KDDIウェブコミュニケーションズは、4月18日、全国の市町村とIT企業が連携協定を結び、ITサービスを活用して地方創生を推進するプロジェクト「Cloud ON」を開始した。
第1弾として、沖縄県の糸満市、沖縄市、竹富町、宮古島市の4市町と、同社を含む県内外のIT企業9社で「Cloud ON OKINAWA」の連携協定を締結。ITサービスの普及促進や人材教育に共同で取り組み、中小企業の支援と地域活性化を目指す。
4月18日に那覇市内で会見したKDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役社長の山崎雅人氏は「中小企業の課題を見てみると、IT利活用、人材育成、販路拡大など、ここ数年ほとんど変わっておらず、課題が解決されていない」とプロジェクトの背景を説明。「沖縄から日本を変えるプロジェクトに育てたい」と抱負を述べた。
Cloud ONでは、「中小企業が明日から使えるサービスの導入」「地域の課題解決」「地域の人材育成」の3つを柱に据える。具体的には、ITサービス導入を支援するセミナーの共同開催、テレワーカーへの仕事の供給、若年層向けのプログラミング教育などを、連携する各自治体において実施する。また、ローカルパートナーと呼ばれる地元の支援事業者も募る。
参加企業は、KDDIウェブコミュニケーションズ、沖縄セルラー電話、CAMPFIRE、Square、freee、BASE、ライフイズテック、ラクスル、Ryukyufrogsの9社。「課題に対応できる各分野のリーディングカンパニーに参加いただいた」(KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役副社長の高畑哲平氏)。
すでに先行して、ライフイズテックが宮古島で市教育委員会や地元企業とともにプログラミング教育に取り組んだり、KDDIウェブコミュニケーションズが宮古島のフリーペーパーと共同でWebサイト制作を呼びかけたりしていて、成果を上げているという。
会見に出席した宮古島市の下地敏彦市長は、「地域の人たちは、もっとITを活用したいという思いを持っている。9社の話を聞いて、まだまだおもしろいことができると思った。ITを活用した地方創生をもっと推進したい」と期待感を語った。
「1杯の沖縄そば」から始まったプロジェクト
Cloud ONプロジェクトの発端は、高畑氏が、那覇市内で一杯の沖縄そばを食べたときの些細な出来事がきっかけだったという。海外から訪れたある観光客が会計をする際、現金を持っていなかったためクレジットカードで決済しようしたものの店が対応しておらず、トラブルになった。その様子をたまたま目撃していた高畑氏は支払いを立て替え、観光客をATMへ案内した。その際、「国内外からこれだけの観光客が訪れる観光立県の中心地で、カードが使えないことに衝撃を受けた」という。
実際、カード決済を手掛けるSquareによると、中小小売・飲食業でのカード決済導入率は3割ほど。「いまだカードが使えない、ホームページもない、小さな当たり前のことがなかなか解決しない」ことを目の当たりにした高畑氏が中心となり、本プロジェクトが発足した。
地方創生の名のもと、補助金獲得を目的としたプロジェクトは少なくないが、高畑氏は「補助金にはできるだけ頼らずにやりたい」という。Cloud ON OKINAWAでは2017年内に、沖縄県内の3分の1の市町村との連携を目指す考えだ。