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コーセー快進撃、営業利益で資生堂超えも見えた理由 小林一俊(コーセー代表取締役社長)インタビュー

2017年04月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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こばやし・かずとし/1962年東京都生まれ。86年慶應義塾大学法学部卒業後、コーセーに入社。95年常務取締役、2004年代表取締役副社長に就任。07年より現職。 Photo by Toshiaki Usami

6年前まで“冬の時代”にあった化粧品大手コーセーが快進撃を続けている。創業70周年の2016年度(17年3月期)決算では、売上高、営業利益、純利益で4期連続の過去最高額を見込む。V字回復に導いた小林一俊社長に要因を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

──過去最高の業績を予想する2016年度を振り返ってください。

 創業70周年の記念イヤーということもあり、昨年3月からさまざまな試みに打って出た1年だったと思います。

 結果として、ハイプレステージ(高価格帯)から中価格帯、コスメタリー、全てのカテゴリーが好調でした。これまでも業績好調の年はあったものの、全カテゴリー、それぞれの事業ブランドが総じて好調という年はそうありません。良い形で70周年の節目を終えることができると考えています。

 中でも象徴的だったのは、やはりメイクが好調だったことです。化粧品業界は、いかに新規顧客を取り、また、いかにその人たちを固定化するかということが基本ですが、メイクでヒット商品があると、良い循環が生まれるんですよね。話題になるメイクというのはトレンドを追っ掛けていますから、そこからファンデーションやスキンケアと他にもつながる。これは当たり前のようで難しい。それができた年だったと思いますね。

──化粧品の世界において、新規客の獲得、特に長年慣れ親しんだブランドがある中高年層の女性客の開拓は容易ではありません。

 一つは、付加価値の高い新製品の開発、やはりものづくりが大切です。例えば、今年、ポーラさんが新製品のシワ改善化粧品を出して「これからはシワだ」と言っている隣で、当社も(エイジングケア美容液の)「iP.Shot」を出し、ポーラさんの独り勝ちを許さず、かつての美白戦争のごとく、シワ戦争を繰り広げています。

 ただ、新製品は乱発すればよいわけではありません。昔からの持論なのですが、化粧品業界を含めた日本の製造業の悪い癖で新製品依存型の会社が多い。自社の既存製品をあえてチープ化させ、新製品を出すことでライフサイクルを自ら短くしてしまうことは避けたい。この点、われわれは強みである定番のロングセラーを軸に、さらに新しい高付加価値の製品を送り出すことにこだわっています。

──脱インバウンドに、いち早くかじを切ったことも既存ブランドを守るための判断ですか。

 急激なインバウンドは、転売目的までいくと偽物が出回る可能性などさまざまなリスクがあります。

 例えば、(スキンケアブランド)「雪肌精」の内外価格差を是正しましたが、正直言って、目下、雪肌精のインバウンド売り上げは非常に落ちています。ですが、逆にワールドワイドでは、雪肌精の売り上げは上がっていて、長い目で見ればブランド価値を毀損しないと判断しています。「アルビオン」も1人当たりの販売個数制限など、店頭でコントロールしました。こういった取り組みがブランドを守る上で大事だと思いますね。

──現在の化粧品大手を見ると、資生堂と花王ビューティケア事業より、コーセーやポーラという2番手グループの躍進が顕著です。

 流通など外部の方々に「コーセーは専業メーカーだから強い」と言っていただいたことがあるのですが、これは一理あるなと。確かに、花王さんはもちろん、資生堂さんも化粧品とはいえ当社よりも幅が広い。片や、われわれは化粧品一筋でここまできました。一筋だからこそ、そう簡単にシェアを取られないという自負があります。

 加えて、資生堂さんと花王さんは、経営トップが数年に1度、変わらざるを得ない。ですが、うちとポーラさんは(同族経営のため)変わらない。これはものづくりにすごく影響する気がします。ポーラさんも研究開発に熱心で、長年コツコツやられている。そういう意味で、売り方は違いますがうちと共通する部分がありますね。

「祖父、父、叔父貴という創業以来の歴代社長の仕事を間近で見続け、その経営哲学を肌で感じてきたことが今の成果につながっている」という Photo by Toshiaki Usami

 また、これも私の言葉ではありませんが、ある有識者の方が言うには「日本の製造業は、社長が変わると前任者と違うことをやろうとして失敗するケースが多い。コーセーの場合、長く社長をやれるからそうならなかった」と。

 こちらは自分でも意識していないですし、それはもう毎年毎年、必死でいろんなことを考えてやってきたつもりなのですが(笑)。

──17年度はどういう年に。

 業界3位を競ううちは、なかなかグローバルな戦いに行けない。国内売り上げだけでなく、マインドシェアでもいいから「化粧品といえばコーセー」というナンバーワンにならないと。17年度は、80周年、90周年に向けて「ここからコーセーのステージが変わった」と言われるための勝負の1年。「一過性だったね」ではまずい。真の成果が問われる年だと思います。

“大攻勢”のコーセー 化粧品で断トツの収益力

 国内化粧品3位に位置するコーセーの売上高は2015年度、2433億円だ。これに対し、絶対王者、資生堂のそれは16年度、8503億円と3.5倍近くの開きがある。

 それにもかかわらず、コーセーが注目される理由は、同社が「最重視する経営指標」とする営業利益率で、ツートップの資生堂、花王ビューティケア事業に大差をつけているからだ。

 11年度決算では、コーセーの営業利益率は6.9%と、資生堂と1ポイント程度の差しかなかった。ところが、15年度にはコーセーが14.2%へと順調に伸びたのに対し、資生堂のそれは16年度(16年12月期)、4.3%にとどまる。

 コーセーは16年10月、16年度通期の業績を上方修正。売上高は従来予想比20億円増の2560億円、営業利益も10億円上振れの370億円を見込む。これが達成されれば、資生堂の16年度の営業利益368億円をわずかながら上回り、花王ビューティケア事業に次ぐ2番手に浮上する。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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