世界初タイトル「A Piazzolla by Strings and Oboe」を入手
フツーのCDなのに中のデータはハイレゾ、魔法の様な新規格MQA-CDを知る
2017年03月29日 18時30分更新
CDの中に“ハイレゾ”音源を収録できる、しかも普通のCDプレーヤーでも再生可能。そんなちょっと驚く新フォーマット「MQA-CD」を使った世界初のアルバムが3月17日にリリースされた。
「A Piazzola by Strings and Oboe」(OTVA-0012)で、価格は2500円。演奏はUNAMAS Piazzolla Septetだ。高音質なハイレゾ音源の収録で有名なUNAMASレーベルの作品で、販売元はOTTAVA recordsとなる。
このCDの特徴は、普通のCDプレーヤーに掛ければ44.1kHz/16bitの品質で再生。さらにプレーヤーの光デジタル出力や同軸デジタル出力から、外部のD/Aコンバーターに接続するとハイレゾ品質(176.4kHz/24bitのMQAフォーマット)になるという魔法のような技術を使ったものだ。
MQAは配信自体を見据えた新しいハイレゾ音源
「MQAフォーマットとは何か? 耳慣れない」と思う人がいるかもしれない。
MQAとは“Master Quality Authenticated”の略で「マスター品質が認証されている」という意味。1Mbps程度の低いビットレートで、ハイレゾデータを提供でき、ハイレゾで音楽配信をする時代を見据えた、新しいフォーマットとして期待されている。
2014年に発表されたばかりの新しい技術だが、2015年ごろから国内でも話題を集めている。昨年からe-onkyo musicでの配信も始まり、オンキヨーの「DP-X1」など、MQA対応機器も少しずつ増えている状況だ。
“MQA対応機器”と書いたが、特筆したいのは「MQAでエンコードしたファイルは普通の機器でも再生できる」という点だ。実はここがMQAの肝となる部分で、MQAファイルはリニアPCM(WAV)のデータと互換性がある。つまり、MQAをハイレゾ品質にデコードしたい場合はMQA対応機器が必要だが、48kHz/24bitの品質でよければ、特別な変換処理なしにパソコンでも一般的なUSB DACでもそのまま再生できてしまうのだ。ここがFLACなど、既存のロスレスフォーマットと大きく異なる部分である。
MQAの特徴をCDに応用し、ハイレゾ再生を実現
A Piazzola by Strings and Oboeという作品(アルバム)自体は、すでにハイレゾ版の配信が始まっており、e-onkyo musicなどで入手可能だ。
そしてその録音をMQAでエンコードし、CDに収録した“世界初のCD”(MQA-CD盤)が登場した。2016年7月に日本音響エンジニアリング サウンド・ラボでサラウンド収録されたもので、MQA、FLAC、WAV形式のステレオ版のほかに、5.1chサラウンド版も配信されている。比較試聴してみるのも面白そうだ。
ハイレゾ品質の音楽データを保存したディスクメディアはこれまでも存在した。しかし、DVD-AudioやSACD、Blu-ray Audioなどでは、大容量ディスクを利用し、CDプレーヤー以外の機器で再生するのが基本だった。またハイブリッドSACDのように、一般的なCDプレーヤーでも再生できるディスクが存在するが、これは1枚のディスクにCD層とDSD層の2層を用意し、別々のデータを記録するものだ。
MQA-CDがこれらと根本的に仕組みが異なるのは、読みだすのは同じデータなのに「CDプレーヤーで再生すれば普通のCDとして再生」「同じプレーヤーからデジタル出力して外部のMQA対応DACで再生すればハイレゾ音源になる」点だ。
CDなのにハイレゾ品質の音源が収録できた理由は、すでに述べたようにMQAを採用するため。自宅のプレーヤーでも再生してみたが、確かに普通のCDプレーヤーでも問題なく音が出る。またCDからデジタル出力したデータはもちろんだが、CDからPCにリッピングしたデータもMQAファイルとして認識できた。
ちなみに、MQAデータの作成(エンコード)/再生(デコード)時には専用機器が必要だ。その細かな仕様も公開されていない。海外を中心に、いわばブラックボックス化された技術を使い、ハード・ソフトのライセンス料で収益を上げるビジネスである点を批判する声はある。
しかしエンコードしたデータさえあれば、MQA-CDを作る際に特別な配慮は不要だ。出来上がったデータを納品して、プレス工程に回す際の作業は普通のCDと変わりがない。この手軽さもここも大きなポイントになる。A Piazzola by Strings and Oboeの場合は、Pyramixのデータをそのまま納品したそうだ。