芥川龍之介の短編小説『杜子春(とししゅん)』には、散財で没落した杜子春を助ける奇妙な仙人(鉄冠子)が登場する。唐の都・洛陽の西の門でぼんやり空を仰ぐ杜子春に声をかけた仙人は、杜子春がその夜の寝る場所にも困っていることを知り、彼にこう語りかけるのである。
「ではおれが好いことを一つ教へてやらう。今この夕日の中に立つて、お前の影が地に映つたら、その頭に当る所を夜中に掘つて見るが好い。きつと車に一ぱいの黄金が埋まつてゐる筈だから。」
(芥川龍之介『杜子春』、青空文庫)
仙人の言うことをその通りに実行し、一夜のうちに都でもただ1人の大金持ちに返り咲いた杜子春。しかし結局、彼は金にあかせて贅沢を尽くし、3年後には再び一文無しとなってしまう。住むところもなくなり、洛陽の西の門でぼんやり空を仰いでいた杜子春は、またしても奇妙な仙人に出会い、一夜にして大金持ちに戻るが、これもまた3年で散財。3度、目の前に現れた仙人に対し、杜子春は金をねだるのではなく、「自分に仙術を教えてくれ」と懇願する。……
さて、いきなり『杜子春』のあらすじから始めてしまったが、筆者はスマホゲームのガチャの話がしたいだけである。
『杜子春』は中国の唐王朝時代を舞台とした物語だが、およそ1200年が経った現代でも、杜子春のような散財癖のある人は珍しくない。たとえば、いつも筆者の隣の席で仕事をしているガチャ廃課金勢のハッチ氏。日頃から「課金は毎月2万円からスタート」「月の課金請求が17万円を超えてヤバイ」という感じの生活をしており、大体いつもお金に困っているくせに、給料が振り込まれた途端にピックアップガチャを回してしまうメンタルは杜子春そのものと言える。
しかし実際のところ、お金の厳格な管理ほど難しいことはない。本来、身の丈にあったお金の使い方をしなければ生活が成り立たないのは誰もが理解しているところだが、消費行動が日々のストレス解消の手段として確立している現代社会では、そうした散財を一概に咎めることもできないだろう。かといって、現代を生きる我々が仙人に出会い、杜子春ほどの大金持ちになったり、仙術を会得することは難しい。結局は多くの人がハッチ氏のように「わかっちゃいるけどやめられない」状態で、ガチャを回し、ガチャの輪廻に囚われるのだ。
筆者はハッチ氏が心配である。ガチャもそうだが、頻繁にPCを壊したり、車をコスったり、なぜかカードの支払いがリボ払いになっていたりするような人なので、そのうち変なタイミングで借金生活に陥りそうな気がしてならない。ここ1年ほどハッチ氏の隣の席で仕事をし、日々金欠に苦しみもがく彼の姿を見つめ続けてきた筆者は、最近ふとこんなことを思いついた。
「ハッチさんがガチャでSSRを多く引き当てられるようにできないだろうか」
自分はハッチ氏に渡せるほどお金もないし、仙術も使えない。しかし、ガチャで高レアリティーを多く引き当てられるテクニックを見つければ、結果的には課金額が少額におさまり、みんなハッピーになれるのでは、というわけである。もちろん言うのは簡単だが、問題はその手法だ。
一般的に、こうした探求が都市伝説やオカルトの類として一笑に付されがちなのは間違いない。とはいえ、試しにインターネットで検索をかけてみると、同じことを考えている人はそこそこいて、複数のサイトや記事などがヒットした。なかには検証もあったが、その結果はいずれも「確かな効果がある」とは言い切れない性質のもののようだ。ガチャを引く時間帯、ボタンを押すタイミング、一度に引く回数……。調べた限り、こうした要素が言及されやすいらしい。
ほかに、ガチャのレア度に影響を及ぼしそうな要素はないだろうか。誰もが見落としそうな要素が、実はあるのではないか。熟考を重ねた筆者の脳裏に、あるとき、ひとつの可能性がひらめいた。
――そう、電波である。
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