がついている。同じメーカーが売っている製品で、商売がうまい。500mlの水にパウダーを溶かして除菌水を作り、清水タンクに入れる。同じようにズボーと吸う。
これでにおいが消えた。よかったですね。どんどん行く。
●ジャム
落ちた。
●水溶き小麦粉
落ちたが、ねばねばがノズルにくっつき、しばらくカーペットになすりつけるような形になってしまい、完全に落としきるまでちょっと時間がかかってしまった。
一息入れて、コーヒーでも飲むことにしよう。
しまった。
小芝居を打ってソファにこぼしたコーヒーを吸い取る。落ちた。カバー下にしみていたのでスイトルで吸い取る。落ちない。表示タグを見て気づいたことに、ソファの中身は羽毛であった。水洗いできないものはスイトルが使えない。タオルでふくことにした。だからお前調べろよ。身を呈して禁止事項を証明してどうするんだよ。すいません……すいません……
●畳にしょうゆ
楽勝。
●おしっこ
落ちた(※赤ちゃんのおしっこで検証)。おしっこを吸える掃除装置の面目躍如だ。ただし除菌水は必須である。除菌しながら吸わないとキャニスター型掃除機の排気経由でおしっこに含まれるウイルスを飛散させる危険もある。さすがに画像は自重した。
★試験結果
コーヒー ◎
しょうゆ ◎
ソース △
ジャム ◎
水溶き小麦粉 ◎
おしっこ ◎
カーペット ◎
ソファ ○
畳 ◎
ほぼ落ちた。優秀である。
終わったので片づける。
スイトルを掃除機からはずす。汚水タンクをはずすとフタから水が垂れる。タオルなどを置いてはずす必要がある。
汚水をドバーと流すと気持ちいい。
洗う。清水タンクのフタが接地しているためちゃめちゃ汚くて入念に洗う。ノズルの先端に小麦粉らしきねばねばがついているのでやはり入念に洗う。ノズル内部は水を吸いあげることで洗える。サイクロファン、逆噴射ファンという要素部品は取りはずして洗える。やれば簡単なのだが、面倒くさがりなので気が乗らない。タンクなどを吊り棚で乾かして、終わった。
★結論
・汚れ落ちはいい
・掃除機を使うのがやや面倒
・お掃除をするのがやや面倒
汚れは落ちる。ハンディ洗濯機のニュアンスがある。大判のブランケット、自動車のシート、シャツの予洗いなんかにも使えそうだ。油汚れ、リコピン(トマト)、ポリフェノール(赤ワイン)、ターメリック(カレー)など着色性の強い汚れは落ちづらいそうだ。腰抜けなので試さなかった。
しかし掃除機を使うのがやや面倒くさい。納戸から掃除機を出してきて、合体させ、コードを伸ばし、掃除機のスイッチを操作し、スイトルを移動させるときは掃除機ごともちあげるのが大げさに感じる。でかくなっても一体型がいい、普通の乾湿両用式掃除機型がいいと思えてしまった。
お掃除もやや面倒くさい。構造上つけ置き洗いもできないそうなので、毎回水洗いをする必要がある。洗う部品が多いので面倒さがあり、衣類乾燥機のフィルター掃除さえ面倒くさがっている身としてはつらい気持ちがあった。自分に対しては生活態度をあらためろという気持ちもある。
生活をしているとこぼれることは多い。じゅうたんにこぼしたときにぞうきんでふいてかえってのびてしまってウギャーとなったところを想像すると、やはり片づけの面倒くささを差し引いてもスイトルの快適さは大きい。生活にゆとりがある人はお金を払うと快適になると思う。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
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